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週末読書メモ26. 『繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

定義しきることの重要性。これを改めて感じさられる一冊でした。


先週同様、イノベーションの大家、クリステンセンによる著冊。

内容もさることながら、節々から滲み出る一流の理論構築者のレベルに、感嘆を禁じえません。

(前回『イノベーションの最終解』↓)


内容としては、貧困を取り巻く「無」消費経済こそ、最も成長が見込まれる場所であり、その成長には、市場創造型イノベーションが必要、と述べています。

その結論を示すため、市場創造型イノベーションとは何か、何が障害となりいかに乗り越えるべきか、イノベーションの先に産業や社会にどのような繁栄があるのか等を、様々な事例と考察をもとに語られていきます。

本書の内容が一読に値することはもちろん、強く印象を受けたのは、物事を定義しきる姿勢とその重要性です。

繁栄を「多くの地域住民が経済的、社会的、政治的な幸福度を向上していくプロセス」と定義した。

イノベーションという言葉は、ハイテクや高機能のプロダクトだけを意味するのではない。イノベーションとは、「組織が労働、資本、原料、情報をより高価値のプロダクト/サービスのかたちに転換するためのプロセスにおける変化」である。

たいせつだとわかってはいても、イノベーションの定義は人によってちがい、イノベーションのタイプによって経済に与える影響がどう異なるかはあまり認識されていない。
(中略)イノベーションを、持続型、効率化、市場創造型の3つに分類し、それぞれが組織と経済に及ぼす影響についてまとめる。

本質を捉え、具体的かつ明瞭的。その上、簡潔。

これまで、何となく把握・表現してきた経験を反省させられます。

繁栄にしろ、イノベーションにしろ、ふわっしたイメージは持つことはできます。しかし、言語化し、定義することによって、イメージされたものは、その解像度が前者とは比べようもありません。


偶々読んだサッカー漫画「アオアシ」にも、同様のテーマが強調されられていました。

今さら… それは違うな青井。 大事なのは、そこに「ハーフレーン」という名前をつけてまで、 意識することなんだ。 なんとなく使ってきたエリアをはっきりと認識し 11人全員で共有する。「サッカーは3レーンじゃなく5レーン」 現に今初めて認識できただろう青井? ……!! じゃ、じゃあハーフレーンに選手を集めろってこと? それが革命的な攻撃形? 5レーンアタックを成立させるためのルールを言う。 トライアングルを作るのは大前提としてー…

まさにこれ。意識すること、正しく理解することにより、その後の思考・行動に与える影響は計り知れません。

というより、ふわっと捉えているレベルでは、解像度が低すぎて、実現まで持っていけないんだよな…


本書から感じた、概念レベルの事象であっても定義しきる、その意思。

本質を捉え、言語化しきる能力を高めることが必須の上、自分もそんな姿勢を持った人でありたい。


【本の抜粋】
エフィサは、貧困、あるいは貧困の明らかな兆候を緩和しても、長期的な問題解決にはならないと悟った。貧困を緩和することと繁栄をつくり出すことは同じではない。
(中略)本書では、繁栄を「多くの地域住民が経済的、社会的、政治的な幸福度を向上していくプロセス」と定義した。

優れた理論に照らすことは、問題の枠組みを明らかにし、正しい質問をつうじて有効な答えを得るための、最も優れた方法だと言える。理論に照らして考察することは、「何がこれを引き起こすのか、そしてそれはなぜか」というきわめて現実的な問いに集中することである。

イノベーションという言葉は、ハイテクや高機能のプロダクトだけを意味するのではない。イノベーションとは、「組織が労働、資本、原料、情報をより高価値のプロダクト/サービスのかたちに転換するためのプロセスにおける変化」である。

たいせつだとわかってはいても、イノベーションの定義は人によってちがい、イノベーションのタイプによって経済に与える影響がどう異なるかはあまり認識されていない。

子をもつことと、社会で成功する生産的な人材を育てることが別物であるように、制度を創設することと、それを維持していくことは同じではない。
繁栄とはプロセスであって1回限りのイベントではないし、制度は建物や場所で表されるものではなく、プロセスが積み重なったものだ。

腐敗とは、よい選択肢の少ない地域で生きる人にとって、実用上、他の方法より少しはましな対処法であって、「片づけるべきジョブ」のために ー より具体的には、特定の環境下で人の「進歩」を後押しするために ー 雇用されるものなのだ。この点を意識してほしい。なぜ人が腐敗に目を向けるのかを理解すれば、解決策を違う視点から模索することができる。

より具体的には、新しい市場を創造することは、莫大な利益を得るためだけでなく、地域を持続的に発展させるために私たちにできる最も重要なことのひとつだ。世界は機会であふれている。正しく見さえすれば。

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