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美しい手紙

美しい手紙が届く。

そのあまりの美しさに、何でもない一日が“非日常”となった。そうそう、こういうこと。人柄とことばの力。たった一度でも、相手のこころに残る手紙を届けることができたなら、その関係性はかけがえのないものとなる。欠けることも、替えることもできない、一つだけの関係性。わたしは、その力を信じてみたい。

だから、今日も対話について考えと想いを巡らせる。

関係性を育むとき、それは手紙を送る行為に似ていると感じる。

感謝の気持ちを伝えたり、お祝いのことばを添えたり、感想をつづったり、あるいは、お願い事を提案してみたり。いずれにしても、相手の気分について想像して、“あなた”についてどう感じているかを伝え、“わたし”のこともそれとなくお伝えする。

“わたし”の話ばかりでは退屈だけれど、そこに“わたし”が見えないと“あなた”もやはり不安になる。やさしさとは、倒れたときに手を差し伸ばすだけじゃない。心配させないこともまた、大人のやさしさ。その辺りの塩梅を調整しながら、ことばを吟味してゆく。

「手紙を送る」という営みの、その小さなスケールのことが日々あらゆるコミュニケーションの中に息づいている。それらのにぎわいが、わたしが“対話”と呼ぶものの構成要素になっている。

対話には、日常を“非日常”にかえる力がある。対話を通して、目の前の時間を特別なものにしつらえてゆく。

関係性を築いていゆくこと。それは、毎日、練習できる。対話を通して、わたしたちは、“非日常”が散りばめられた日常を生きることができる。日常の中のファンタジー。それは、誰かを想い、手紙を書くように。

今日、わたしの手元に届いた手紙は、まさしくファンタジーを閉じ込めたことばの箱だった。

手紙が返って来ないことがある。

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750字

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