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2022年を振り返りつつ、ピボットから半年でシリーズA調達までの裏話をする

どうも、Acompanyの高橋です。
この記事は、本記事はAcompany Advent Calendar 2022の25日目の記事となります。

もう年末ですね。本当に1年があっという間すぎて、ビックリします。何だかんだで、今年も大きな変化があった1年でした。

(この記事、6000文字弱と結構長めの記事なので、年末年始でお時間あるときに読んでいただければと思います🙏)

さて、先日の資金調達リリースにあわせて、カルチャーデックの最新版を公開しました。

その中で、沿革ページも更新されて、これまでの「秘密計算期」から4月に「プライバシーテック期」へと方向性の変更(要はピボット)を実施したことを示されています。

Acompanyの沿革

4月を境に、Acompanyでは秘密計算の会社ではなく、プライバシーテックの会社へとキーワードやブランディングを変えてきました。明示的に秘密計算スタートアップを辞めるという宣言もしました。

なので、ちょうど一年前のアドベントカレンダーでは、秘密計算期に至るまでのAcompanyのアカン期(暗中模索時代)の話を書きましたが、今年は2022年を振り返りながら、「秘密計算からプライバシーテックへのピボット」「シリーズA調達」の裏話を書いていきたいと思います。

ピボットの基本的な話は、秘密計算スタートアップを辞めます。(以降、辞めますnote)で紹介していますので、この記事では、もう一歩踏み込んだ話(なので裏話)をしていきたいとおもいます。


なぜ、ピボットをした?

色々要因はありつつも最大の理由を挙げるとすれば、

「このままだとシリーズAは厳しいかもしれない」

という危機感が自分の中で大きくなっていたことが要因でした。これが昨年末から年明けにかけての頃でした。

ピボット前の状況

ピボット前、つまり、秘密計算ソフトウェアの提供を前提とした事業はお世辞にもうまく行っていると言えない状況でした。

「辞めますnote」 でも書いた2つの課題に直面していました。

このように秘密計算領域にどっぷりとリソースをぶち込んで、やれることはとにかくやってきました。2年間全力で秘密計算領域に取り組む中で2つの大きなインサイトを得ました。

1. 秘密計算利用における法律の壁
2. データコラボレーション全体の課題

秘密計算スタートアップを辞めます。より

プロダクトの難易度の壁などもあったのですが、実態として秘密計算ソフトウェアの提供だけで、この壁を超えることができず、2021年6月に発表したPreシリーズAの調達から半年で約300万円ほどしか売上を作ることができませんでした。1ヶ月ではなく6ヶ月で、です。

この状況は、相当まずいなと当然理解していました。

ピボットを決めた

ピボットを実行する決め手になったのは、大きく2つの理由がありました。

  1. 法律を踏まえた提案でお客さんの反応が変わった

  2. グローバルの市場で秘密計算フォーカスは伸びていなかった

一つずつ説明していきます。

1.法律を踏まえた提案でお客さんの反応が変わった

苦しい状況を打破するための施策の一つとして、秘密計算に主眼をおいた「秘密計算をもちいた安全なデータ連携」という提案ではなく、法律対応を念頭においた「法令遵守したデータ連携技術」の提案を実施していました。

これは、秘密計算を単純に使うのではなく、法律準拠した加工と秘密計算を組み合わせた独自のプライバシー保護技術を提案のベースにしていました。

このあたりは、個人情報保護法の第一人者でもある板倉先生を始めとした複数の先生方に支援をいただきながら形にしていきました。

ここから、明らかに風向きが変わりました

これまでは、商談をしても「必要になったらまた連絡しますね」と、次に続かないことがほとんどでしたが、「NDAを結んで、具体的な話をさせてください!」という反応がどんどん出てくるようになりました。

大体、これが2-3月頃でした。


2.グローバルの市場で秘密計算フォーカスは伸びていなかった

実は、2,3月には、上記と並行して世界最大のアクセラレータープログラムである「Y Combinator」(以下、YC)へのチャレンジをしていました。

結果は、残念ながら不採択でしたが、チャレンジの過程でピボットを決意する大きなインサイトを得ることができました。

PreAで投資いただいたDGDVの渡辺さんには、かなり支援いただきました。
(インタビューでその時の話をしていただいているので、引用させていただきます)

