見出し画像

「働く」の時間論⑤ DXとは何か

前回はこちら

現代は果てしない成長を要求される社会である。次から次へと新しいビジョンを描きながら常に高い次元を追い求め続ける。
この問題は「脱成長」というキーワードで最近注目されているものである。資本主義そのものを見直そうという活動も、もう何年も前からある。社会の方向性そのものがおかしいので根っこから考え直し、次の新しい社会のモデルを見つけようとしている時期なのだ。

さて、「働く」の時間論①でも書いたように、自分は普段、事務用品を販売する会社で営業をしている。顧客の課題を聞き、業務改善に役立ちそうなITツールの導入を手伝うこともしている。上記のような「脱成長」社会も考えられているが、まだ新しいロールモデルが見つからない限り、常に成長するようにビジネスをしていかなくてはならない。日本社会全体で見たときに、注目されているのがDXであり、自分はその端っこの部分を担っている。

業務改善とは、無駄な業務を見直して可能な限り時間短縮を図っていくことである。
ビジネスでは仕事全てに目的をもつこと、「〜のために」と意味をもって行動することが善とされている。業務改善は「意味のない時間」を削っていくことで、「意味のある時間」を増やしていくことだと言える。目的をもつ「意味のある時間」というのは事業の成長につながる、ビジョンを実現することにつながる時間のことである。
経済成長の行き詰まった日本では、DX化によって成長につながらない「意味のない時間」を可能な限り削ることで成長速度を早めようとしている。

これまでしていた効率の悪い業務、あるいは全く意味のない業務、削減しようとしているそれらの時間とは、ビジネスの現場、業務をこなしている職場で流れている時間でのことだ。そしてその業務をこなしていた人間が存在する。そこには、人間が生きていた時間が流れている。「意味のない時間」を可能な限り削ろうとする世の中の風潮のなかで、その業務をしていた人の人生は無駄だったのだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?