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週末読書メモ109. 『エフェクチュエーション 市場創造の実効理論』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

エフェクチュエーションに基づく戦略は、未来が予測不能で、目標が不明瞭で、環境が人間の活動によって駆動される場合に有効である。コーゼーションの立場の人は、求める「結果」からスタートし、「これを達成するためには、何をすれば良いか」を問う。一方、エフェクチュエーションの立場の人は、「手段」からスタートし、「これらの手段を使って、何ができるだろうか?」と問いかけ、再度、「これらの手段を使って、他に何ができるだろうか?」と問うのである。

「目的」から逆算するのではなく、「手段」からスタートするのはどうだろうか?と。コペルニクス的転回のような考え方を知れる一冊。


一般的には、何を進める・変える際、達したい目的からスタートせよ、という意見を耳にします。本書では、「これを達成するためには、何をすれば良いか」を問う立場をコーゼーションと表現しています。

それに対するのが、本書のタイトルにもあるエフェクチュエーション。熟練した起業家を分析した結果、必ずしも目的からスタートしたわけでは無かったと。所与の手段からスタートすることでも、意味のある結果を紡ぎ出せる、と筆者は提言します。


エフェクチュエーションは、起業家が手持ちのハンマーを見て、「ハンマーを使って何ができるだろうか?」だけでなく、「ハンマーを使って釘の頭を打つこと以外に、他に何ができるだろうか?」と問いかける、という事実を指摘する。
(中略)エフェクチュエーションに基づく起業家は、「手段を適応的に用いる」のではなく、「手段を外適用的に用いる」と言い表すのが一番合っている。

数あるイノベーション論の中でも、エフェクチュエーションの最大の特徴は、手段に重点を置くこと。

多くのイノベーション論だと、アイデアを含むインプットの源泉を広げることや、試行錯誤することに重点が置かれています。この理論でもそれを大切にしつつ、まずは手元の手段から始めようと。

その上で、この理論を活かすための5つの原則も示されています。

①「手中の鳥」の原則
:目的に導かれるのではなく、手元にある手段の有効利用を考える手段主導
②「許容可能な損失」の原則
将来の利益予想によって導かれるのではなく、どの程度の損失まで耐えられるかを計算し、投資をその範囲内に抑えようとする
③「クレイジーキルト」の原則
:あらかじめ決められたコンセプトをもとに必要な資源を探すのではなく、協力者が提供してくれる資源を柔軟に組み合わせて価値のあるものを作り出す
④「レモネード」の原則
:レモン(粗悪品)をつかまされたらレモネードをつくれ
⑤「飛行機の中のパイロット」の原則
:外界の力を利用して失敗を回避し成功を収めるのではなく、自らの力と才覚を利用して生き残る

エフェクチュエーションという定義自体も示唆に富む上で、②~⑤の原則が興味深く。②と③は、いかに資源(手段)を多く使うか・増やすかということであり、④と⑤でいかに結果へ繋げるかを示してるように思えます。

(個人的に刺さったのは②「許容可能な損失」の原則。『適応戦略』の中で取り上げられている「パリチンスキーの原則」と合わせて、胸に残ります)

「パリチンスキーの原則」
①新たなるアイデアを発掘し、新しいことを試すべし
②何か新たなことを試すときには、失敗しても致命傷にならない範囲で行うべし
③フィードバックを得て、失敗から学びながら先へ進んでいくべし


この本を読みながら、(過去にも触れましたが…)言語化し、定義する大切さが身に沁みます。

今さら… それは違うな青井。 大事なのは、そこに「ハーフレーン」という名前をつけてまで、 意識することなんだ。

なんとなく使ってきたエリアをはっきりと認識し 11人全員で共有する。「サッカーは3レーンじゃなく5レーン」 現に今初めて認識できただろう青井?

