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【長編連載小説】絶望のキッズ携帯 第4話 研修医

もともと俺は歯医者だった。正確には免許が取り消しになった訳ではないので現在も歯医者なのだが、歯科医師として働いてはいない。一応理由がある。まずはこれまでの経緯を書かせていただく。

俺が研修医のときに勤めた病院は恐ろしいところだった。だいたい午前7時から午前2時まで仕事をさせられる。歯医者というと定時上がりの年収一千万というイメージがあるかもしれないが、当時の俺は手取り二十五万でこの仕事をこなしていた。そんな時間に患者がいるのか不思議に思うかもしれない。しかし大学病院にはデータ入力などの雑務がたくさんあり、俺が選んだ教室では全てそれが研修医に回ってくるところだった。俺がハードボイルドな精神を持っていることに納得がいったかもしれない。不眠症になった。

さらに教室のメンバーが最強のギャングスタ達だった。まずは准教授ジャイアン。教授があまり顔を出さない教室だったので、実質的なボスはこのジャイアンだ。この男はすごい。大学院生を脅し、二十五万円を恐喝したということで訴えられている。真偽の程は定かではないが、ここで真偽の程を書くと何か問題が起こりそうなので俺も差し控えておく。パワープレイヤーだと思っていただいて差し支えない。このジャイアンが死んでないか、俺は今でも時折この教室のサイトを確認している。

基本的にはいくら雑務が多いとはいえど、午後10時には帰れるようになっている。しかしこのジャイアンは、なぜか病院に残っているのだ。そして帰ろうとすると俺に声をかける。
「おう、お前このリストをエクセルでまとめておけ。明日の朝に俺の机に置いておけ」
ひどいや。そんなのったらないよ。誰もが思うだろう。しかしこれを断れば研修医を修了させてもらえない。従うか狙撃するか、選択肢は二つに一つだが、あいにくゴルゴを雇う金もない。奨学金の支払いがもうすぐ始まるからだ。

次はスネ夫GD。彼の名字にGとDが入るので使わせてもらった。理由はなかなか説明するのが難しいし、説明しても理解に苦しむかもしれないが一応書いておく。今もムカついてるから、いつかこの小説が世に出たら社会的に死んでもらおうと思っているからだ。わりと髪の薄い色白の男だ。

スネ夫GDは少し毛色が違う。あまり雑務を押し付けるタイプではない。どちらかというと患者を押し付けるタイプだ。GDのおかげで俺は日中忙殺されていた。そしてジャイアンの雑務。これでわずかな睡眠時間の中で仕事をした。繰り返すが俺は不眠症だった。ほとんど寝ていない。結局うつ病になって倒れた。研修医修了証を受け取れたのは、倒れていた期間が研修医が休んでいい日数内にギリギリ収まったからだ。当然俺は大学病院をそそくさと辞め、歯科医院で働くことにした。

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