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週末読書メモ107. 『戦略サファリ 戦略マネジメント・コンプリート・ガイドブック』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

二項対立を超えた世界を見せてくれる一冊。


ある日、6人の盲人が象を触ってその正体を突きとめようとしました。
1人目は象の鼻に触り、「象とは蛇のようなものだ」と言いました。
2人目は象の耳に触り、「象とはうちわのようなものだ」と言いました。
3人目は象の足に触り、「象とは木の幹のようなものだ」と言いました。
4人目は象の胴体に触り、「象とは壁のようなものだ」と言いました。
5人目は象のしっぽに触り「象とはロープのようなものだ」と言いました。
6人目は象の牙に触り、「象とは槍のようなものだ」と言いました。
それから6人の盲人たちは長いこと言い争い、それぞれが自分の意見を譲りませんでした。

6人の盲目と象

上記は、有名な「6人の盲目と象」の話です。各々の主張は正しい、けれど、一部を切り抜いて捉えており、誰1人全体像を掴めていません。

様々な場面で散見されることですが、それは「戦略論」でも然りで。

その中で一石と投じたのが、ヘンリー・ミンツバーグさんによる本書『戦略サファリ』となります。


結局のところ戦略形成とは、価値観とビジョン、コンピタンスとケイパビリティだけでなく、軍隊と参謀家、危機とコミットメント、組織学習と断続的平衡、産業組織と社会変革といったところにまで及ぶものなのである。

一方的に計画的で、まったく学習のない戦略はほとんどない。しかしまた、一方的に創発的で、コントロールのまったくない戦略もない。現実的な戦略はすべてこの2つを併せ持たなければならない。

ある人は計画性が重要だと言い、ある人は創発性が重要だと。また、別の観点だと、戦う場所が重要だという意見があれば、戦う力量が重要だと。

著者は言います、どちらも大事!だと笑


著者の魅力は、全体を俯瞰する重要性を説くと同時に、各部分を理解することも強調していることだと感じます。

誰も象の全体像を見ようというビジョンをもたず、どこか一部分を捉えるだけで、他の部分については「よく知りもしないのにけなす」のだ。部分を足し上げたところで象を理解できるわけではない。本当の象はそれ以上なのだから。しかし全体を理解するためには、まず部分を理解することが必要だ。

一貫して、二項対立ではなく、二項動態的な考え方に惹かれます。


その一つの解として、著者自身の主張として挙げているのが、コンフィギュレーション(配置調整の状態)・スクールです。

「地球の歴史をたどってみると、どの局面においても一兵卒の生涯によく似ている。それは、長々と続く退屈の時期と、一瞬の恐怖の時期の繰り返しなのだ(スティーヴン・ジェイ・グルード)」
これまで述べたことはのすべてを包括する。コンフィギュレーション・スクールのメッセージはこの一言に尽きる。このスクールは、それぞれのスクールがその最もふさわしい時と、その最もふさわしい場所に存在するという独自の考え方をもっており、すべてのスクールの土台となるという点で他のスクールとは一線を画す。

日本語だと馴染みが薄い表現ですが、要は個別の状況に応じてシームレスに変化しながら、全体として統合させるということ。

発展期にはポジショニング、安定期にはケイパビリティ、模索機にはラーニング、革命期にはアントレプレナーを重視というように。(そして、生き残り続けるにはそれを繰り返えさなければならないと…)


本作以上に、より個別具体的に、各経営理論が取り上げられた本が、2019年に出版された入山章栄さんによる『世界標準の経営理論』。

ガイドブックであり、辞典のようなこちらの本も素晴らしかったですが、そのはしりとなる本書『戦略サファリ』も手元に置き、何度でも読み返す価値のある一冊でした。

もっと大事なことは、各スクールの狭い範囲を越えなければならないことである。つまりすべてのスクール、そしてそれ以上のものを結びつけている戦略形成と称するこの獣が、実際どうやって生きているのかを知る必要がある。
(中略)プロセスと内容、静的と動的、制約と閃き、認知と集合、計画と学習、そして経済的と政治的、という具合に視界を拡げることだ。つまり、部分を探求することに加え、戦略形成という獣の全容にもっと注意を払う必要があるのだ。

部分と全体、そして流れ。虫の目と鳥の目、そして魚の目を持って、これからも物事と向き合っていきたいです。


【本の抜粋】
誰も象の全体像を見ようというビジョンをもたず、どこか一部分を捉えるだけで、他の部分については「よく知りもしないのにけなす」のだ。部分を足し上げたところで象を理解できるわけではない。本当の象はそれ以上なのだから。しかし全体を理解するためには、まず部分を理解することが必要だ。

各スクールとそれぞれの戦略プロセスにおける見解は次の通りである。
・デザイン・スクール コンセプト構想プロセス
・プランニング・スクール 形式的策定プロセス
・ポジショニング・スクール 分析プロセス
・アントレプレナー・スクール ビジョン創造
・コグニティブ・スクール 認知プロセス
・ラーニング・スクール 創発的学習プロセス
・パワー・スクール 交渉プロセス
・カルチャー・スクール 集合的プロセス
・エンバイロメント・スクール 環境への反応プロセス
・コンフィギュレーション・スクール トランスフォーメーションプロセス

結局のところ戦略形成とは、価値観とビジョン、コンピタンスとケイパビリティだけでなく、軍隊と参謀家、危機とコミットメント、組織学習と断続的平衡、産業組織と社会変革といったところにまで及ぶものなのである。

一方的に計画的で、まったく学習のない戦略はほとんどない。しかしまた、一方的に創発的で、コントロールのまったくない戦略もない。現実的な戦略はすべてこの2つを併せ持たなければならない。

戦略という獣
・戦略は組織と環境の双方に関与する
・戦略の本質は複雑である
・戦略は組織全体の繁栄に影響を与える
・戦略は内容とプロセス双方に関係する
・戦略は完璧に計画的ではない
・戦略はヒエラルキーが存在する
・戦略にはさまざまな思考プロセスが関係する

「地球の歴史をたどってみると、どの局面においても一兵卒の生涯によく似ている。それは、長々と続く退屈の時期と、一瞬の恐怖の時期の繰り返しなのだ(スティーヴン・ジェイ・グルード)」
これまで述べたことはのすべてを包括する。コンフィギュレーション・スクールのメッセージはこの一言に尽きる。このスクールは、それぞれのスクールがその最もふさわしい時と、その最もふさわしい場所に存在するという独自の考え方をもっており、すべてのスクールの土台となるという点で他のスクールとは一線を画す。

もっと大事なことは、各スクールの狭い範囲を越えなければならないことである。つまりすべてのスクール、そしてそれ以上のものを結びつけている戦略形成と称するこの獣が、実際どうやって生きているのかを知る必要がある。
(中略)プロセスと内容、静的と動的、制約と閃き、認知と集合、計画と学習、そして経済的と政治的、という具合に視界を拡げることだ。つまり、部分を探求することに加え、戦略形成という獣の全容にもっと注意を払う必要があるのだ。

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