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初心忘るべからず

DAT

こないだスタジオを整理していたら大量のDATのテープが出てきました。

この3倍くらいの量が発掘されました。

ところで皆さん、DATってご存知ですか?あまり一般には普及してないとは思うのですが、Digital Audio Tapeと言って90年代から00年代半ば辺りまでは音楽業界ではMaster Tapeとして使っていた非常に音の良いテープの事です。カセットテープより小さく名刺より少し大きいくらいのサイズで、大量に保管していてもそんなに置き場に困らない為かなり重宝されていました。
僕はそんなDATを大学生の頃から使っていました。一応作曲を高校の時から勉強していたので自分の曲を少しでも良い音で録音する為にPioneerのD-C88というDAT用ポータブル機を購入し録音しまくっていました。ただでさえ音の良いDATですが、このD-C88は当時としてはかなり珍しい"96kHzハイサンプリング・ワイドモード"という機能があり通常のDATの録音機器より更に良い音で録音が可能で、僕にとっては夢の様なマシンでした。なにせそれまではカセットMTRで録音をしていたので。

ちなみに通常のDATのサンプリング周波数は44.1lHz,48kHzが多いです。CDは44.1kHzです。サンプリング周波数の話をしてしまうと今回の話から逸れていってしまうのでこれはまた別の機会に。

そんなD-C88で録音したであろうDATが大量に発掘されたのです。残念ながら僕のD-C88はとうの昔に壊れてしまい処分してしまっています。しかし一体どんな録音が残っているのか非常に気になったので別のDATデッキを借りて恐る恐るチェックしてみました。

残されていた音


一番古い録音は大学1年生の時に作ったピアノ曲でした。タイトルは『春の薫り』。大学に入学して嬉しくて春が薫ってしまったのでしょう。なんて直球で若々しいタイトルなんでしょうか。きっと作ったのは94年位なのかな。楽譜も紛失してしまいずっと探していた曲だったので発見出来てとても嬉しかったです。ピアノが今より全然上手いので同時にプチショックも受けました(笑)。他のDATでも生演奏系の録音が幾つか残っていました。ピアノ、フルート、クラリネットの曲とかピアノ五重奏曲とか、オーケストラに演奏してもらった曲も、もちろんピアノソロも。しかしとにかくどれも今より全然ピアノが上手いのです。DATチェック4本目辺りで懐かしさよりも反省と後悔がボディブローの様に効き始めて来ました。。続けて打ち込み系の音楽のDATをチェックしてみました。これもかなり面白かったです。意外と今とやっている事がそんなに変わらない曲もあったりで驚きました。しかも今より色々なジャンルをやっていました。テクノやdrum'n'bassが多めで新鮮で面白いです。弦楽カルテットが乗ってるdrum'n'bassとか、ブラス隊が乗ってるClub向けなサンバとかもありました。生楽器なんて当時どうやった録音したんだろう?全く思い出せない。そういえば大学内に録音機器が揃っている科があってそこに忍び込んで録音した様な気もします。当時僕が個人で使っていた機材なんて今とは全く比べ物にならない位非力なはずなのに、かなりしっかり作られていて我ながら驚きます。きっとその非力な機材を隅から隅まで完璧に使いこなしていたのでしょう。

やりたかった事の半分も出来てない


そんなDATを聞いて一番感じたのは、この頃はやりたい事やアイデアが何にも臆する事なく爆発していたんだな、という事でした。きっと今の時代なら自分でYouTubeとかで配信してたんだろうなぁ、なんて思いながら聞いていました。それと自分がやりたかった事のまだ半分も出来ていない事にも気付きました。色々やってきたつもりではいましたが、学生時代の僕はもっと沢山やりたい事がありそうです。よく考えてみると、自分のやりたい事やアイデアが爆発していた頃の曲が、実は当時の友達以外誰にも聞いてもらっていない事になります。なんとまあもったいない。僕が大学生の頃には当然配信なんてなかったので、今の時代の様に簡単になんでも発表できる場は存在していなかったのです。じゃあ、その当時の録音を今配信したら良いじゃないか、って思う方もいるかもしれません。いやいや、、98年にデビューしてもう24年も活動をして、学生の時の曲がいくらアイデアに溢れていて面白いとは言っても流石に小っ恥ずかしいです。ピアノは今より上手いですけど(苦笑)。きっと初心を思い出す良いきっかけを神様から与えてもらったのでしょう。

