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フェルメールが女性の好きな西洋画家人気ランキング1位という妙な納得感。

日本人女性に最も人気のある西洋画家はフェルメールだそうです(@niftyの調査より)。相当に人気がある事は予測していましたが、さすがにNo.1とは驚きました。しかし同時に妙な納得感を覚えたことも事実です。

以前から美術の記事を書いてみようと考えていました。何について書こうかなぁと考えていたところ、フェルメールがそんなに人気なら……と思い立ってペンを取ったというわけです。

そんなわけで簡単に彼の作品についての基本的な特徴を伝えられたらと思います。とりあえず専門的な記事ではないので、もし良かったら気軽に読んでみて下さい。

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さて、その前にちょっとだけ美術の見方についてお話したいと思います。

美術を鑑賞する際に、「ああ、きれいだな」とか「リアルだな」とかそんな風に何も考えずに見るのも一つの見方でしょう。

しかし美術は「読解する」と格段に面白くなります。なぜなら何の予備知識もなくピカソやデュシャンを見たところで、「なんだコレ?」となるのがフツーだと思うのです。

ですからその作品がどういったものかを理論的に解釈できると、美術が「よくわからん」➡「わかる、わかる!」になって、より楽しく鑑賞できます。

これはあくまでも私的見解ですが、具体的には......

① 作品が作られた時代背景を知る
② 作家がどんな人物だったかを知る
③ その作家の特徴を知る
④ 実際に作品を観る

この4点に注目すると美術の奥深さを知ることができて、より美術が面白くなると思います。

それではフェルメールの代表作『真珠の耳飾りの少女』を鑑賞して行きましょう。

<フェルメール作品を読み解く>

①フェルメールの時代背景

フェルメール(1632~1675)はオランダの画家です。17世紀ですので日本では江戸時代にあたります。この頃の西洋美術をバロック期と呼んでいます。バロックとは16世紀末から18世紀後半にヨーロッパに広まった美術・文化の様式です。

バロック芸術の特徴は、誇張された動き、凝った装飾の多様、強烈な光の対比などでしょう。バロック建築の代表としてヴェルサイユ宮殿があります。豪華絢爛、ゴージャスです。

そんな中で17世紀はオランダ黄金時代の絵画と呼ばれています。この時代オランダの絵画は他国のバロック作品に比べると、壮麗な画面構成よりも写実主義に重きをおいた作風となっているのが特徴です。

②フェルメールとはどんな人物だったか

フェルメール

『取り持ち女の』左側の人物。フェルメールの肖像画と言われている。

ヨハネス・フェルメールは43年間の生涯のほとんどを生まれ故郷のデルフトで過ごしました。生前から画家として高い評価を受けており、画家組合の理事長に選出されるなど、人柄もよく、人望の厚い人物だったと言われています。

フェルメールは居酒屋を経営しつつ、パトロンなどにも恵まれていました。自分の作品を納得のいくまで画業に専念できる環境であったがゆえに、彼の作品はいずれも時間をかけて丁寧に仕上げられています。だからこそ、30数点しか作品が遺されていない寡作の画家となってしまったのではないでしょうか。

③フェルメールの作品の特徴

地理学者

『地理学者』(1669年)

フェルメールと言えば、俗にいう「フェルメール・ブルー」が彼の絵画の最大の特徴として外せません。「フェルメール・ブルー」とはフェルメールの絵画に欠かせない美しく鮮烈な青色のことです。

当時、純金並みの価値があったとされるラピス・ラズリという天然鉱物を砕いて作られ、「海を越えてもたらされた青」と呼ばれたウルトラマリンを、フェルメールは惜しげもなく自分の作品で使用しています。

またフェルメール作品は計算しつくされた空間構成により、極めて写実的な作風となっているのも特徴です。

これはカメラ・オブスクラという装置によるところが多いといえます。細かい説明は省きますが、このカメラ・オブスクラに映っている被写体を書き写すことで、実際の光景とそっくりの下絵を作ることができるのです。

