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ある学生が、自分を変えたいと必死にもがいていた。
何をしても、誰のマネをしても、変われない。

みんな器用に何でもこなしているのに、私にはできない。

私から見ればとても知的で素直、真面目、直向きな学生であった。いったい何がそうさせたのか。。

真相に触れたときに、出てきたのは大人たちからの、心無い、容赦無いアドバイスを受けたことがきっかけだった。

「これができなかったら、大人になっても何もできないよ。」
「どうしてこんなこともできないの。今まで何をしてきたの。」
「私の言う通りになぜできないのか。」

信じた大人から投げかけられた問いに、自問自答し、できない自分を責めた。

『自分に価値はないのではないか。』

『このまま生きていても仕方ないんじゃないか。』

その子を思い、指導しアドバイスした言葉かもしれない。しかしながら、結果は散々なものだ。

大人は自覚するべきだ。自分の見てきた世界が、いかに狭い世界なのかを。
その狭い世界で得た自分自身の教訓は、必ずそも万人に当てはまるようなものではないことを。
また、自分の利益のため、エゴのために言葉を投げかけていないかを。

“親の言うことは聞くな。”
“先生や大人の言うことは聞くな。”

これは紛れもなく、大人たちの言葉が全て自分に当てはまるものではないし、大人たちの何気ない言葉に制限されて、自己表現、自己実現できなくなるようなら、その言葉には害しかないことの表れだろう。

何度も言う。
“親の言うことを聞くな”
“先生や大人の言うことは聞くな”

これは子どもたちだけではなく、常識やこだわりに凝り固まった大人たちが、自分自身にも投げかけ、そうはなっていないかと自省するうえで必要な言葉でもある。

わたしは、こんな言葉を学生に投げかけた。

“あなたはとても素晴らしい。あなたがいてくれることで、今関わってくれている皆が笑顔になることができた。あなたがいてくれたからこそ、ここで関わる皆が新たな学びや気付きを得ることができた。私はあなたの直向きに学び、真剣に物事に向き合い、自分自身を高めようとされている姿勢に感動し、尊敬している。あなたのことを信じているからこそ、色々なことをお願いしたりすることができています。だから、何も心配しないで。”


この言葉を聞いた学生は、

“今まで聞いてきたことの真反対なことばっかりだー!”

と涙しながら笑っていた。

子どもたちには夢がある。子どもたちには希望がある。

その、夢や希望はまだまだ道半ば。
我々大人がしなければならないのは、この不完全な子どもたちが紆余曲折しながら進むのを、夢や目標に進むのを、ひたすらに信じて、応援して、見守るだけだとつくづく感じる。

これから、まだまだ思い悩むことはあるだろう。でもあなたのことを心底信じる大人がいることを、仲間がいることを忘れないでもらえたらなと思っている。

私は、この日の出来事を学生の涙しながら見せた絵顔を、大切な宝として胸に刻んでおこうと思う。

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