学生


初心を思い出す良いきっかけはつい最近他でもありました。5年前よりずっと続けている著作権と音楽ビジネスを勉強するワークショップの『MUSIC&MONEY』での出来事です。この会は僕以外にメインで谷口元さん、林達也さんというお二人が参加してくれています。
コロナの影響で2年間開催出来なかったのですが、今年からは月1でスカイツリーのほぼ麓の会場で開催しています。この会は会自体が終了した後に1時間ほどの懇親会がセッティングされているのですが、そこでの出来事です。
谷口さんと林さんはお2人とも大学で教鞭を執られている事もあり前回の4月の会には2つの大学から沢山の新入生が参加してくれました。そこでそれぞれの学生の自己紹介タイムがあったのですが、皆さん非常にしっかりしていて驚いてしまいました。やりたい事や将来就きたい職業が入学した時点でこんなにきっちり話せるなんて本当に立派です。春が薫っていた僕とはえらい違いです。音楽業界や芸能界で働くスタッフ志望の学生も多く、どんな感じの世界でどうやって入っていくのかなど僕の所に聞きに来る学生も沢山いましたね。確かにこの業界はわかりやすい入口はあまり用意されていないので入りたい人は悩むと思います。実は既に僕の元で業界のイロハを勉強している学生や、僕の事務所のスタッフがプロダクションを紹介してインターンに行った学生なんかもいます。
あまり学生と接する機会は今となってはそんなに多くないのでこういう機会があるとやはり自分のその頃を思い出しますね。とにかく音楽を作るという事しか頭になかったのを思い出します。
ちなみにこの会は次回は5月26日に開催されます。まだ情報が出てきていませんが近くなったらSNS等でお知らせします。著作権や音楽ビジネスに興味のある方はぜひ浅草&スカイツリー観光がてらいらして下さい。

自己承認欲求??


そんなこんなで初心を思い出し懐かしんでいる僕ですが、なかなか今までの活動でやれてこなかった事にも数年前から取り組んでいます。それはピアノのコンサートです。自分の1番の基盤であるピアノのコンサート、もしくはアコースティックなコンサートを毎年開催していこうと考え2019年に開催しました。しかし2020年にはコロナの影響で早速開催出来なくなってしまい悔しい思いをしました。なんとか2021年には開催する事が出来たのでこれからは継続させたいと思い、去年に引き続き今年も開催します!

そもそもこのコンサートは自分の初心を忘れないように続けていきたいと思いスタートしたコンサートでした。しかしそれ以上に、まだ皆さんにお届け出来ていない僕の音楽を聞いてもらいたいという気持ちが日に日に増してきた事の方が大きかったかもしれません。上でも少し書きましたが、僕は初心の頃の音楽性や音楽感をほとんど発表できていません。一番音楽に夢中になっていた頃に目指していた音楽スタイルに全く到達していないのです。それを皆さんに知ってもらいたいのかどうかは自分ではよくわからないのですが、ひょっとするとこれが俗に言う自己承認欲求なのでしょうか(笑)??自分ではあんまりそんな気持ちはないと思っていたのですが。

今年はピアノソロではなくヴァイオリン、チェロを入れたピアノトリオです。藤谷さんと天倉正敬とのトリオとはまた違うトリオです。ヴァイオリンは伊藤彩、チェロはRobin Dupuyです。この2人は2022年年明けのBillboardTokyo,Osakaのライブにも出演してくれています。2人ともかなり昔から僕のライブには参加してくれていますが、3人だけで演奏を行うのは初なので非常に楽しみです。京都と東京で開催しますのでぜひお越しください!

「Ryota Nozaki Piano Plus Strings Concert」


6月19日(日)
14:00 OPEN / 14:30 START
出演:Ryota Nozaki(Pf) / Aya Ito(Violin) / Robin Dupuy (Cello)
会場:京都国際マンガミュージアム 1階多目的ホール(https://www.kyotomm.jp
京都市営地下鉄「烏丸御池」より徒歩1分
〈TICKET〉
前売:¥4500(1ドリンク別 / 京都国際マンガミュージアム入場料¥900別)〈予約受付〉
http://solecafe.jp/inquiry/
※3/19(土)10:00~上記メールフォームにて受付開始
〈お問い合わせ〉
SOLE CAFE コンサート運営係 090-1229-4738
※席数を減らしての少人数限定ライブとなります。

6月26日(日)
18:00 OPEN / 18:30 START
出演:Ryota Nozaki(Pf) / Aya Ito(Violin) / Robin Dupuy (Cello)
会場:MUSICASA(https://www.musicasa.co.jp/information/index.html)
東京都渋谷区西原3-33-1
〈TICKET〉
前売:¥5500(tax in)
〈予約受付〉
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/0247026c3m921.html


音源を幾つか紹介


彩ちゃんとRobinが参加してくれた2022年1月のBillboard TokyoでのLiveを少しだけお見せ致します。弦チーム一番左が彩ちゃん、一番右がRobinです。途中サックスの栗原くんの異次元でエフェクティブなソロコーナーもありますので合わせてお楽しみ下さい。

それとまだほとんどライブでは演奏した事のない、松下奈緒さんとの2台ピアノ用に作ったこの曲も3人でチャレンジしてみようと思っています。
ですが、かなり難しいのでリハで断念する可能性もあります(苦笑)。この曲自分では凄く気に入っているんですがなにせピアニスト2人とピアノが2台ないと出来ないのでなかなか演奏する機会がないのです。

彩ちゃんは野崎良太 with GOODPEOPLEというユニットでこんなカッチョいい曲"blackforest"を作っています。これも演奏したいけど楽譜が見つからないと言っていて困ったもんです。GOODPEOPLEは葉加瀬太郎さんのレーベルHATSからリリースされています。自信を持ってオススメできる良アコースティックアルバムですので是非他の曲も聞いて下さい!



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