なんなんだ
暑い日に熱い料理を食べ汗をかくように
寒い日にアイスを食べるように
こんな寒い時期には意外と、怖い話なんぞ合う気がするんだよな。
僕は沖縄出身だ。言わずと知れた常夏の島。この前なんかこっちは12度以下なのにあっちは27度だったそうな。はぁ、この差って何? おんなじ国?
そんな年がら年中暑い島で起きた話。起きたというか起こったというか。
僕の祖母の家は、中道に入った場所にある。
大通りにから一本入ると100mほどの道。車が一台通るほどの幅の道。
そこで話は起こった。
僕はその場所の夢を見た。何度も同じ夢を。
どういう夢かというと、夜道誰もいないその中道を一人で歩く僕。すると、ザザザ! とこちらに走ってくる音が。大きなおじさんが僕に包丁を突きつけ迫ってくる。
「ひんぎれんどぉ。ひんぎれんどぉ」沖縄の方言で「逃げれないぞ」と言って僕に襲い掛かってくる。
「うわぁ!」と声を上げ目が覚める僕。そんな夢を何度も見た。夢の場所は同じくあの中道。
そんな夢も見なくなったある日。夜中に友人とその道を歩いていると。
何かに気付いた友人がそそくさと足早に歩いていく。様子が変なので「どうした?」と追いかけると、「いいから! 後で言うから黙って歩け」と強張った表情で歩いていく。
その中道を過ぎ、僕の祖母の家付近まで差し掛かったところで友人が後ろにいる僕の方を(僕というかその奥を)じっと見た後、歩くスピードが緩める。
ようやく落ち着いたところで、何があったかを問うと、友人はゆっくりと口を開き
「この道歩いてたら、変な感じがして。何だろと思って後ろみたらさ、ぼやっとしか見えてないけど、スカート? かな多分そんな感じ。それだけ。その下半身だけがこっちに向かって歩いてくるのよ。だから怖くなって早歩きになった」
ぞっとした。
街灯がなく夜になると暗くなるこの中道はそれだけでも怖いのに、そんなことが起きたのかと思うと、足が震えてくる。
「え? じゃあこっち追っかけてきたの?」
冷静を装い、また問う僕。
「いや、俺もそう思って怖くなったんだけど、違うかった」
「違うって?」
「あれ(下半身)、こっちに迫ってくると思ったら急にUターンしてまた向こうにいってそしてまた振り向いてこっちに来て、またUターンしての繰り返しだった。多分、どこにも行けないんだはず」
そう言うと、再び歩き出す友人。
いや、余計に怖かった。いっそのことならこっちに向かって走ってきたの方が良かった。繰り返し歩いているのはリアルさが際立つ。
深く掘り下げて聞くのは怖いので、これ以上その話には触れなかった。
だが、この話には続きがある。
実は別の日に、もう一人の友人の弟も同じ体験をしているのだ。
シチュエーションも全く同じ。下半身が中道を往復している。
一人の証言では見間違いか虚言に過ぎないものも、複数人しかも別の日に同じ話をされるとこれは嘘だとは言い切れなくなる。
そんな話を父にすると「あそこ霊道なの知らんかったのか?」と当り前のように言われたのだ。
うん、知るわけないよね? やめてよね。と思うが確かにそうかもしれない。
なぜかというと、そこの道を結ぶようにあるカラオケ店。
そこでは今の話を体験する数年前からいわくつきの部屋が存在したのだ。
奇妙な現象が起こる部屋と、その霊道と下半身の何か。そしてこれは思い込みかもしれないが、僕が何度も見た中道での夢。
何か繋がりがあるのではないか。
調べるつもりはないが、いつかまた調べないといけなくなるような、そんな気がする。
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