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生成AIを活用したサービスデザインアプローチの実験とその備忘録/ユーザー調査編 -冷蔵庫の写真から対象者分析してもらったら結構辛辣だった-

こんにちは。NEWhのフルカワです。

大企業における新規事業やサービス開発に特化したデザインコンサルティング&スタジオのNEWhで、サービスデザイナーとして多種多様な企業のサービスコンセプトやビジネスモデル開発のご支援をしています。

今回は生成AIをサービスデザインのプロセスの中で活用できないかと実験してみた内容と結果の備忘録です。
今回は写真観察をやってみたです。


実験とこの記事のスタンス

今回の実験は「こんなこと、やってみたらどんな感じになるのかな?」というかなり実験的な取り組み(半分遊び、やってみた系に近い)です。
あえて、「実際のプロジェクトで活用できるようにする」というゴールは設定せず、とりあえず思いついたからやってみて、そこからどうするか考えてみようというスタンスでやっています。
実際のプロジェクトでの業務効率化やクオリティ向上、生成AIならではのアプローチを探索して、すぐプロジェクトに反映しよう、というスタンスではないです。
なので、読んだ方が「すぐに我のプロジェクトに活かせる学び、使い方があるぞい!」にはならない内容になってます。
どちらかというと「ほへー、こんなことやってみたんだ」とか「転用すればこんなことにも使えるかもな」、「ここ変えれば良くなるんじゃない」的なお気持ちで読んでもらえればなと思います。

※実験では主にChat GPT4を使用しています。また、ChatGPTに対して送信している写真は私個人の家の写真を利用しています。

写真観察の示唆出し

人々の生活や文化を深く理解するために、その社会に没入し、日々の生活や習慣、儀式などを観察し、分析する研究方法、エスノグラフィー。写真観察は写真を使用して特定の社会や文化の日常生活、習慣、儀式などを記録し、分析するエスノグラフィーで用いられる手法の1つです。

1-1. 冷蔵庫写真からのペルソナと食生活の推測

冷蔵庫はどのような食材を買っているのか、どの位の金額帯の商品を買っているのかとその人の生活感、生活レベル、価値観が詰まっている場所です。
実際に飲食や家電(冷蔵庫)でのサービス・商品・メニュー開発や改善では冷蔵庫の写真から顧客分析が行われてるケースもあります。
このテストでは冷蔵庫の中身の写真からChat GPTから対象者はどのような人なのか、どこまで推測できるのかをテストしてみました。

私の中身が終わっている冷蔵庫の写真とプロンプト

以下、ChatGPTからの回答

ChatGPTからの示唆だし(黄色線のみ加筆)

黄色線で表した箇所が示唆だしの内容と私個人がマッチしていると感じる部分です。因みにこの結果を同僚に見せた時にも同様の反応だったのある程度マッチしている箇所としていない箇所の判定は正しいと思われます。(個人の主観ではない)
この結果に対して「なんか角が立たない言い方をしているな」と感じたので次のようなプロンプトで示唆だしをお願いしました。プロンプトと結果が次のようになります。

性格を悪く分析した結果
セグメント分析
食生活の分析

同様に黄色線で表した箇所が示唆だしの内容と私個人がマッチしていると感じる部分です。因みにこの結果を同僚に見せた時にも〜〜〜(先ほどと同文です。)
性格悪くするだけで、結構当たるようになってるじゃないか。というか写真だけでよくここまで推測して辛辣に当てられるよな、という結果です。(私のプライドのために言っておくと私は友人を家に招くというより、私を自宅に招いてくれる友人が多いタイプの人間です。)
ただ、食生活の傾向の多くは分析は当たっておらず外食が多いのが実情です。

1-2. 冷蔵庫写真からのペルソナと食生活の推測のまとめ

やってみた所感
写真から対象者の分析を行うサポートとしては活用できる可能性がある。生活空間や仕事場の写真から示唆を出す業務での最初のアプローチとしては使えるのではないのかと感じる。一方で秘匿性の高い情報の流出にもつながり兼ねないリスクがあるのですぐに活用できる状態ではないなというのが所感です。
また、生成AIの示唆だしはあくまでも、分析の一歩目であり、生成内容をそのまま受け取るよりもその内容を基に深掘りを行う、一意見として見るスタンスで向き合うべきです。
活用できそうなタイミング
初期のユーザーの把握、特に家電、もしくは飲食系の領域でのインサイト発見では活用できる可能性がありそう。
冷蔵庫以外にもインプットを家事(料理・洗濯・掃除等)の様子を写真もしくは動画にすると家電や対応する家事の領域まで拡がりを持たせられるかもしれないと思います。
反省点・改善点
プロジェクトで活用する際には冷蔵庫の写真だけでなく、対象者のセグメント情報を合わせて提供しておいた方がクオリティは向上したのではないかと感じます。
良かった点・気づき
個人で分析する際には多少なりとも対象者に対して分析者によるバイアスがかかってしまうので、ある意味フラットに分析をしてくれるのは良い点であったと感じます。一方で、あえて穿った視点での分析にも気づきがありました。活用するならばフラットな分析→視点を与えての分析を行う方が示唆に幅が出ると思います。

