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使ってはいけない心理学1 吊り橋効果と恋愛感情は何も証明されてない実験だった!

 今回は、使ってはいけない心理学シリーズの第1弾として吊り橋効果について、お伝えできればと思います。

 社会には、まるで真実の様に信じられている、心理学が沢山あります。

 これらは、心理学を商用利用の目的で都合のいい様に解釈しているのが大きな理由だといえます。

 一体、どういうことなのか、一緒に検討してみましょう。 

吊り橋効果の実験

 この実験はカナダの心理学者であるダットンとアロンによって1974年に発表された
 「生理・認知説の吊り橋実験」
 によって実証された感情の生起に関する学説です。

 心理学者のスタンレー・シャクターは、感情が認知に先立つ経路もあると考え、情動二要因論という情動の認知説を提唱しました。

 2人は感情が認知より先に生じるのなら、間違った認知に誘導できる可能性があると考えて、
 「魅力的な異性に出会う→ドキドキする→これは恋?」
 の実証を目的として実験を実施します。

 ダットンとアロンの実験の要旨は、
 揺れる吊り橋と安全な橋で、魅力的な女性が待っており、渡ってきた男性(18 ~35 歳)で、協力を承諾した人に、創造的表現に対する風景の印象の効果を調べているとTAT 図版を見せ、浮かんだことを物語にしてもらいます。

 そして、
 『もっと実験の説明をしたいからよかったら電話してね』
 と、女性は協力者に氏名と電話番号が記されたメモを渡します。

実験の結果

 実験結果では、
 吊り橋条件は
 【18人中 9人】 50%
 安全な橋条件は
 【16人中 2人】12.5%
 が、後で電話をかけてきました。

 単純に実験の結果は、吊り橋条件の場合では安全な橋条件の4倍の効果が得られたことになります。

 これにより、揺れる橋を渡ることで生じた緊張感がその女性への恋愛感情と誤認され、結果として電話がかかってきやすくなったと推論されました。

考察

【母集団の偏り】
 対象者の総体を母集団といいます。データを採られた人がここから無作為抽出をされていれば、母集団の一般化が統計的に保証されます。

 この実験の母集団は18~35歳の一般男性でしょうか。
 しかし、実際は人種が限定された、吊り橋に観光に来た男性で、かつ協力依頼に応えた人でした。

 一般男性にはほど遠い偏りです。これでは無作為抽出になりませんから一般適用は無理だといえます。

【従属変数】(目的変数)
 この実験で測定したのは、電話をかけるという行動です。これを拡大解釈して恋愛感情とするのは、少し無理があるように思えます。

【実験の効果】
 実験の結果、電話をかけてきたのは吊り橋を渡った人の半数ということになります。

 効果が認められたと主張しても、安全な橋と比較した限りであって、実質的にはその程度なのです。

別の吊り橋実験での証明

 メリーランド大学のグレゴリー・ホワイトは、
『吊り橋の緊張感を恋愛感情と誤認するには、実験で声をかける女性が美人かどうかで結果が左右される』
 のではないかと考えました。

 実際にメイクで魅力を低下させた女性で同様の実験を行ったところ、美人ではない場合には吊り橋効果は逆効果であることが分かりました。

まとめ

 以上のことから、吊り橋効果の実験で証明されたことは、
 ・1970年代の18~35歳のアメリカ在住の協力性の高い男性は
 ・吊り橋で魅力的な女性に協力し、後で電話をかける確率が50%
 ・安全な橋で魅力的な女性に協力し、後で電話をかける確率が12.5%
 ・魅力的ではない女性の場合は逆効果
 と、いうことになります。

 一体どこで、恋愛感情と結びつけたのでしょう。

 せめて、電話を掛けてきた理由を聴取した統計があれば、少しは肉付けになるかと思いますが、対象者が真実を回答してくれるかは不明です。

 また、標本調査の抽出数が明らかに少ないので信頼水準が限りなく低いといえます。

 そして、魅力的ではない女性の場合は逆効果であったことを考察すれば、
 『吊り橋での心理的効果よりも女性が魅力的か否かの方が、後から電話をかける確率の高さに影響する』
 という、とんでもなく普通の結果となります。

 つまり、実験自体の意味が分からない、という結論になります。

 さらにいえば、1970年代のアメリカと2020年代の日本では、人間の認知・判断・行動も違いが生じていますので現在での適応は困難といえます。

 この様な実験内容・結果で、吊り橋効果という心理学は正しいといえるのでしょうか。実際の心理学は、メディア情報などと比較して脆弱なものが多いのが実情です。

 これからも、不定期に使ってはいけない心理学シリーズで、正しい心理学の知識を知って頂けたらと思います。

 驚くほど、一般化できないものばかりです! 

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
 このコラムは私の個人的な知見に基づくものです。他で主張されている理論を批判するものではないことをご理解いただいたうえで、一考察として受け止めて頂き、生活に役立てて頂けたら幸いです(*^^*)

【文献】
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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