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週末読書メモ55. 『社外取締役の兵法 グッドガバナンスの実践』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

ガバナンスとは、経営論。それが骨身に分かる一冊。


本書では、アフラックで社長から代表取締役会長を歴任し、その他の会社でも社外取締役をした筆者が、自らの経験から導き出された知見が惜しげなく書かれています。

コーポレートガバナンス・コードが想定する取締役会とは、マクロな戦略の方向性を取締役会で十分に議論、決定し、その執行に関しては執行部に移譲することで、業務執行の監督により注力し、機動性の高い経営を支える機関としての取締役会なのである。

冨山和彦氏の言葉を借りれば、コーポレートガバナンス・コードは、法律論ではなく、経営論であり、「どのように企業価値を向上させるか、そのためにどのような経営体制を構築して良いくか、どのようにリーダーを育成していくか、どうやってリーダーにインセンティブを与えるのか、どうしたらリーダーの暴走を止めることができるのか」といった点について、指針を提示しているのものである。冨山氏は、「ガバナンス経営を真剣に考えない者に企業のリーダーたる資格は認められない。経営者は、自ら率先して、自社のガバナンスの体制を検討、改良に努めるべきである」とまで書いている。

ガバナンスとは、経営だと。

取締役の使命は、事業の持続的成長と企業価値の長期的な向上を実現すること、と言われます。これは…まさに経営の本懐。

本書では、具体的に取締役会の役割・責務、社外取締役に求められる資質が、下のよう記載されています。

取締役会の役割・責務(コーポレートガバナンス・コード)
1. 企業戦略等の方向性提示
2. 経営陣の意思決定支援
3. 経営陣の監督・評価・報酬設計
4. 後継者計画
5. 内部統制の審議・監督
6. 実効性確保(多様性・審議活性化・実効性評価)
7. 社外取締役の活用
8. 独立した委員会の活用(法定・任意の双方を含む)
9. ステークホルダー・エンゲージメント

社外取締役に求められる5つの資質
1. 自社に対する深い理解
2. 監督に必要となる、ガバナンス、経営に対する知見
3. リスクを発見する力
4. 精神的な独立性
5. 企業価値の向上と成長に貢献しようとする強い覚悟と人間性

今の自分のレベルでは、辿り着けていなかった内容であり、だからこそ、極めて参考になります。

零細・中小企業のレベルでは、経営の執行と監督を分けられるステージには至れないとしても、ここにある役割・責務、資質を実現すれば、組織の経営力が上がることは間違いありません。


経営は実行であり、実現させないと、価値が生まれないのは事実。

しかし、何を、どこまでやれるようにするかは、もっと上位世界で決められる。それを理解しているか否かの差は余りに大きかったです。

それこそ、自分自身、ガバナンスの重要性に気が付けた、『国家はなぜ衰退するのか ー 権力・繁栄・貧困の起源』にもある通りで。

(※抜粋『国家はなぜ衰退するのか』)
世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか?

上記の問いに答える鍵は、地理でも、気候でも、文化でも、あるいは為政者の無知でもない。問題なのは政治・経済上の「制度」なのだ。

国家においては、政治レベルの領域、企業においては、ガバナンスの領域にその鍵があったと。


本書中、取締役の責務として、戦略や人材領域等の意思決定をあげているのに加え、企業文化の醸成・変革、浸透、継承を重要課題に取り上げていることも、本当に素晴らしく。

ピーター・ドラッカー氏の言葉を借りれば、「文化は戦略を朝飯として食べてしまう(”Culture eats strategy for breakfast”)」である。
社外取締役がまず第一に修養すべき知識を考えた時、それは経営全般との関係での企業文化の重要性を理解し評価するうえで活用できるベストプラクティスに関する知識である。

