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週末読書メモ105. 『競争の戦略』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

今なお示唆に富む戦略論の古典。


経営戦略。今では至るところで耳にする概念。

その原点であり、今なお読み継がれられる本が、マイケル・ポーターさんによる本書『競争の戦略』です。

この本は、競争についての本です。内容は次の三つです。①業界における競争の性質を決める基本原理、②競争業者たちのビヘイビアの形をつくる諸要因、③会社が効果のある競争戦略を策定するための方法 ーー これです。したがって、この本の狙いは、つぎの三つになります。①経営者が自分の置かれた競争環境を正しく理解し、②その環境が将来どのように変化するかを正しく予測し、③強固な市場地位をもたらしてくれる競争の仕方を選ぶ ーー これらについて助言することです。

競争戦略をつくる際の決め手は、会社をその環境との関係で見ることである。会社の環境といっても非常に広く、経済的要因から社会的要因まで考えねばならないが、中心となるのは、会社が競争を仕掛けたり仕掛けられたりしている業界である。
(中略)業界の外側からの要因も無視することはできないが、これらはふつう業界内のすべての会社に同じように作用するために、決め手は、これら外部要因に対する処理能力の会社間の差異なのである。

経営戦略という世界の中でも、ポーターさんが重要視しているのは、ポジショニング。つまり、様々な競合がいる中で、いかに競争環境を理解・予測し、戦い残るかということ。

その後、ポジショニング論と対をなすケイパビリティ派が生まれ、またポジションニング論は「安定」や「予見性」を前提にしてしまっていること、人の認知面に入り込めていない、とこの理論の限界を言及されることもあります。しかしながら、その理論の卓越性は、現代でも示唆が多く、また、経営戦略論の道を拓いた功績は揺るがないものがあります。


今回、3年ぶりに読み直し。改めて感じるのは、その内容の濃さ。そして、この理論を活かすために必要な労力の度合いです。

この本は、中身が濃いために、述べられている原理をマスターするには綿密な思考と勉強が必要です。決して一晩でのみ込むことなどできません。一つの業界および競争業者を理解するに要する情報はたいへんな量になるだけではなく、それらの情報の分析には、判断と創造的思考が必要です。だから、この本に書かれているコンセプトを身につけ、それを実務で生かすには、時間をかけた勉強しかありません。

ポーターさんによる3つの基本戦略(コストリーダーシップ・差別化・ニッチ)や5フォース分析は、経営戦略に触れたことがある人なら、誰もが聞いたことがあるかと思います。

自分もそうでした。そして、何となくは理解し、活かせている気になっていました。しかし、それを活かすための具体的な分析・思考の量が余りに足りなかったことに、自らを恥じます…

それらの戦略やフレームワークを使うためには、大前提として、様々な観点からの環境を深く理解することが不可欠であったと、頭を殴られたような読後感すらありました。


的確な競争業者分析に必要なデータは、ただやみくもな努力だけで作成できるものではない。データ作成を効果的に行うためには、組織化されたメカニズム、すなわち競争業者情報収集システムといったものが必要であり、それによって情報収集活動を効率よく行うべきである。
(中略)データを簡潔で、使いやすい形でトップ・マネジメントに伝達するための創造的なやり方を工夫しなければならない。

(当たり前といえばそうだけれど、情報のインプットはめちゃめちゃ大事で、そして不可欠な要素として強調されている…)


本書『競争の戦略』は、読書家でも有名な星野リゾートの星野佳路さんも座右の書でもあります。

星野さんのいう教科書(経営本)の生かし方は下記の通り。

Step1 本を探す
・書店に1冊しかないような古典的な本ほど役に立つ
Step2 読む
・1行づつ理解し、分からない部分を残さず、何度でも読む
Step3 実践する
・理論をつまみ食いしないで、100%教科書通りにやってみる

振り返って、自分自身、上記のStep2、Step3が出来ていただろうか、と背筋が伸びます。


年度はじめ、自分の焦点がどのように遷移するかを観察し始めてはや4年。

2020年は「戦略」、2021年度は「兵站」、2022年度は「ガバナンス」。

2023年は何になるのか色々と予想していたけれど、まさか「戦略」に立ち戻るとは。

ただ、全く同じスタート地点に逆戻りしたかと言えばそうでもなく。幾多の本を読み漁り、世界を広げまくった上で、絞るべき・突っ込むべき部分が明らかになったというのか…

まずは、古典を読み直すという新たな取り組みになるけれど、この先に待っている未来を楽しみに、また一歩一歩進んでいこう。


【本の抜粋】
この本は、競争についての本です。内容は次の三つです。①業界における競争の性質を決める基本原理、②競争業者たちのビヘイビアの形をつくる諸要因、③会社が効果のある競争戦略を策定するための方法 ーー これです。したがって、この本の狙いは、つぎの三つになります。①経営者が自分の置かれた競争環境を正しく理解し、②その環境が将来どのように変化するかを正しく予測し、③強固な市場地位をもたらしてくれる競争の仕方を選ぶ ーー これらについて助言することです。

この本は、中身が濃いために、述べられている原理をマスターするには綿密な思考と勉強が必要です。決して一晩でのみ込むことなどできません。一つの業界および競争業者を理解するに要する情報はたいへんな量になるだけではなく、それらの情報の分析には、判断と創造的思考が必要です。だから、この本に書かれているコンセプトを身につけ、それを実務で生かすには、時間をかけた勉強しかありません。

ずばり、競争の戦略をつくるということは、企業がどのような競争に突入しようとしているのか、目標はどこに置くべきか、それら目標を実現するにはどんなポリシーが必要か、これらについて、幅広い処方箋をつくることである。

競争戦略をつくる際の決め手は、会社をその環境との関係で見ることである。会社の環境といっても非常に広く、経済的要因から社会的要因まで考えねばならないが、中心となるのは、会社が競争を仕掛けたり仕掛けられたりしている業界である。
(中略)業界の外側からの要因も無視することはできないが、これらはふつう業界内のすべての会社に同じように作用するために、決め手は、これら外部要因に対する処理能力の会社間の差異なのである。

競争戦略とは、業界内で防衛可能な地位をつくり、五つの競争要因にうまく対処し、企業の投資収益を大きくするための、攻撃的または防衛的アクションであると説明した。企業は、この目的を達成するための方法をたくさん発見してきている。特定の企業にとってベストの戦略とは、つきつめていうと、その特定企業の環境を計算し入れてつくられた特異な戦略にほかならないのである。

競争戦略とは、競争相手よりもすぐれている点を生かして、その価値を最大にするように事業を位置づけることである。したがって、戦略策定の主眼は、綿密な競争業者分析にある。競争業者分析の目的は、競争相手の今後の戦略変更の内容とその成功の可能性をさぐり、他の同業者が新たに採用する有効な戦略上の動きに対する各業者の反応を予測し、さらに将来発生すると思われる業界内での変化や、業界を超えた幅広い環境面での変化に対する各競争業者の対応を知ることである。

的確な競争業者分析に必要なデータは、ただやみくもな努力だけで作成できるものではない。データ作成を効果的に行うためには、組織化されたメカニズム、すなわち競争業者情報収集システムといったものが必要であり、それによって情報収集活動を効率よく行うべきである。
(中略)データを簡潔で、使いやすい形でトップ・マネジメントに伝達するための創造的なやり方を工夫しなければならない。

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