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白いワンピースを着た少女

全日本学生映画祭は、日本でも最も歴史のある学生映画祭のひとつである。その名の通り学生が撮った映画を上映する映画祭で、作品は全国から公募され、審査を通過した作品が上映される。実写、アニメーション、長編短編さまざまな作品が日本全国から集められ、各部門の優秀作品には賞も与えられる。

その由緒ある映画祭が今年で30周年を迎えるにあたって、記念の上映会が行われることとなった。それは過去の公募作品の中から『白いワンピースを着た少女』が出てくる映画ばかりを集めた特集上映だった。学生映画には、とにかく『白いワンピースを着た少女』がやたらと出てくる。主人公が恋に落ちる相手、夢に出てきて主人公の行く末を暗示するような何かを示す少女、何だかよく分からないタイミングで登場して何だかよく分からない思わせぶりな表情を見せて消える謎の少女…。何となくイメージっぽい存在、何となく無垢な存在、何となく女性の中の少女性を示唆する存在、何となく過去(或いは未来)を示唆する存在として、学生さんたちはついつい白いワンピースを着た少女を出してしまうのだ。特集上映『白いワンピースを着た少女』は、過去の上映作品だけでなく当時は審査に漏れて上映されなかった作品までもが集められ、作品数は長編短編合わせて47作品にもなった。

せっかくこれだけ『白いワンピースを着た少女』の作品が集まるのだからと、『白いワンピースを着た少女』映画賞も開催されることになった。観客による投票と実行委員会による投票、そしてゲスト審査員の小林延彦監督による厳正な審査により、当時京都の大学生だった森本亜都夢さんの2007年の作品『白いワンピースの少女 〜WHITE ONE PIECE〜』が大賞に輝いた。白いワンピースに日本刀を携えた少女が、同じように様々な武器を持った白いワンピースの少女たちとバトルを繰り広げる45分の作品で、返り血に染まった白いワンピースで少女が佇むラストシーンの美しさは際立っていた。授賞式には森本さんも駆け付けた。大学を卒業した後は出版社に勤め、今は映画も撮っていないのだと言う。しかし、『白いワンピースの少女 〜WHITE ONE PIECE〜』で手斧を持った白いワンピースの少女を演じていた女性と結婚し、双子の娘さんのお父さんになっているとのことだった。森本さんには白いワンピースの少女のレリーフが入った盾が送られ、観客たちは温かい拍手で授賞を祝った。映画祭30周年にふさわしい素晴らしい式、素晴らしい企画上映だったと思う。次回は、『劇中にパッヘルベルのカノンが流れる』特集上映を企画しているらしい。

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