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週末読書メモ150. 『補給戦 ヴァレンシュタインからパットンまでのロジスティクスの歴史』
(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
「戦争のプロはロジスティクスを語り、戦争の素人は戦略を語る」
前回、『戦争の変遷』を説いたマーチン・ファン・クレフェルトさん。
本作は、彼が「兵站」という概念に焦点を当てた名著となります。
マーチン・ファン・クレフェルトは戦争の「根源」、すなわち移動と補給、さらには輸送と管理をめぐる重大な問題を考察している。
総合すると兵站術とは、「軍隊を動かし、かつ軍隊に補給する実際的方法」との定義に到達する。
つまり、戦争を(物事を)実現させる術。それが兵站。
一般的には馴染みがないですが、戦略以上に重要と呼ばれるこの概念について、深掘りされていきます。
戦略は政治と同じく可能性の技術だといわれている。しかしながら可能性なるものは、単に量的な力とか思想、情報、兵器あるいは戦術によって決定さればかりではなく、まずもって峻厳なる現実によって決定される。すなわち必需品とか調達可能な補給品、組織や管理、輸送、通信線についての諸現実によって決定されるのである。
戦略とは可能性の技術。そして、その可能性を決めるのが兵站だと。
古代から戦争の様相は「ロジスティクスの限界」によって規定されていたことが、古今東西の事例とともに論じられます。
兵は食べる。武器は減る。その中で、いかに戦いをやり抜けるか、勝ち抜けるか。それらは、すべて兵站にかかっていると。
組織的略奪は、例外というよりむしろ普通のことだった。しかしながら一七世紀初期までに、古くから尊重されたこの「制度」は、もはや機能しようとはしなかった。軍隊の規模があまりにも大きくなったので、この制度は効かなくなったのだ。
古代においては、略奪を兵站の調達手段であったことも興味深いです。そこから、組織の大規模化・技術の高度化に伴い、それが通用しなくなった現代。歴史の中の変化に応じながらも、常に限界条件を決めてきたのが兵站でありました。
現代の偉大な将軍ウェーベルは次のように述べている。
戦争を見れば見るほど、いかに戦争がすべて管理と輸送に依存しているかが分かる。
(中略)補給と移動の要素について本当に知ることが、統率者のすべての計画の根底とならなければならない。そうなって初めて統率者は、これらの要素について危険を冒す方法と時期を知ることができるし、戦闘は危険を冒すことによって初めて勝利が得られる。
「戦争を見れば見るほど、いかに戦争がすべて管理と輸送に依存しているかが分かる」
これが根底。その上で、リスクを冒すことによって勝利が得られると。
本書での研究ーー「あいまいな思考」を避けようとの決意からスタートし、「具体的な数字と計算」に努力を集中したーーを終えるにあたって、結局人間の知性だけが戦争を戦う道具ではないし、しかたがって戦争を理解する道具でもないと認めることが適切であろう。
(中略)戦争においては、精神と物質との関係は三対一であるというナポレオンの格言の真理を承認すること。結局これが、機動作戦に及ぼす兵站の影響を研究する際、われわれが学びうるすべてであろう。
本書で興味深いことは、最後まで一貫して、戦略以上に兵站の重要性を述べた上で、最後には、精神は更に大事だとも。
これも真理なんだろうな…「精神と物質との関係は三対一である」というのも、ナポレオンは流石というか。
精神も、兵站も、戦略も、全て重要。その変えることの出来ない事実を胸に、前に進むしかなのだろう。
思えば、この週次の読書メモも、同じく兵站がテーマである『山・動く』から始まり150週目。
約3年。色々思うことはあれど、改めて多くの本、多くの筆者、多くの分野に触れられた有り難さはかけがえのないものであり。
実験的に週次で書いてきたこの読書メモも次の段階へ。
【本の抜粋】
マーチン・ファン・クレフェルトは戦争の「根源」、すなわち移動と補給、さらには輸送と管理をめぐる重大な問題を考察している。
総合すると兵站術とは、「軍隊を動かし、かつ軍隊に補給する実際的方法」との定義に到達する。
戦略は政治と同じく可能性の技術だといわれている。しかしながら可能性なるものは、単に量的な力とか思想、情報、兵器あるいは戦術によって決定さればかりではなく、まずもって峻厳なる現実によって決定される。すなわち必需品とか調達可能な補給品、組織や管理、輸送、通信線についての諸現実によって決定されるのである。
組織的略奪は、例外というよりむしろ普通のことだった。しかしながら一七世紀初期までに、古くから尊重されたこの「制度」は、もはや機能しようとはしなかった。軍隊の規模があまりにも大きくなったので、この制度は効かなくなったのだ。
「戦争とは残酷なものだ。そこでは決定的な場所に最大の兵力を集中することを知っている者が勝つ」とは、ボロジノの先頭を前にして迷走したナポレオンの言葉だと言われている。
(中略)しかしながらひとたびその場所が確認されたら、そこには兵士と資材を投入するのは、基地や補給戦、輸送手段、組織ーー要するに兵站術の問題である。
現代の偉大な将軍ウェーベルは次のように述べている。
戦争を見れば見るほど、いかに戦争がすべて管理と輸送に依存しているかが分かる。
(中略)補給と移動の要素について本当に知ることが、統率者のすべての計画の根底とならなければならない。そうなって初めて統率者は、これらの要素について危険を冒す方法と時期を知ることができるし、戦闘は危険を冒すことによって初めて勝利が得られる。
本書での研究ーー「あいまいな思考」を避けようとの決意からスタートし、「具体的な数字と計算」に努力を集中したーーを終えるにあたって、結局人間の知性だけが戦争を戦う道具ではないし、しかたがって戦争を理解する道具でもないと認めることが適切であろう。
(中略)戦争においては、精神と物質との関係は三対一であるというナポレオンの格言の真理を承認すること。結局これが、機動作戦に及ぼす兵站の影響を研究する際、われわれが学びうるすべてであろう。
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