フェルメールにはデッサンが一切残されておらず、カメラ・オブスクラを使って直接キャンバスに描いていたと推測されています。彼は伝統的な技法にとらわれず、見たものをそのまま忠実に再現することに注力したのです。

さらにフェルメールは光の表現の名手であり、それが彼の作品の大きな魅力となっています。

④ 真珠の耳飾りの少女について

フェルメール青いターバンの少女

『真珠の首飾りの少女』(1665年頃)

この作品はフェルメールの代表作として名高く、多くの人が知っている絵画でしょう。さて、まず真っ黒な背景に注目です。作品の主題である少女は精密な描写であるにもかかわらず、背景は驚くほどあっさりしています。この背景と人物の対比によって、鑑賞者の視点は主題にくぎ付けにされるのです。

次に光の表現に注目してみましょう。少女の両目、唇、耳飾りに少量の白い顔料が巧みに使用され、光が実にうまく表現されていることが分かります。また耳飾りをよく見ると、白い襟が耳飾りに映り込んでいる点も見逃してはなりません。また少女の鼻や頬、青いターバンや黄色い布にも光と影が見事に描き出されています。

この作品は『青いターバンの少女』とも呼ばれています。先ほどフェルメールの特徴として挙げた美しい「フェルメール・ブルー」がターバンにふんだんに使用されており、頭から垂れ下がった黄色い布との補色関係によって、よりターバンの青色が際立っているのです。

この青いターバンは顔料を油で薄め、それを何層も塗り重ねることによって、鮮やかな透明感を引き出しています。

さらに特筆すべきはこの美しい少女のモデルが特定されていないことです。
それがこの絵画に神秘性を与え、より魅力的な作品にしています。

例えば当時の肖像画についていえば、画家はモデルの地位や権威を誇示するよう意図的に描いていました。ですから肖像画の人物は、格調高く厳粛な雰囲気を醸し出しています。

それに対してこの作品は依頼された肖像画とは異なり、名も知れぬ庶民の、何気ない日常の1コマを切り取った描写となっています。

こうした人物画のジャンルを当時オランダでは「トローニー」と呼んでおり、『真珠の首飾りの少女』もその類の作品の一つです。少女の振り向きざまの一瞬をシャッターで捉えたような描写は、自然で優しく微笑みを浮かべた表情を見事に捉えています。

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フェルメール作品が再来日することを祈って

『真珠の首飾りの少女』は「北のモナ・リザ」とも称され、オランダ絵画の至宝として名高い作品です。

日本にもこれまで3度この作品は出展されたことがありますが、現在はオランダのマウリッツハイス美術館の最大の名品の一つとして展示されており、残念ながら今後この作品が日本に来日する可能性はかなり薄いと思われます。

しかし、この作品以外のものは今後も来日することがあるでしょう。『真珠の首飾りの少女』以外でも、穏やかな日常の一場面の光と色彩の微妙な変化を見事に捉え、なおかつ緻密な空間構成により、調和のとれた優れた作品が多く存在しています。

フェルメール作品が来日した際には、祈りに満ちたような静謐さを讃えた気高い作品群の魅力を、多くの方に味わってもらいたいものです。

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最後に

印象 日の出

『印象・日の出』クロード・モネ作(1872年)

絵画作品の魅力はやはり観るだけに留まらず理解してこそ、その奥深さを体感できるものです。他の美術作品も読解して頂ければ、美術の面白さが深まると思います。

ちなみに冒頭のアンケートによると、日本女性で一番人気はフェルメールでしたが、男性ではモネが1位でした。モネは女性でも2位にランクインしており、男女総合の一番人気はモネという結果が出ています。

ゴッホやルノワールなどもランクインしていましたので、日本人には19世紀の絵画が特に人気が高いようですね。これまた妙に納得です。

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