見出し画像

父の入院中に見たイメージと夢

父が無事に退院してきた。

のだが、どうも「本人希望」で退院を早めてもらったらしく、来月あたりに手術のためまた入院しなければならないらしい。

例のアレで病床いっぱいと思っていたけど、胆石くらいでこんなに入院させてもらえるなんて、いいのかしら…。

もっと妊婦さんとか赤ちゃんとか。

県境を跨いででも妊婦さんは優先的に受け入れてほしいけど、消化器内科と産婦人科ではまた違うのかもしれない。


さて、入院時に胆管に詰まっていた胆石を取り除く処置を施された父だが、麻酔の効きが甘く、逆に半分寝たような状態になったために元々少なめな理性とかが吹っ飛んで抑制が効かなくなり、相当暴れてしまったらしい。

待合室にまで、看護師さんと先生の「動くな!」という怒号が響き渡っていた。

麻酔下の人間にいくら「動くな」と言っても聞こえてるわけじゃあるまいし、もっと早くに強めの麻酔に切り替えてもらってよかったのだが、なかなか難しかったようだった。

動いちゃいけない「処置」のシーンで動いたとあっては、変なところに穴が開いてしまったり大量に出血してしまったりするんではないかと、聞いてるこっちはハラハラしていたが、何もできない。

そんな時、ふっと祖父母のイメージが脳内に浮かんだ。

父方の祖母は私が産まれる前に亡くなっているので、会ったことはなく、仏壇に飾られている写真でしか見たことはない。

その写真には父そっくりな顔の祖母が写っている。

そんな祖母と、私の大好きな祖父が二人並んで、処置中の父を覗き込んでいる。

祖母は

「○○さん(父の名前)、しっかりして。がんばって。あなたまだこっちに来ちゃだめなのよ…」

と涙を浮かべながら励ましている。

祖父はというと

「日頃の不摂生がたたったんだ。このデレスケめ!バカが!自業自得なんだ!」

などとめちゃくちゃ怒っている。

話に聞いたことはあったが、祖父が怒っている姿を私は見たことがなかったので、己の脳内イメージとはいえ、ちょっとびっくりしていた。

そんなこんなしている間に処置は終わり、先生から

「無事に取れたよ。大丈夫だからね」

と言われて

「相当暴れましたか?すみません…」

と平謝りの私。

麻酔から覚めることもないまま、病室へと連れていかれた父を後に、私は一人家に帰った。

次の日、父から電話が来るまでは、さすがにちょっと不安だった。

あのまま死んではいまいか…合併症が起きてはいないか。

でも電話で相変わらずの父の声を聞いて安心することができた。

今は例のアレ対策で、面会は一切できない。

着替えなどはナースステーションに持っていき、看護師さんに渡してもらうのみ。

それでも必要なものを持っていくことで、なんだか安心はできたのだが、暇なのか不安なのか、1日に何回も何回も同じ内容の電話をかけてくる父に、また別の不安を覚えたりもした。

その日の夜、家に一人でいると、またふいに祖父母のイメージが浮かんだ。

祖母は

「ああ~よかった○○さん(父の名前)、よかったわ~」

と涙をハンカチで拭いながらどこかへ去っていった。

祖父は、何も言わずにニタニタしていた。

ニヨニヨ、とでも言ったほうが適切かもしれない。ニコニコ、とまではいかないような表情。

喜んでいるらしい。

あの罵詈雑言は、祖父の心配ゆえのものだったのか…と合点がいった。

父も、心配しすぎるあまり怒り狂うことがよくあったのだが、もしやあれは祖父譲りなのでは?と初めて思った。

そんな祖父母のイメージが見られたことで、父の容態にもう心配はないのだな~と思うことができたのだから不思議なものだ。


父の入院から3、4日経った頃に、祖父の夢を見た。

広い広い校庭のようなところの落ち葉を、祖父と私と見知らぬ人たち数人とで、エプロンをして掃除している。

しかし、掃いても掃いても落ち葉が全然減らない。本当に全然減らない。

それでも1日が終わり、係の人から

「明日もまた6時からお願いします。ボランティアとはいえ、遅刻厳禁ですから」

などと言われて、私は初めてこの終わりのない作業がボランティアだったことを知った。

そこで目が覚めた。

どういう意味があるのか無いのか分からないけど、父の入院中に見たイメージと夢の話。

(減らない落ち葉は、父のクローゼットの服の象徴かもしれない)    

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?