ミサキの二の腕
ミサキと俺は大学の同期で、友達だった。男と女ではあるが恋愛感情も何もない、全くプラトニックな友人関係だったと断言出来る。あの時俺がミサキの二の腕に触れるまでは。
その日は大学時代の同期たちで飲み会だった。俺とミサキと、あとは男女2人ずつ。互いに近況報告をし合い、バカな昔話をしてゲラゲラ笑って、いい感じに酒に酔って解散となった。いつもの俺たちの飲み会だった。駅まで向かう道すがら、たまたま並んで歩いていたミサキが人とぶつかりそうになった。俺はなにげなく、危ないよとミサキの二の腕の辺りをつかんで引き寄せた。その二の腕の感触が、あまりにも素晴らしく柔らかだったのだ。
それ以来俺はミサキの二の腕のことが頭から離れなくなった。大学時代からつるんでいたし、みんなで宅飲みして雑魚寝したり旅行に行ったり海に行ったりもしたことがあった。しかしそういえばミサキの身体を触ったのは初めてだった。まさかミサキの二の腕がこんなにも素晴らしいだなんて考えたこともなかった。もう一度ミサキの二の腕に触れたい。もっとミサキの二の腕を触りたい。俺は寝ても醒めてもミサキとミサキの二の腕のことばかりを考えるようになった。正直ミサキはあまり美人ではなかった。言葉を選ばずあけすけに言うならば、どちらかというとブサイクな部類に入る方だと思う。もう随分長い付き合いになるが、彼氏がいたなんて話も聞いたことがない。しかし俺のこの気持ちはもはや恋だと言うしかない感情だった。もっと会いたいとかもっと一緒にいたいとかもっと相手のことを知りたいとかではなかったが、もっとミサキに触れたい触りたいという感情は炎のように燃え広がって、もはや御し難いレベルになっていた。
俺がミサキを呼び出したのは3週間ほど経ってからだった。俺はまっすぐに、好きです付き合ってくださいと告白をした。ミサキはめちゃくちゃに面食らっていたが、大いに戸惑いながらも俺の告白を受け入れてくれた。ありがとうと抱き寄せたミサキの二の腕の感触。それはあまりにも甘美な麻薬だった。俺はミサキをずっと離すまいと誓い、今もその誓いを守り続けている。ミサキとミサキの二の腕に巡り合わせてくれた運命に、俺は深く感謝している。
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