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「理不尽の壁を越える」と逆に楽 _ フカイのまとめ<上司編#4/4>

期待しないほうがいいよ、素晴らしい上司は1%程度しかいないのだから「オレの上司まじクソ……」というその失望自体にそもそも意味がないよ。

3回にわたって書いてきました。
「上司シリーズ」初回はコチラ▷▷▷歴史のカリスマリーダーは99%クソ上司! _feat.織田信長、始皇帝 <上司編#1/4>

英雄≠リーダーシップ

歴史上で圧倒的に評価されているような人たちも、そのリーダーシップは一部の人間のみにしか適応しないことも少なくありませんでした。

織田信長でいうと、本人が優秀であるゆえに全方位的に能力が高い部下しかついていけませんでした。古代ギリシャのマケドニア王国の王で、1度も戦に負けなかった世界史における英雄の中の英雄・アレクサンドロスもそう。

若いころから自分が超絶デキてしまうから「(オレは難なくできるのに)なんでオマエはできねぇんだ? 怠けているんだろ?」と、うまくいかない人たちの気持ちがわからなかったんです。

上司とむやみに対立する必要はないですが、就いた上司が討ってくるからやり返していった結果、それがモンゴル帝国を一代で築くことになった世界の覇者、チンギス・カンのような人物もいます。

上司に恵まれた人が成功しているわけでは決してない。それは歴史が示しています。

どんなリーダーに就こうが、腐らない自分でいればいいんです。

現代はたぶん、イイ上司は1%以上いる

過去と並べて考えると、現代はもっとも上司に恵まています。

人類史でいうと、トップやリーダーの意向や考え方に合わないと部下は排斥されるか殺されるのがスタンダードでした。君主国だと有無を言わさず抹殺されることもしばしばです。

遠い昔にあった話ばかりではないですよ。ソ連の崩壊まで最高指導者だったスターリンは完全なクソ上司です。反体制派への各地での大量殺戮による犠牲者は数百万人〜数千万人に及ぶといわれていますし、独裁体制が続く北朝鮮においてはいまでも殺されています。

現代日本におけるいい上司の数は、おそらく1%よりも多いとも思うんですよ。マネジメントにまつわるビジネス書は大量に出版されていますし、リーダーになる人はマネジメントという言葉がなかった昔よりは勉強していますからね。

世界史上でマネジメントするのがうまい人たちが最も多い状態が、「いま」なんです。

謀反しなくても組織を変えられる

上司からの度重なる無理難題に耐えかねて精神を壊したといわれている(最新の説だとそうでもないらしいけど)部下・明智光秀は、討つしかないまでに追い込まれたわけですが、いまは上司がクソなら組織を変えればいい

ただ、これまでの「いい上司は全体の1%理論」でいくと、職場を変えてもまたクソ上司に当たる確率が濃厚なわけで(笑)。

そこは「クソ度の違い」です。組織を変えてどんな上司についても理不尽なことは起きますが、「自分が耐えられるタイプの理不尽と、耐えられないタイプの理不尽」があります。

道理に合わない様々なことが起こるなかで、自分が耐えられるタイプのことしか起きない組織にいるとずいぶん楽になります。

数ある理不尽の中でも自分がアウトなのは?

僕の場合は、大企業からベンチャーへ移ったときがそうでした。

ベンチャー企業では、筋の通らないことが日々山ほど起こります。上層部で決めて全体に出した方針がその日の朝と夜で変わることは当たり前だし、急な仕事が夜中に降ってきたりもします。だけどそんな数々も、僕にとっては最初に入った大企業での「上司に忖度して褒めていい気分にするのが部下の務め」という不条理よりはずっと良かった。

もっとも大切なことは、尊敬できる人たちと働けること。そこさえ担保されていれば、無茶苦茶な仕事の降られ方をしても前向きにとらえることが僕の場合はできるんです。

自分は何を大事にしているのかその大事にしていることを同様に大切にしている人たちと働けていさえすれば、横暴な上司はいるんだけれども苦しみの質は大きく変わります

どの理不尽が自分は許せないかを知っておくのは必要だし、いまクソ認定している上司が世界中の上司においてどのあたりに位置しているのか。客観的な理解があるといい。つまり、「クソ上司のレベル感」ですね。

上司に文句を言っているけれども、実はそのほとんどが世にいる上司の全体から見ると良いほうであることはよくあります。ボスを5人ぐらい経験して平均値を体感的に知ると、「だいたいこんなものか」「最初の課長にめちゃくちゃ泣かされたけど、いい人だったな〜」というふうに落ち着きます。

理不尽の壁を越える

というわけで、クソ上司がいる状態が実は世の中のデフォルトで歴史上もそうであったこと、現代はむしろクソ上司の割合が下がり質の良い上司が増えているであろうことを伝えてきました。

いま就いているのが世界のクソ上司のなかでトップクラスに入るクソであれば転職したほうがいい。そこらへんによくいるクソ上司レベルならその理不尽を対処する術を学ぶといいし、そうしないとどこでも同じ苦しみを味わうことになる。一生グチを言って暮らさねばならなくなります。

理不尽が自分の身に起こっていると、自分だけが割を食っているように感じるもの。

でも世界や歴史を見渡してみれば、そもそも世界はそういうものだった

「一見自分にしか起こっていないように見える理不尽」を、実はどこにでもよくある再現性の高い理不尽であると認識し直す。それを超えようとすることを僕は、「理不尽の壁を越える」と呼んでいます。

世界や歴史から「自分の現在地」を知る

世界が変わることは期待しない。自分が対処することを学ぶ。

精神論でがんばろうとか耐えようとかではなく、過去も含めた世界を見て、自分の置かれている現状をポジショニングする。そのうえで世界とのつき合い方やその現実に自分がどう向き合うかを決める。

これが一番大切だし簡単だと思うんです。自分にとっての納得感も高いし迷いもなくなります。

歴史と実経験から僕が学び、気づいたことの1つです。


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このnoteでは、歴史を学ぶことで得られる「遠さと近さで見る視点」であれこれを語っていきます。3000年という長い時間軸で物事をとらえる視点は、猛スピードで変化している今の時代においてどんどん重要になってきます。

何千年も長い時間軸で歴史を学ぶと、自分も含めた「今とここ」を、相対化して理解できるようになります。世の中で起きている経済や社会ニュースとその流れから、ビジネスシーンでのコミュニケーションや組織づくり、日常で直面する悩みや課題まで、解決できると僕は信じています。

人間そのものを理解できたり、ストーリーとしての歴史のおもしろさを伝えたくて、歴史好きの男子3人で『コテンラジオ_COTEN RADIO』も配信しています。PodcastYouTubeとあわせて聴いてもらえたらうれしいです。

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(上司シリーズおわり)
来週の9月からは新シリーズがはじまります。ただいま準備中!

編集・構成協力/コルクラボギルド(平山ゆりの、イラスト・いずいず

株式会社COTEN 代表取締役。人文学・歴史が好き。複数社のベンチャー・スタートアップの経営補佐をしながら、3,500年分の世界史情報を好きな形で取り出せるデータベースを設計中。