渡辺 「あるディープテックの会社の海外進出をご支援したときのことです。世界的に見ても、競争優位性の高い技術を開発している会社でしたが、海外のステークホルダーとのやりとりには不慣れでした。私自身、その会社の技術は、国内以上に先行して海外に高いニーズがあると感じていたため、私たちDGDVのチームがプレゼン資料の作成・レビューなどをお手伝いして、Y Combinator LLC(YC)開催のスタートアップ育成プログラム(※)に応募されたんです。

チームワーク重視でユニコーン企業を創出──新世代のVC、DG Daiwa Venturesに迫るより

YCへのアプリケーションを書く過程で、改めて海外のプレイヤーについて調査をしました。具体的には、キーワードでひたすら検索しながら、見つけた会社の概要をサイトやリリース、PichBookCrunchbaseの情報をまとめていました。

プライバシー保護の市場は急速に成長していましたが、純粋に秘密計算などのテックだけの企業と比べると、プライバシー規制対応に取り組むプレイヤーの方が明らかに成長していました。後者は、OneTrustやLiveRamp、Vantaなどの複数のユニコーンクラスの企業が誕生しています。

つまり、そこから見えてきたのが、急成長しているプレイヤーは「プライバシー法に対応するためのソリューションを提供している」という事実でした。


法律を踏まえた提案で、顧客の反応が変わり、海外の状況からも、法律対応の有無が成長の大きな差分になることに気がついたことで、3月半ばに完全にピボットを行うことを決意しました。

ピボット直後とシリーズA調達の開始

3月中旬から急ピッチで、プライバシーテックへのピボットのためのリブランディングを行いました。4月1日に「辞めますnote」や秘密計算からプライバシーテックになるというリリースも出しました。また、4月中旬には新プロダクトとして「AutoPrivacy」のリリースも実施しました。

