見出し画像

リーディング公演とブロードウェイ

リーディング公演とは

日本ではあまり馴染みのないリーディング公演だが、NYのブロードウェイではほぼ全ての新作の演劇作品がこのリーディング公演を経て、僕たち観客の前に正式な作品として上演されている。

リーディング公演がなぜ行われるのか説明するには、日本の演劇形態とアメリカの演劇形態の違いを少し説明する必要がある。
そもそも外国では日本でイメージするような劇団という集団ではなく、劇場に俳優が所属している。(そうでない劇場も沢山ある)
劇場側は持ち込まれた戯曲から面白そうな作品があると、所属する役者を使って観客に公開する。
そこで、自分の戯曲を上演して欲しい作家は劇場に戯曲を持ち込み、俳優がお客様(主に関係者や投資家)を前にして台本を持ちながら演技をしたのち、ディスカッション(話し合い)をして、次の公演作品を決める。
そのために上演するのが「リーディング公演」の始まりだ。

または所属する俳優がいない劇場も沢山あるので、その場合はプロダクション側が俳優をオーディションして、劇場主や関係者を集めてリーディング公演をする事も沢山ある。

僕の書いた作品はまさに後者のパターンで、まだ劇場側に相応しいかどうかの判断を仰ぐ前の段階だが、現時点では自分で俳優もスタッフも劇場も探してリーディング公演の準備をしている。
(一緒にやってくれる人を本当に求めてます。)

リーディング公演の形式は、基本的には照明はなし、音楽はミュージカルであればピアノやドラムのシンプルなセットのみで、俳優も衣装などは着ていない。
台本を持ちながら自分が出るシーンになると前に出てきて台本も持ちながら、立って相手役と演技をする。出番じゃない人はその後ろで座っているというのが一般的な形式だ。

今回のリーディング公演の目的

今回僕が目的にしているのは、現段階の台本がちゃんと観客の心を掴んでいるのか、面白いと言ってもらえるのか、そして一番大きなポイントは日本語で演じ英語字幕を付けて上演した時に自分の作品がちゃんと届くのか
この判断するために、関係者や投資家などを集めて感想をもらう事を目的としている。

正直資金さえあれば誰だってオフブロードウェイでもブロードウェイでもカーネギーホールでも自分の作品は上演できる。(相応しくないと思われれば劇場に断られる事もある)
多分だけど武道館だってお金さえあれば誰でも使うことができるはず。

けど僕の目的はその場所で公演をする事ではない。
僕の目的は目の肥えたニューヨーカーを感動させスタンディングオベーションをさせる事。

オフブロードウェイであっても2週間くらい公演をすれば5万ドルは最低でもかかる。
僕にとって5万ドルは大金だ。
観客の反応が全くわからないまま大金を使って上演する余裕はない。
そのためにも関係者に一度見せて、いけるかどうか、改善すべき点はどこなのかなど、意見を貰うことは舞台を成功させるためには絶対条件なのだ。

実際にリーディング公演を見に行って

2022年は何回かリーディング公演を見に行くことができたのだが、そのどの公演も出演していた俳優はブロードウェイの舞台に立っている一流の俳優達。
去年見に行った一つにブロードウェイでの上演を予定している「Poupelle of Chimney Town」があったのだが、正直俳優陣の演技の高さに度肝を抜かれた。
何が凄いって、僕は彼らが台本を初めて手にしてから僕たち観客の前で発表するまでに何回もの稽古を重ねてその日に至っているんだろうなと思って観ていたのだが(そのクオリティ)終わった後に聞いてみたら、たったの4回とかしか稽古をしていなかったというのだ。

それは本当に圧倒的で、まずミュージカルの場合音楽も頭に入れなければならないしセリフもある程度入れなければ相手役と人に見せれる芝居などできない。
そして感情も用意する必要があるし、キャラクターも用意しなければならない。

その全てを僕の見た俳優陣は全員クリアしていた。
ブロードウェイでは当たり前なのかもしれないが、正直とんでもないなと思った。
観客も見終わった後はスタンディングオベーション。

そりゃそうなるよ。

他のリーディング公演に関しても同じクオリティだった。
俳優陣はその時点ではキャスティングされているが、まだ正式に本公演への出演が決まっているわけではない。
だからこそ台本を貰ってからたった数日であそこまでのクオリティに持っていき、結果を出す事が本公演に向けての自分のアピールに繋がるのだろう。
ブロードウェイ俳優の実力を実際の舞台以上に目の当たりにする事ができた貴重な機会だった。

自分の作品も(今回は俳優、演出、脚本、プロデューサー全てやります)、当然ながら僕が去年見てきた素晴らしいリーディング作品と同じ土俵の上で本場ブロードウェイの業界人に見せて戦わなければならない。
よくよく考えるとなんでこんなことやっているんだろうと自分でも思う。
自分ではイケる!とは思ってるんだけど実際に見せてどんな反応が返って来るかはわからない。
7年もかけて作ってきたのにボロクソに言われたら立ち直れないかもしれない。

けど挑戦ってそういう事なんだと思う。
僕は挑戦してどんな結果になろうと、また挑戦して戦い続ける生き方が好きなんだろう。
そしてそんな生き方をしている人たちが好きだし憧れているんだ。

自分もそんな風に生きて自分の生き方で誰か1人でもいいから勇気や希望を与えられる生き方をしたいと思っている。


ここで集められた寄付金は今年行われるNYでのリーディング公演の資金に使わせていただきます。ご協力お願いいたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?