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特別な存在になれなくても

昔は特別な人間になりたいと思っていた。特殊能力を持つとか、そういった類のものではない。やりたいことがうまくいくとか、好きなときに美味しい食べ物を自由に食べる暮らしができるとか、恋愛で失敗しないとか、会社員でうまくやっていくとかとかそういった類の特別である。

社会人になって、自分ならできると息巻いてみせたはじめての仕事はうまくいかなかったし、この仕事ならうまくできそうと思って、新たに挑戦した仕事もうまく進められない何の取り柄もない人間だ。いい仕事をしたときには上司に褒めてもらいたいのに、褒められるどころかできて当たり前みたいな顔をいつもされる。そして、いつのまにか人を褒める立場の人間になってしまった。

それなりに恋愛を経験して、いくつかの気づきがあった。人はいとも簡単に裏切るし、好きだけではやっていけない場面もある。今日もどこかで浮気が繰り広げられているし、法律で禁じられているのに、なぜか不倫をする人もいる。誰かの恋人を取るなんて御法度だ。恋愛で空いた穴は恋愛では塞がらないと理解しているのに、みんな寂しさを持ち寄せ合って、肌を合わせて暖め合っている。

一目惚れが相手を性的にOKと判断した結果だと知ったときは、抱いていた綺麗な幻想が打ち砕かれた気分になったし、はじめてお付き合いした人と結婚した人はこれまでにほとんど見た覚えがない。叶う恋よりも叶わない恋のほうが大半で、今日も世界のどこかで誰かが涙を流している。運命の人なんて所詮は絵空事で、ドラマや映画の世界でしか存在しない。だから、周りの人でずっと同じ人と添い遂げると決意した人間を本気ですごいと思っている。

僕は恋人と喧嘩したときに、ろくでもない男に簡単に成り下がるし、仲直りの方法や声かけのタイミングにドギマギする程度の男だ。相手はちがう人間だから考え方がわからない。そもそも自分の気持ちすらわからない場合があるのに、どうやって相手の気持ちを察すればいいんだろうと頭を抱えている。自分の思い通りにいかなかった場合はすぐ拗ねてしまうため、いつ恋人が呆れてしまうんだろうと、ずっとビクビクしながらお付き合いをしている。

僕は特別な人間ではなく、どこにでもいるようなただの29歳だった。何者かになんてなれないし、誰かに憧れられるような立派な人間でもない。ドラマのような展開は起きる気配がないし、会社員もうまくできなかった。子育てなんて夢のまた夢だし、結婚ができるかどうかもまだ定かではない。

でも、大半の人間が特別な人間ではないし、そもそも特別な人間なんてほんの一握りなんだろう。人間は特別になりたくてもがいて、現実を知って寂しさを持ち寄る弱い生き物である。特別にならなくても、日常は勝手に続いていく。もうそれでいいのかもしれない。と、まだなにも成し遂げてないから諦めたくないのせめぎ合いを、今日も今日とて生きているGW最終日の夜。

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