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Finatextを創業してから上場するまでの10の学び

2021年12月22日、株式会社Finatextホールディングスは東証マザーズに上場しました。創業から今までご支援いただいた皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。改めて、ありがとうございます。

これからより一層、気合を入れて成果を出していきます。金融を“サービス”として再発明して、金融がもっと暮らしに寄り添う世の中にしていくためにはまだまだやることがたくさんあります。「僕たちがやらなきゃ誰がやる!?」本気でそう思ってます。

同時に、イチ起業家としても、社会に価値ある何かを還元していきたいと思い、僕なりに創業から上場までの約7年間に得た学びを記しておくことにしました。起業に限らず、これからチャレンジしようとしている人にとって少しでも参考になったら幸いです。

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1. 大きな目標は外部に発信した方が良い

8年前、僕はこんな投稿をしていました。

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そんなに練った目標ではないし、そもそも英語の部分タイポしてるし。なんなら最近まで忘れていたくらいです。それなのに、ここで宣言した通り2021年に上場するのだから人生は面白いですよね。この約束を守るために、上場記者会見では本当に一部3ヶ国語で話しました。壮大な目標があれば、どんどん発信していきましょう。恥ずかしいかもしれませんが、他の人は、あなたの投稿を見た次の日にはもう忘れているので大丈夫です。

2. 創業メンバー選びは人柄を重視しよう

Finatextには6人の創業メンバーがいます。まだ全員ごりっごりに活躍してくれています。「創業メンバー選びは何を重視したらいいか?」とよく質問されるのですが、僕は必ず「人柄」と答えます。

スタートアップをやるというのはなかなかしんどいです。創業時は特に、想定外でうまくいかないことだらけ。そういう時、スキルだけを重視してメンバーを選んでいるとおそらくチームは瓦解します。組織のカルチャーは創業メンバーの人柄の総和から作られていくもので、後から変えられるものではありません。

「この人、人としてどうなんだろう……」って思いながらも、経験やスキルを持つ人が欲しくて仲間に入れたくなる気持ちもわかりますが、だいたい後で痛い目に合います。相手の人柄をしっかりと見て、良い時も悪い時も長く付き合っていけそうか、よく考えましょう。

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3. 経営メンバーは得意分野がかぶらない方が良い

「経営メンバー間の不協和音」という話は本当によく聞きます。創業者がCTOやCFOをいきなり外したりとか、他の取締役陣が裏で画策して社長を更迭したりとか。それが事業にとって本当に必要であれば仕方ないですが、意外と嫉妬や好き嫌いといったくだらない理由であることも。そんなの現場にとってはいい迷惑だし、そういう会社がスケールするのは難しい。

Finatextホールディングスの経営陣は、僕と伊藤と戸田の3人ですが、不協和音が流れそうになったことは一度もありません。それは多分、お互いの得意分野がほとんど被ってないからだと思います。そうすると自然にお互いをリスペクトするし、それぞれの得意分野に対しての無駄な口出しもしなくなります。もちろん「根っこの哲学や思想が一緒」という前提は必要ですが。

もし経営メンバーを選ぶなら、「その人が優秀かどうか」という観点だけじゃなくて、「お互い補完関係にあるか?」という観点でも見て、選んだ方が良い。4番バッターだけで構成されている野球チームが必ず試合で勝てるわけではありません。ちなみに水戸黄門のレギュラーメンバーは、結構いいバランスだと思います。

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4. お金は大切に使った方が良い

こんな当たり前のことをわざわざ書く理由は、必ずしもみんなが当たり前に実践してないからです。多額の資金調達はしたものの、何にそんなにお金使ったの!?っていうくらい赤字を出して、大規模な人員カットをしたり、吸収されたり、最悪精算したりなどが本当に起きているからです。