好業績に結びつくような企業文化を醸成(またはそうしあ文化への変革)し、浸透、継承させることに成功していう企業には、以下のような共通する取り組みが行われている。
第1に、CEOおよび代表取締役をはじめとする経営陣による企業文化の体現である。
(中略)第2に、企業文化を具体的な行動につなげる仕組みの構築である。
(中略)第3に、経営は実効という意味ではすべての取り組みに言えることであるが、実際に結果が出ていることを確認するために、企業文化の定期的な見直しと浸透への継続的な取り組みも重要である。
(中略)第4に、グローバル経済の現実を考えれば、グローバル・グループ・ガバナンスを前提とした企業文化の構築が今求められていることは明らかである。


ガバナンスとは、取締役とは、いかなるものか、何をするべきかを理解したいという思いから、手に取った一冊。

併せて、何冊か手に取った中で、実際に社外取締役を経験された方のインタビューが集められた『社外取締役の実像 ー15人の思想と実践』は、視座と解像度が上がる素晴らしい本でした。


自らの焦点が、2020年は戦略、2021年度は兵站に辿り着き、そこから1年を経てガバナンスの世界へ。

さあ、また経営と1年向き合っていく中で、来年はどんな世界へ辿り着くことができるのだろう。

信念とか、人格とか、きっと、技術や能力を越えたものになっていそうな気がしつつ、また答え合わせは1年後に。


【本の抜粋】
コーポレートガバナンス・コードが想定する取締役会とは、マクロな戦略の方向性を取締役会で十分に議論、決定し、その執行に関しては執行部に移譲することで、業務執行の監督により注力し、機動性の高い経営を支える機関としての取締役会なのである。

冨山和彦氏の言葉を借りれば、コーポレートガバナンス・コードは、法律論ではなく、経営論であり、「どのように企業価値を向上させるか、そのためにどのような経営体制を構築して良いくか、どのようにリーダーを育成していくか、どうやってリーダーにインセンティブを与えるのか、どうしたらリーダーの暴走を止めることができるのか」といった点について、指針を提示しているのものである。冨山氏は、「ガバナンス経営を真剣に考えない者に企業のリーダーたる資格は認められない。経営者は、自ら率先して、自社のガバナンスの体制を検討、改良に努めるべきである」とまで書いている。

社外取締役に求められる5つの資質
1. 自社に対する深い理解
2. 監督に必要となる、ガバナンス、経営に対する知見
3. リスクを発見する力
4. 精神的な独立性
5. 企業価値の向上と成長に貢献しようとする強い覚悟と人間性

ピーター・ドラッカー氏の言葉を借りれば、「文化は戦略を朝飯として食べてしまう(”Culture eats strategy for breakfast”)」である。
社外取締役がまず第一に修養すべき知識を考えた時、それは経営全般との関係での企業文化の重要性を理解し評価するうえで活用できるベストプラクティスに関する知識である。

企業永続の8つの法則(ジェイムズ・アベグレン)
1. 明確な氏名やビジョンを持っている
2. 事業を長期的視点に立って経営する
3. 人間をまず先に置く経営
4. 顧客志向の徹底
5. より積極的に事業を通じて公へ貢献してゆくという社会性
6. 変化を恐れず絶えざる革新を目指す姿勢
7. 質素・倹約の勧め
8. 上記の価値観や経営のあり方を組織内で維持し継承してゆく努力を怠らない

好業績に結びつくような企業文化を醸成(またはそうした文化への変革)し、浸透、継承させることに成功していう企業には、以下のような共通する取り組みが行われている。
第1に、CEOおよび代表取締役をはじめとする経営陣による企業文化の体現である。
(中略)第2に、企業文化を具体的な行動につなげる仕組みの構築である。
(中略)第3に、経営は実効という意味ではすべての取り組みに言えることであるが、実際に結果が出ていることを確認するために、企業文化の定期的な見直しと浸透への継続的な取り組みも重要である。
(中略)第4に、グローバル経済の現実を考えれば、グローバル・グループ・ガバナンスを前提とした企業文化の構築が今求められていることは明らかである。

社外取締役が、職責を全うし、企業価値の向上と持続可能な成長に貢献するためには、覚悟のうえ自身の知見を活用し、常に勉強し鍛錬を積み重ね、十分な準備を行い、取締役会あるいはそれ以外の場において、その時々に最善と考える行動、時には「戦い」をしなければならない。

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