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Dana-Dan / Bloodywood 歌詞全和訳(解説・韻分析付き)

BloodywoodのDana-Danの歌詞が素晴らしかったので、自分なりに日本語訳してみました。ヒンディー語については、参考のためヒンディー→英語、日本語の自動翻訳も試みましたが、無理があったので公式の英訳から訳しました。

一部、より正確な歌詞の理解のため、同じ歌詞に対してより作り込んだ歌詞訳と、ほぼ直訳の口語訳を付けています。原文の下、上段が歌詞訳、下段文字色灰色が口語訳です。
歌詞訳については、速いラップの部分はできるだけ英語のリズムに合うように、韻を踏んでいる部分はできるだけ韻を踏むように訳したので、本家を聴きながら読んでいただくのがおすすめです。歌詞全訳とラップパート韻分析の後に注釈(ヒンディー語、ラップパート1番2番別)とあとがきがあります。

[2024/05/26追記:友人とカラン様(Bloodywoodのリーダー)協力の下、訳を改善し、1番の字幕動画を作成しました。また、記事を全体的に修正しました。]


日本語歌詞付き動画(1番のみ)

歌詞全訳

*はヒンディー語部分注釈、※はラップパート注釈です。

ヒンディー語部分注釈

[1番]
*1「悪魔に取り憑かれた」のではなく、加害者の男[he]が能動的に悪魔が取り憑くのを許す様子が公式の英訳に表現されています。
*2 ここはヒンディー語のことわざのようなものらしいです。「言葉で言っても分からない奴には暴力で分からせるしかない」という意味です。
*3 この歌詞から「殺せ」は言い過ぎだという意見もあると思いますが、どう聞いても"die"に聞こえるワードを繰り返すサビにしたのは偶然ではないと思います。どちらにしろ途中で「絞殺」、「善なる殺人」、[head shot]してしまっているので、既に殺してます。メタルらしいですね。

ラップパート韻分析

以下からラップ部分の韻分析です。ブロックごとに韻を踏んでいる部分を同じ(近い)音ごとに色分けしています。無駄なコメント付き。

ラップパート注釈

[1番]
※1 見せるだけでなく、殴るところを録画[tape]して見せているところが過激ですね。面々(=被害者の彼女達)に名が無い[nameless]のは、加害者[he]にとって被害者の名前など認識するにも値しないであろうこと、また、性暴力の被害者が実名で被害を告発しにくいといった現実を反映したものでしょう。
※2 [I may change his kind with my mind] [mind]は思考・考え、及び考えている意見や主張です。[kind]はその人の性質、本性、どのような人間であるかです。つまり、対話などによって加害者たちを変えたいが、話が通じないので暴力で叩きのめすという流れですね。
[but]「でも」と迷いましたが、[but]は1音節なので、母音も同じ「が」にしました。
※3 It=直前の[beast]
※4 [delete]を「断罪」は厳しいですが、「死体」と踏みたかったので。。

[2番]
※1 [get got]は他人により攻撃される、もしくは殺されることを意味するスラングのようです。「やられる」みたいな感じでしょうか。
※2 [core]=物事の中心であるものを[clean out]=きれいに取り除く
※3 ここでの[thug]は、殺戮の女神カーリーを信仰するインドに実在した秘密結社thugのことでしょう。絞殺による殺人を行い、カーリーへの供物としたそうです。青い肌の女神カーリーはMVでも明確にモチーフにされていますね。
※4 なんと、[ammo to stack]と「難攻不落」で全母音完璧に踏めます。武器がいくらでもある=余力がある、要は俺達はめっちゃ強いということなので、ギリギリ解釈内の訳でしょう。
※5 繰り返しがあるので敢えて違う訳にしました。日本語らしくすると、主語や述語が曖昧になってしまう傾向があります。日本語の特性で、何事もはっきり言う英語との違いなのですが、こういった課題を議論する際は、責任の所在を曖昧にしてしまうなど問題もあると思います。 また、例えば映像に合わせて字幕を付けるなら、この辺りはもう少し短い訳を考えないとならないわけで、そこも翻訳の面白い所ですね。

曲の内容について

公式の説明にもある通りですが、性暴力事件への激しい怒り、過激な制裁の描写で終わるのではなく、社会における自らの役割を認識し、このような犯罪をなくすため連帯を呼びかけるところまで行くあたりに本気を感じます。
ラッパーのRaoulが公式メンバーになったことにより、ラップパートで語れる情報量が増えたことも大きいでしょう。しかし伝えたい内容を逸脱せずにものすごい勢いで韻を踏んでいて脱帽です……。

犯罪者を暴力で叩きのめすだけの内容だったら、「暴力的なメタルの歌詞」で留まっていたかもしれません。そこから一歩踏み込んで、他人面をしない社会を目指そうというメッセージにまで一曲の中で発展させたことが凄いのです。また、凶暴な歌詞の裏にあるのは、性暴力の被害者、そして全ての女性のEmpowermentです。
「ただのメタルの曲」を跳び越えていくこの曲はまさに「ニューメタル」と言ってよいでしょう。

しかしそれを置いても置かなくてもとんでもないキラーソングなので、また来日して演奏してくれるのが超楽しみですね!

日本語訳について

一部2種類の訳を付けたことで見づらくなってしまいましたが、同じ文章についてどれだけ違う訳ができるか、そして翻訳の面白さを少しでも伝わっていたら幸いです。
ラップを日本語訳すると、英語と日本語の文法や単語、音節の位置の違いが分かって面白いです。Raoulがあまりに切れ味鋭く韻を踏みまくるので、韻を考えるのが特に大変でした。これ、原文と同じ母音・同じ位置で韻を踏めるとめちゃくちゃ気持ちいいですね。新しい扉が開きました。上手く音に合わせられなかった部分があるのが悔しいです。

口語訳と見比べていただければ分かる通り、一部の注釈を付けた部分は韻のために微妙に意味が違う単語にしています。怒涛のラップの勢いを少しでも再現できていたら幸いです。

協力してくれたラップ好きの友人、英語の解釈をサポートしてくれたアメリカ人の友人、そしてカラン様、ありがとうございました!

Gaddaarも訳しているのでこちらも是非→


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