「たくさん優秀な人材にしっかりした報酬を払って来てもらう」「大胆に広告費を使って一気にユーザーやお客さんを獲得する」などの投資をするべきでない、と言っているわけではありません。むしろ、勝負すべき時は徹底的にするべき。ただ、まだ利益も出ていないのに、わずか十数人の規模で社長秘書がいたりとか、明らかに分不相応のオフィスに引っ越すとか、べらぼうに高い役員報酬を出すとか、そういう明らかに間違ったお金の使い方はするべきでないと思います。僕が知っている限り、そういう会社で成功した例を見たことはありません。

Finatextは大型の資金調達をするまで4年もかかってしまった一方、その間に小さいながらも利益を出した経験をしてきたので、「お金を大切に使う」という文化を創業期から育てることができました。資金調達に全面的に依存している会社ほど、お金は大切に使うよう心がけることをおすすめします。

5. プライドは億害あって一利なし

起業したてでまだ実績が全然なかった時、当社より成長してるスタートアップや知名度のあるベンチャーを「あそこは大したことない」「すぐにでも追い抜ける」って思っていたりしました。今思えば、びっくりするほど当時の自分の器が小さいなと。「そんなお前が一番しょぼいわ!」という感じで、とても恥ずかしいです。あの時いろんな人にもっと素直に教えを乞うことができたら、かなりの時間をセーブできた可能性があります。

ココロザシが高いことは良いことなのですが、プライドが高いことは何一つ良いことがない。ただただ自分の成長を阻害するだけです。成果を出すためであれば、自分より上とか下とか関係なく吸収できるものはすべて貪欲に吸収するべきです。プライドが高いというのは、自信が無いことの裏返しだと思った方がいいです。

6. 心身の健康より大事なものはない

いくら能力とやる気があっても、心身共に健康じゃなかったら何もできません。特に僕は第一子が産まれた時に妻が重度の産後うつになったこともあって、むちゃくちゃ身にしみて理解しています。あの時はメンタルがかなりやられて、半年近くほとんど会社に貢献できていませんでした。

僕の周りでも、働きすぎで重たい病気になって戦線離脱した人や、いろいろなことをしょいこみすぎてバーンアウトしてしまった人がいます。スタートアップでは無理をしなきゃいけない場面が多いからこそ、仕事で成果を出すのと同じくらい自分の健康を管理するべきです。「自分は絶対大丈夫!」って思ってる人ほど、ちょっとしたきっかけでメンタルがやられてしまったりします。心身の健康はすべての人にとって一番大事なんだけど、失ってみないとそれがわからないので、改めて強調したいです。

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7. 学び続けてる人が勝つ

創業したての頃は知らないことだらけだし、とにかくむちゃくちゃ勉強しました。というかせざるを得なかった。でも、日々の仕事が忙しくなり、なまじ自分の事業領域の知識や経験が蓄積してくると、気づけば本や論文を読んだり新しい知識をインプットしたりする時間が減っていきました。そうなると、なかなか新しいアイデアが出なくなり、意思決定も過去の経験に依存するようになっていきます。

僕が知っている限り、成功している会社の代表や経営陣はもれなく勉強しています。僕よりずっと忙しいのにもかかわらずです。

学び続けることを会社全体に浸透させるため、当社のプリンシプル(行動規範)にも「Update × ∞(アップデート × 無限大)」という規範を盛り込んでいます。よく「忙しくて勉強する時間がない」と言う人がいますが、僕からすると勉強することこそが仕事なのです。

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本人の意欲が一番大事ではあるのですが、会社としても後押しできるとなお良いと思います。当社ではこれまで、英語学習制度、月1万以内の書籍購入補助、海外カンファレンスへの参加、大学院や博士課程の授業料の全額サポート、資格獲得の支援などをしてきました。メンバーがアップデートするための投資は惜しみなくすべきだと思っています。

8. 前向きな人に運と人はついてくる

スタートアップをやっていると、何度か絶体絶命のピンチが訪れます。むちゃくちゃテンションが下がるし泣きたくなるのですが、その度に僕は自分を駆り立て、周りのメンバーを鼓舞し、「現実を直視して自分たちが今できることをやろう」と呼びかけてきました(鼓舞しながら泣いたこともあります。)

