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東京のブルックリン、蔵前で味わった敗北

脈がある片思いは幸福だけれど、脈が全く感じられない片思いは絶望そのものだ。「東京のブルックリン」と呼ばれる蔵前には、デートで足を運ぶカップルたちがたくさんいた。

たくさんのカフェが並ぶ蔵前は、デートにうってつけの場所なのだろう。少し距離はあるけれど、隅田川沿いを歩けば浅草にも行くことができる。おしゃれなお店でランチをして、隅田川沿いを手を繋いで歩いて、浅草へと向かう。夕方ごろにたくさんの人が集まるホッピー通りに移動してお酒を嗜む。お腹が空いていれば、もんじゃ焼きを食べて、もんじゃ臭くなったねなんて言いながら、もんじゃ臭い匂いを纏わりつかせて、電車に揺られる。鉄板のデートなのかもしれないけれど、鉄板はいつだってハズレがない。故に鉄板と呼ばれているのだ。

かくいう僕は蔵前の「Nui.」というゲストハウスに宿泊していた。「Nui.」は旅人のほとんどが知っている有名なゲストハウスだ。ノマドワーカーもたくさん宿泊しており、ワークスペースも非常に充実している。最近はワーケーションプランもあるそうで、ますますノマドワーカーに優しい宿になった。

思う存分蔵前を楽しみたいという気持ちはあれど、原稿の締め切りに追われていたため、深夜3時までワークスペースに缶詰状態だ。せっかく「東京のブルックリン」と呼ばれる蔵前に来たのに、このざまである。自分のスケジュール管理能力のなさをひどく恨む。翌日、仕事に少し余裕ができたため、「Nui.」のモーニングを注文した。ゲストハウスに友人が働いていたが、忙しそうだったため、ほとんど会話できなかった。


そして、「Nui.」の隣にある「“メリハリ寝かせ玄米生活”のすべてを体感できる場」を掲げる「結わえる本店」で1人でランチを嗜んだ。日替わりで選べるおばんざいはどれも美味しそうで、匂いを嗅ぐだけで、目を配る誰が出そうになる。結局、定番の「ハレ箱膳定食」を頼み、モチモチの玄米と共に味を楽しんだ。

「Nui.」の目の前に広がる隅田川に足を運ぶと、たくさんのカップルがいた。そこでその日が休日であることに気づく。手を繋いで歩くカップルたちの楽しそうな声が、川のせせらぎの邪魔をする。ゆっくり川を見たいだけなに、それすらも許されない。居た堪れなくなって、おしゃれなカフェに移動しようと試みた。

蔵前にずっと行ってみたいと思っていたカフェがある。それは「喫茶 半月」だ。倉庫をリノベーションした建物のの2階に「喫茶 半月」があって、ちなみに1階には菓子屋「シノノメ」がある。ガラス張りの木で覆われたドアから漂うおしゃれな雰囲気。入り口の前には額縁に入った紙の中に「喫茶 半月」と書かれている。店内は、カウンター席、テーブル席など様々な席があって、カップルや友人、1人でも足を運びやすい雰囲気だ。特にシュークリームが絶品で売り切れてしまう日もあって、足を運んだ夕方ごろには売り切れていた。

1人席に通されて、優雅な気持ちぇ紅茶を嗜む。そして、鞄の中に入っていた『愛がなんだ』を読んだ。物語はダメ男のためならなんでもする女性を描いていたものだ。報われない片思いに潜む依存性。脈が全く感じられない片思いは絶望そのものである。恋は主導権を握られた時点で、負けなのかもしれない。そんなことを考えていた。

ふと店内を見渡すと、僕以外は全員カップルになっていた。誰かに振り回されているわけでもないし、なんなら片思いをしているわけでもない。恋をしたいと思っていたわけでもなかったのだけれど、現状を俯瞰すると、1人で読書を嗜む僕はカップルたちに負けているような気がした。帰路、隅田川越しに見えるスカイタワーが発光していたそのさまがあまりにも眩しすぎて、二度とあそこに辿り着けないのかもしれないと、1人恐怖を抱いていた。

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