だれかに勝つことなんて

僕は、人一倍負けず嫌いだ。

「男に生まれたからには、どんなときも1番にならなきゃならない」

そんな家庭で生まれ育ったから、勝ちに対する執念は人一倍高かった。中学時代は、部活内で1番上手くなると決めて、練習の後に自主練をしていた。その結果、大会でも結果を残すことができたので、自尊心を守ることが自分のステータスだったんだろうなって。

どんなときもライバルを作りを欠かさなかったし、ライバルがいると負けたくないという気持ちが勝手に込み上げてくる。せっかく努力したのに、結果が出ないのは悔しい。結果が出ないのは頑張り方を間違えた証明になってしまうから、極力少なくしたいと思っている。

だれかに負けたらやっぱり悔しいし、負けてしまった自分を責めたくなってしまうから、僕はだれにも負けたくない。

負けた悔しさが、原動力になることはもちろん知っている。その原動力のおかげで、ここまでやってこれたのは間違いないし、負けの恩恵はたくさん受けてきた。

高校に入り、サッカーが楽しくなくなって、部活動を辞めてしまった。最近も趣味の範囲内で、サッカーやフットサルの大会に出たりしているからサッカーを完全に辞めたわけではない。

僕が部活動をやめたのは、チームメイトに負けたからである。自尊心が傷つくことに恐れて、やめてしまったに過ぎない。今振り返れば、自分を守りたかったのであろう。勝てないところで勝負するよりも、逃げた方が傷付かないし、絶望することもない。

でも、最近「だれかに勝つことよりも重要なことがあるのではないか」と思うようになった。なぜあの日逃げてしまったのか自分なりに分析してみた。

結論としては、僕があの日逃げたのは自分自身からだった。今思い返せば、相手に勝つことなんてもはやどうでもう良かった。自分自身に負けてしまった事実が、とてつもなく悔しかった。だれかに勝つよりも大事なのは、自分自身に勝つことだ。

結局どんな戦いも自分自身との戦いだし、自分に負けてしまったら、競争の舞台にすら立てない。だから向き合うべきはいつも相手ではなく、自分自身だとつい最近気づいた。

誰かに勝つことも大切かもしれないけど、自分自身に負けてしまったらなんの意味もないんだよ。人生は自分との戦いの連続だから、常に自分に勝ち続ける人生でありたい。

自分自身に負けてしまうと、後悔ばかりが残ってしまうから、今はせめて自分自身に負けたくないんだよ。向き合うべきは、いつも自分自身。だからこそ、自分との対話を欠かさないようにしたい。

自分が納得して負けるのならもうそれで良いし、人生の醍醐味は勝ち負けなんかでは決まらないんだよ。

だから自分自身に勝って、だれかに負けるのであれば、僕は自分自身に勝つことを選びたい。誰かへの勝ちに執着してしまい、その結果自分らしさがなくなってしまうのであれば、勝ちを掴みに行く必要なんてないんだよ。

とはいえ本音を話すと、誰かに負けるのはもちろん嫌だ。負ける悔しさはできるだけ味わいたくないから、誰にも負けたくないって気持ちも捨てないし、自分に負けない前提で勝ちにこだわる執着も絶対に捨てない。

そう考えると、かなりわがままだなって思う。でも人生を楽しみたいのであれば、それぐらいのわがままぐらいはちょうど良いのかもしれない。たった1回きりの人生だからエゴの塊でいけば良いし、「全部掴みに行くぞ」って気持ちで生きていこうぜ。