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吉田塾日記#1【テリー伊藤さん】

クリエイティブサロン吉田塾

れもんらいふの代表、アートディレクターの千原徹也さんが『クリエイティブサロン吉田塾』を開校しました。場所は、富士山のお膝元、山梨県富士吉田市。壮大なマウンテンビュー、豊かな水と新鮮な空気、ノスタルジックな街並みは昭和レトロ。「東京だけでなく、地方からも新しい価値を」と、年齢や職業にとらわれずにすべての人がクリエイターの視点や考え方を育むことができる空間をコーディネートされています。

毎回、さまざまな業界の第一線で活躍するゲストを迎えるのですが、第一回は演出家のテリー伊藤さん。キレっキレのシャープなことばで、「ここでしか言えない話」を存分に語ってくれました。

富士山は圧倒的である。
なぜならば、ライバルにならないから。

テリーさんの話を聴いていて気付かされることは「演出家のモノの見方」です。歯に衣着せぬ表現と微炭酸毒性のユーモア、その爽快感はたまらないのですが、決して対象を見下さない。ポテンシャルを引き出して光を当てる思考法です。

一日かけて富士吉田を歩いたテリーさんは、この土地の魅力を笑いを散りばめながらお話になりました。街の人と交流し、情緒を味わい、可能性を思索した。「昭和レトロな町並みには価値がある、お洒落はディレクションだ、何よりここには圧倒的な富士山がある」。

スマホやPC、電化製品は最新の商品がライバルになる。でも、富士山はかけがえがない。「欠ける」ことも、「替える」こともできない。さらには、人間は一日十分“人間がつくれないもの”を見るといいらしい。そうすると、こころ穏やかに、感性は研ぎ澄まされてゆくと言います。花や鳥、星や月、川の流れや雲の流れ、当然、富士山も。

わたしたちのライフスタイルは、朝起きればまずはスマホを手に取り、SNSやメールを確認することが日常になっています。移動中や休憩時間だって。便利かもしれない、役立つかもしれない。「だけれど、それだと感性が鈍ってゆく」とテリーさんは言いました。何より、わたしたち人間は“人間がつくれないもの”に対して嫉妬しないのです。

演出家は、鋭い批評眼を持ちながらも、厳しく評価するだけに留まりません。「どうすれば、より良くなるか、おもしろくなるか」を考え抜き、価値を与える仕事なのだと感じました。カッコいいよね、テリーさん。

とにかく、とっとと、やってみる。
とことん、やり尽くす。

テリーさんの本名は「伊藤輝夫」。ある日、突然「テリー伊藤」に変えました。

「“テリー”って呼びやすいでしょう?」

きっかけはユーミンのことば。「荒井由実」だと、人から「荒井さん」や「由実さん」と呼ばれる。だけど、「ユーミンさん」とは呼ばれない。「さん」付けされないと、若くい見られる。ほら、ミッキーもドナルドも。人間、呼び捨てにされるといつまでも若くいられる。

そこから呪縛がとけたように、「テリー伊藤」の快進撃ははじまりました。名前を与えたことで、自分が変わった気がした。「ディレクターじゃありません。“天才ディレクター”です」と言ってみた。最初は相手も笑っていたけれど、三回目から「あ、天才ディレクターのテリーさん」と呼ばれはじめたと言います。

言ったもの勝ち。ファッションも、着たもの勝ち。帽子だって、被ったもの勝ち。とにかく、とっととやってみる。そういえば、千原さんも同じこと言ってたな。

人生、舐めてかかって、マジメにやる。

前回テリーさんに話を聴いた時に「舐めて取りかかれない奴に、カリスマはいない」と言ってたのを思い出しました。芸人さんも、俳優さんも、アスリートも。頭一つ抜ける人は「こんなの自分がやった方がうまくできる」と、ちょっぴり舐めて取りかかる。はじめからガチガチに緊張して「がんばります!」みたいな人は、そこまで上にはいけない。当然、舐めているだけではダメで、仕事は手を抜かずにマジメにやる。このマインドが大切なんじゃないかな。今もこころに刺さっていることば。

賢く見えることは正義じゃないからね。

そこから、時事問題や業界のお話、そう「ここでしか聴けない話」をたくさんしてくれました。おもしろくて、ぴりっと刺激的で、深く考えさせられる時間。

人生、年を取ると良いことは何一つないです。
ないところからはじまるのがいいんですよ。

「みなさん、甘ったれちゃダメですよ」とテレビでお馴染みの語り口で檄を飛ばしました。わたしたちは大笑いしながら、このことばを肝に銘じました。「ないところからはじめる」ことが、クリエイティブの本質なのだろう。

質疑応答では「1000万円出資するので、テリーさんと千原さんのお二人で富士吉田をおもしろくしてください」と言った塾生もいました。新しい物語がはじまりそうな予感と余韻を残して、初回の吉田塾は幕を閉じました。

懇親会は、れもんらいふプロデュースの喫茶檸檬。お酒を飲んで料理を楽しみながら、テリーさんや千原さんとも一緒にお話できます。塾生同士が親交を深めたり、毎回ゲスト講師とこの距離感で会話できるのもうれしいね。

ぜひ、会場まで足を運んでクリエイティブの楽しさを味わってみてください。

さて、次回の講義は六月十一日。ゲスト講師はファッションデザイナーの丸山敬太さんです。

チケットの購入はこちらからどうぞ。会場用とオンライン用、二種類から選べます(富士吉田のふるさと納税にも対応しているチケットもあります)。


そして、わたしも制作にかかわっている本塾の主宰、千原徹也さんの著書『これはデザインではない』もチェックよろしくお願いします。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。