以下は、僕が好きな、ディズニーの前CEOであるロバート・アイガーの自伝からの引用です。

リーダーは悲観的な見方を周囲に振りまいてはいけないのである。そして前向きというのはうまくいっていないのにうまくいっていると取り繕うことではなく、物事がうまくいかなければ全て失うといった思い込みを周囲に振りまかないことだ

悲観は気分、楽観は意志なのです。

面白いことに、目を背けずにピンチに立ち向かうと、自分がまったく想定していないかたちで何とかなったりします。ピンチとチャンスは本当に表裏一体だと何度も実感してきました。そして、それを経験したチームの結束はさらに強くなるので一石二鳥です。だから僕はピンチが訪れたら「来た来たぁ!チャンス到来!」って無理やり思うようにして、チームの士気をむしろ上げにいきます。

9. 戦略を経営メンバーだけのものにしない

僕は新卒で入った会社が超大企業だったし、自分がペーペーだったこともあって会社の戦略にいまいち興味が持てませんでした。あまりにも雲の上の人たちがひそひそ話して、特に変わらないだろうとすら思っていました。自分が会社を経営するようになってからも、メンバーから「つまんね〜」って思われるのが嫌で、戦略を共有する機会を最初の3年はあまり設けませんでした。

すると、自分の業務が会社のどんな目標や戦略につながっているかがわからず、モチベーション維持が難しくなるメンバーが出てきました。また、自分がぼんやりと考えていることを飲みの席とかでカジュアルに話すと、僕が思っている以上にメンバーが興味を示してくることにも気づきました。それ以降、毎月「Townhall」という全社会議を開き、会社を取り巻く事業環境や各事業の実績と見通しを共有するようにしました。さらに半年に1度は「Mega-Townhall」を開いて、今後の戦略をなるべく詳細に共有しています。情報管理ができているという前提で、経営陣とメンバーの情報格差をなるべく減らすという姿勢で取り組んでいます。

そうすると日々の目の前の仕事に意味づけがなされ、Finatextのプリンシプルでもある「Jibungoto」になっていきます。そうなると仕事のパフォーマンスが上がるだけでなく、メンバーがより楽しんで仕事ができるようになります。なので戦略というのは会社の隅々まで浸透させる必要があります。そして、その戦略をあの手この手で伝えてメンバーに興味を持ってもらうのも、トップの仕事だと思います。

10. 社会貢献につながらない事業はスケールしない

今の時代、社会貢献につながらない事業は将来的にスケールしません。儲かるだけでは共感が得られないし、投資家にも評価されない時代になってきています。なので、ビジョンやミッションは、ただ美辞麗句を並べたものではなく、その企業の戦略と強く紐付いた、魂が込められたものでないといけない。

ちなみにこれは、収益を出さなくてもいいということではないです。業績を拡大させるだけでなく、世の中のどのような課題を解決してどういう世界を創っていきたいかという、企業としての姿勢と実際の行動が大事だということです。

Finatextグループは、「金融を”サービス”として再発明する」というミッションと、「金融をもっと暮らしに寄り添う世の中にする」というビジョンを掲げています。「日本の金融をアップデートするのは僕たちだ、いや僕たちしかいない!」くらいの気概でやっています。

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最後に

7年の経験を10つの学びにまとめるのは相当難しかったし、うまく伝えられたか不安ではあるもの、これから起業する人やスタートアップで働く人に、少しでもプラスになったらうれしいです。

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Finatextグループは幅広い職種で仲間を募集中ですが、特にエンジニア、PM、マーケティング、新規事業責任者を大募集しています!まずはカジュアル面談からいかがでしょう!?この記事には書いてないこともたっぷりお話しします!

ぜひTwitterのDMか、メール( ryota.hayashi@finatext.com )でご連絡ください。

一緒に日本の金融をアップデートしましょう!



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