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夏が落ちた日

夏と海。サイダーと麦わら帽子と女の子。彼女を見ていると、写真が撮りたくなって、夢中でフィルムカメラのシャッターを切る。笑顔ではにかむ彼女を見て、カメラ越しにすっかり見惚れていた。

きらきらした海に彼女はよく似合う。小さな波が来るたびに、彼女がこちらに近づいてくる。それがなんだか照れ臭くて、その姿を見られないようカメラで顔を隠す。

夏の暑さのせいで、すっかりぬるくなったサイダー。炭酸が泡になって消える。儚く消えゆくそのさまは、自分を見ているみたいで、なんだか悲しくなった。

赤いピアス。赤いワンピース。赤に染められた彼女の輪郭。少しずつ茜空に染まりゆく空。あの海の向こう側にはきっと明日がある。そして、日が沈むとともに、夜が少しずつ顔を出す。赤と青と黒。様々な顔を持つ空は、どんな気分で色を変えているんだろうか。空に尋ねたところで、返事は返ってこない。

空にぶら下がる月が、まるで常夜灯のみたいに、明日へと僕たちを手招きしている。この旅路がハッピーエンドになるかどうかは今はどうでもいいし、自分の感情についてもいまだにわかっていない。

小学生みたいに手を挙げながら彼女と渡る横断歩道。少し恥ずかしさもあったけれど、彼女が楽しいならそれでいい。そして、日中はあれだけ騒がしかった街は、すっかり静まり返りいまは2人しかいない。今日の感想を言いながら、公園へと足を運ぶ。

公園で君とした手持ち花火。カメラのシャッター速度を落として、手持ち花火で文字を描く。無邪気に笑う彼女。余裕のふりをする僕。どちらが余裕かは一目瞭然だろう。でも、彼女は見て見ぬ振りをする。

どちらが先に落ちるか勝負した線香花火。どっちが勝っても楽しいねって笑いながら話す君の打ち合わせ横顔はとても綺麗だった。

夏が落ちる。それは恋か、それとも気のせいか。

君が笑う。夏が君の横顔に溶けた。

その姿があまりにも綺麗で、思わず泣きそうになった。


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