【ショートショート】お手本
明日がまた来るのだと思うと夜も眠れないこのつましい日々に、唯一明かりを灯してくれたのは一冊の本だった。
それは、1人の青年がただ淡々と日々を生きていく話で、何か特別なドラマがあるだとか、強烈なメッセージ性があるだとか、そんなものでは決してない。
けれど、彼のその何に流されるでも、何に立ち向かうでもなく、まるで最初から世界と関係がないように、何とも関わらないで、それでも独り淡々と生きていくという姿が、私には何だかとても美しく思えた。
行きたくもない仕事に行って、聞きたくも