お手伝いさんの友達が“視た”もの
『幽霊の出る家』での出来事。
私が中学生くらいの頃、両親が離婚したため、お手伝いさんが来てくれていた。
ナントカ家政婦協会、みたいなところから派遣されてる家政婦さんだったけど、私たちはお手伝いさんと呼んでいた。
その当時で多分70代後半だったのではなかったか。かなり高齢のおばあさんだった。
食器の洗い残しやお風呂のヌルヌルはいつものことで、特に誰も怒ったりすることなく、普通にそんなお手伝いさんを受け入れていた。
昔なこともあり、色々ゆるくて、今では考えられないだろうけど、お手伝いさんはたまに自分の友達を職場である我が家に呼んで、談笑しながらお茶を飲んだりしていた。
私たちはそれもあんまり気にしていなかった。
なんてゆるい時代だったのだろうか。
今から30年以上も前のことである。
その日もお手伝いさんは友達を呼んでいて、私たち兄妹はリビングでテレビを見ながら、その友達に「こんにちは~」なんて挨拶した。
「あ、こんにち…えっ、あの…」
私たちとお手伝いさんを困ったように交互に見る友達。
お手伝いさんが「こっちだよ~」と困り顔の友達を台所に呼ぶ。
今の家は大体リビングダイニングキッチン、LDKが繋がってる間取りが多いけど、当時住んでいた家はリビングとダイニングキッチン、という形に分かれていて、お手伝いさんは私たちがテレビを見ていても気兼ねなく友達と話すことができていた。
その友達の怪訝な顔を見て私も一瞬不思議に思ったけど、すぐにまたテレビに夢中になった。
30分くらいしてお手伝いさんの友達は「お邪魔しました~」と帰って行った。
二時間くらい友達と話している時もあるお手伝いさんだったので、今日は早いな、と思っていたら、笑うような遠慮するような顔でお手伝いさんがリビングに来てこう言った。
「女の人なんて、いなかったよね?」
私と兄は顔を見合わせた。
「僕たち二人だったよ。やだよ。何言ってんの!」
兄は笑いながら泣きそうな顔になった。
「なんで?」
と私が聞いた。
「いえね、友達が。右にいたのはお兄ちゃんだよね?左にいたのが妹でしょ?その間にいた、キレイにお化粧してる髪の長い女の人は誰?なんて聞くんだよ~。化粧する女の人なんてこの家にはいないよって言ったんだけど。やだね。やだやだ」
笑いながらお手伝いさんは台所に戻っていき、私たち兄妹は背筋を凍らせながらお互いをバシバシ叩き合って笑った。
怖すぎて、笑うしかなかった。
テレビを消してリビングを後にする時、私と兄が座っていた間を確認してみたけど、やっぱり誰もいなかった。
ニコニコと優しそうに笑ってたらしいので、悪い存在ではないと思うことにしたけど、本当にそうだったのかなと今になって思う。
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