エフェクチュエーションしかり、5つの原則しかり、ふわっと頭の中にある状態ではなく、言語・概念として捉えられること。そうすることで、抽象と具体の世界を行き来し、更には敷衍化されられると。


とはいえ、重要なのは下記の内容だろうなあ。

コーゼーションの問題は、「選択の問題」である。エフェクチュエーションの問題は、「デザインの問題」である。コーゼーションの論理は、「選択」を助ける。エフェクチュエーションの論理は、「構築」を助ける。
(中略)重要な点は、同じ人物が状況の要請に応じて、コーゼーションとエフェクチュエーション双方の推論を用いることができることである。実際、熟達した起業家は、双方の能力を持ち、双方のモードをうまく使い分けている。

(手段から始める)エフェクチュエーションは、(目的から始める)コーゼーションと対立するものではなく、あくまで一つの方法でしかないことも強調されています。

この数週間、改めて戦略を学び直している中で、感じることは、世の中に溢れる理論というのは、全て一戦略・戦術でしか無いということ。

それは、まるで将棋や囲碁の一戦法と同じように(だからこそ、それをいかに実践で使い分けられるか、使いこなせるかの方が大事)。

けれども、引き出しの広さや深さが、自分を支えてくれるのも確かで。

新たな視点を得られると同時に、これからも学ぶこと、考えること、実行することを続けていきたいと思わせられる一冊です。


【本の抜粋】
エフェクチュエーションに基づく戦略は、未来が予測不能で、目標が不明瞭で、環境が人間の活動によって駆動される場合に有効である。コーゼーションの立場の人は、求める「結果」からスタートし、「これを達成するためには、何をすれば良いか」を問う。一方、エフェクチュエーションの立場の人は、「手段」からスタートし、「これらの手段を使って、何ができるだろうか?」と問いかけ、再度、「これらの手段を使って、他に何ができるだろうか?」と問うのである。

エフェクチュエーションの核心にあたるアイデアは、エフェクチュエーションに成功した起業家は、世界の中の既存の機会を「発見し、利用する」のではなく、彼らの生活と価値体系に基づく平凡な現実の中から、そうした機会を「つむぎ出す」人物である。

「手中の鳥」の原則
・目的に導かれるのではなく、手元にある手段の有効利用を考える手段主導
「許容可能な損失」の原則
・将来の利益予想によって導かれるのではなく、どの程度の損失まで耐えられるかを計算し、投資をその範囲内に抑えようとする
「クレイジーキルト」の原則
・あらかじめ決められたコンセプトをもとに必要な資源を探すのではなく、協力者が提供してくれる資源を柔軟に組み合わせて価値のあるものを作り出す
「レモネード」の原則
・レモン(粗悪品)をつかまされたらレモネードをつくれ
「飛行機の中のパイロット」の原則
・外界の力を利用して失敗を回避し成功を収めるのではなく、自らの力と才覚を利用して生き残る

要素1:目的ではなく、手段からスタートする
要素2:期待利益ではなく、許容可能な損失
要素3:最初の顧客がパートナーになり、パートナーが最初の顧客になる
要素4:競争を無視し、パートナーシップを強調する
要素5:市場は、見つけるものではなくつむぎ出すものである
要素6:事前に選んだ目的ではなく、予想もしなかった結果

エフェクチュエーションは、起業家が手持ちのハンマーを見て、「ハンマーを使って何ができるだろうか?」だけでなく、「ハンマーを使って釘の頭を打つこと以外に、他に何ができるだろうか?」と問いかける、という事実を指摘する。
(中略)エフェクチュエーションに基づく起業家は、「手段を適応的に用いる」のではなく、「手段を外適用的に用いる」と言い表すのが一番合っている。

コーゼーションの問題は、「選択の問題」である。エフェクチュエーションの問題は、「デザインの問題」である。コーゼーションの論理は、「選択」を助ける。エフェクチュエーションの論理は、「構築」を助ける。
(中略)重要な点は、同じ人物が状況の要請に応じて、コーゼーションとエフェクチュエーション双方の推論を用いることができることである。実際、熟達した起業家は、双方の能力を持ち、双方のモードをうまく使い分けている。

科学的手法が実験の倫理を通じて機能するのと同じように、エフェクチュエーションの論理は、起業家的手法を駆り立て進歩させるものである。
(中略)それがなんらかの紅葉をもたらす可能性は、それが1つの「方法」であり、「世界観」であるという事実に起因している。それは、多様な貢献を生み出す可能性のある、より広範な人々に教授され、学習される論理をもつプロセスである。

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