2-1. 本棚からのペルソナの推測

本棚も冷蔵庫と同様に対象者の情報が詰まっている家の中の場所です。本棚は冷蔵庫と異なり、対象者の嗜好、価値観が分析しやすく、生活環境よりも内面のパーソナリティが強く現れます。
「分析対象が持っている性質を変えるとどうなるのか」と考えたので、同様にテストをしてみました。

私の整理されていない本棚とプロンプト

以下、ChatGPTからの回答

示唆

同様に黄色線で表した箇所が示唆だしの内容と私個人がマッチしていると感じる部分です。因みにこの結果〜〜〜(先ほどと同文です。)
冷蔵庫よりも当たっている箇所が多いです(※冷蔵庫に物があまり入っていない、という可能性もあります。)。「専門書」というフワッとした内容の分析が多かったので、より詳細な分析ができるのではないか?と考え、本棚の寄りの箇所を提供して、分析をアップデートしてもらいました。

寄りの写真とプロンプト
分析結果

同様に黄色線で表した箇所が示唆だしの内容と私個人がマッチしていると感じる部分です。因みに〜〜〜(先ほどと同文です。)。
本棚の中身がよりわかりやすくなったのか、タイトルやジャンルの分析がより詳細になっています(「進撃の巨人」は本棚にないので、誤っている部分もあります。)。しかし、冷蔵庫の価値観や内面に踏み込んだ写真分析の結果というよりも、タイトルから読み取れる推測に留まってしまっている印象もあります。
一応、新たな本のアイデアももらいました。

本のアイデア

正直、買うか買わないかで言ったら、「絶対買う!」というよりかは「レビューの内容や薦めてくれた人によるかな」という内容ですが、筋が悪すぎるわけではないので叩き台の候補としては悪くないレベルかと思います。

2-2. 本棚からのペルソナの推測のまとめ

やってみた所感
こちらも基本的には冷蔵庫と同様で活用できる可能性はあるというのが所感です。しかし、冷蔵庫ほどの踏み込んだインパクトがある分析ではないので、より精度を上げるには他の人でもテストをしてみないとわからないと感じます。
活用できそうなタイミング
初期のユーザーの把握、特に嗜好性が高いカテゴリのサービス開発やコンテンツ制作においては活用出来そうです。
また、ECやマッチングサービスのレコメンドの手段として本棚の写真を使うという機能検討も良いかもしれません。
反省点・改善点
冷蔵庫と同様に前提となるセグメント条件は最初に提示しておいた方が精度は上がったのではないかと思います。
また、本というメディアだけで分析するのではなくて、カメラロールや映像や音楽サービス、スマホのホーム画面のスクリーンショット等の他メディアまでを含んで広いカテゴリのインプットを提供すると変化するのではないかと感じます。
良かった点・気づき
課題解決アプローチから考えるサービスアイデアよりも、興味関心に主軸が置かれる嗜好性が高い分野なのでインプットからアイデアの叩き作成が比較的スムーズに行えた印象があります。

生成AIを分析の示唆だしの活用する可能性について

冷蔵庫と本棚の写真を基に顧客分析を生成AIにやってもらう実験を行いました。
個人でやる場合よりも広い視点での分析ができるきっかけ作りになるのではいかと感じます。
シンプルに「性格悪く分析して」といった視点、冷蔵庫の写真に対して「プロの栄養士の視点で分析して」という役割を明確にした視点での分析をしてもらうと人間では行いづらい分析が可能になる可能性があります。

分析の視点の拡がり

まとめ

写真をインプットにChatGPTを利用して、対象者分析を行うアプローチには可能性がありそうです。
今回は対象者の生活感が読み取りやすい冷蔵庫と趣味嗜好が現れる本棚というタイプの異なるマテリアルの写真を利用しましたが、実験としては悪くない結果になったのではないかと思います。
プロジェクトで取り扱う際の秘匿情報の漏洩等のリスクやプロジェクトで活用する際のクオリティ向上には改善の余地がありますが、ユーザーリサーチを行う際にカードの1つとして頭の片隅に置いておくのは悪くないかと思います。
その他にも実験したことはあるのですが、記事が長くなったので今回は以上となります。

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