このあたりの激動具合は、マッケイのnoteでも紹介されているので、ぜひご覧いただければと思います。

ちょうど、この2022年の3月-5月の時期は、Acompanyとしても転換期となってり、今でこそAcompanyのプロダクト打ち出している「AutoPrivacy」の構想が立ち上がり始めた時期でした。
~~~ (中略) ~~~
ブランディングチームでは、今まで秘密計算の会社として認知されていたAcompanyを、プライバシーテックとしての会社として認知してもらうためのリブランディングをまず始めました。

AutoPrivacyというプロダクト構想が立ちがりつつある中、最初に決まっていたのは、プライバシーテックでいく、という点とプロダクト名だけでした。

1年を振り返りながら、Acompanyで生きていくための処方箋を書くより

さて、満を持してのプライバシーテックへのピボットを発表し、反響はどうだったかというと、ほぼ無風でした。問い合わせも10件も来ていなかったと思います。

ぶっちゃけ、もう少し反応あるかな?と思っていたので内心「これ、大丈夫か…」と思いましたが、一方で2月頃から過去に商談した企業への再アタックを並行して実施しており、そちらは話が進むケースが増えていました。有償案件もポコポコ生まれており、確実に良い感触は得ていました。この時期に、先日業務提携を発表した博報堂さんとの取り組みもスタートしました。

冒頭でシリーズAについて言及しましたが、12月には資金が尽きる状況だったので、そろそろ動き出す必要を感じていました。

2月にCOOのジョインがあり、ビジネスサイドはかなりリソースの負荷が抑えられるようになっていたのもあり、この頃から資金調達の準備を含めて動きを本格的に開始しました。

苦戦

4月中旬から5月中旬くらいの間で、集中的にVCと面談を行っておりました。
多少タイミングが違うところもありましたが、進捗管理をしていたNotionの看板を確認したところ、最終的に39社のVCと面談を行っていました。

年内でシリーズAを実施したいから、まずは壁打ちしつつ相談させてくださいというスタンスで開始し、一通り話し終えて可能性のありそうな投資家に6月頃から検討をはじめて欲しいと打診を進めました。

最終的にDDには19社(データルームの作成まで実施した社数)進んでいただきました。

各社と7月くらいから本格的なDDが始まり、早々に見送られる投資家などもいつつ、8月頭の顧客ヒアリングでは、11社程度がDD進行中でした。

ここまでは、それなりに順調かもなと思っていたのですが、ここから見送りラッシュとなります…。

実は、裏側でのビジネス進捗に苦戦していました。

ピボットを経て、確実に顧客に刺さっている感触はあるものの、Acompanyが取り組むのは「事業企画」「技術」「法律」が絡む事業領域です。さらに、顧客ターゲットはエンタープライズです。

ただでさえ、時間がかかるエンタープライズで、ステイクホルダーも多いため、調整だけで数ヶ月が溶けるなんてこともザラに発生していました。

そのため、話は進んでいるものの決済まで到達しきれていないという状況が起こっていました。

投資家側もそんな状況とAcompanyの希望する条件との折り合いが難しく、見送りの判断が増えていきました

結果的に、9月になると2社まで数を減らしました。この頃は、資金調達を成立させることができるのか、かなり不安でした。

転換点

9月21日に博報堂さんのオフィスで、技術検証を終えて、次の取り組みへの提案を実施しました。

「この提案がうまくいき、資金調達もうまくいきました!!」

と言いたいところなのですが、この時の提案、全く刺ささりませんでした(苦笑)

博報堂さんのオフィスを出て、COOの佐藤さんと帰り道で、「どうしましょうか…」と話していたのを鮮明に覚えています。

実は、その翌日である9月22日に検討が進行していた2社のうちの1社であるSpiral Capitalさんとの実質投資の可否が決まる面談でした。

この面談で「博報堂さんと検証のネクストステップも具体的に話が進んでいます!」とアピールしたいと思っていたので、内心かなり焦っていました。

不安とは裏腹に、なんとSpiral Capitalとの面談は当初の想定以上にうまくいきました…!

すでに発表されておりますが、このときSpiral Capitalは、JICから30億円のLP出資の投資検討真っ只中でした。(簡単に言うと、Spiralさんも投資家からの調達をやっていたということ)

なので、それが決まるまでは希望している出資額を意思決定するのは難しいかもしれないと担当の植木さんと話していました。

ですが、結果としては希望満額の投資コミットを意思決定いただくことができました。これには植木さん自身も驚いていましたw

最後まで残ったもう1社からもSpiral Capitalよりもいい条件は難しいということで、シリーズAはSpiral Capitalさんにリードインベスターをお願いすることにしました。

ピボットから約半年でリード投資家が決まり、シリーズAを実施することができることになりました。物凄くホッとしました…(笑)

道が拓ける

シリーズAは、一旦新規のフォロー投資家は集めずに、リード投資家+既存投資家で5億円を集める方向で進めることにしました。

幸いなことに、前回投資いただいたANRI、BNV、DGDVの3社とも追加出資をいただくことができ、11月末に条件の合意を経て、投資契約の締結を行いました。これで、無事シリーズAのファーストクローズが完了しました。

リリースでは、融資を含めて6.4億の調達を発表しました。エクイティの調達が苦戦しそうだったので、実は夏頃から並行してデットも動いていました。

また、ビジネスサイドでもPoCなどからネクストの契約にも着実に進んでいき、その一例として博報堂さんとの業務提携やKDDIグループのctcさんとの戦略的業務提携などを発表することができました。

最後に

今回は、2022年の振り返りを「ピボット」と「資金調達」の視点から行いました。

ただ、これ以外にも「Forbes 30 UNDER 30 Asiaの選出」や「プライバシーテック協会の設立」、「CTOの交代」などのイベントや、多くの頼もしいメンバーのジョインや顧問先生方の就任などもありました。

なので、一年前と比べ、自信を持ってAcompanyはいい形で成長していると断言できます。

一方で、会社の成長に合わせて、やはり課題はどんどん出てくるもので、今も絶賛課題にぶつかっています。

その中でも、今は特に採用が課題です…。

↓こちらの記事で詳細書いています。

ぜひ、アップデート版のカルチャーデックもご覧いただけたら嬉しいです。

もし、少しでも興味持っていただければ、ぜひお気軽にTwitterのDMやリクルートページからご連絡ください!

また「Acompany + 興味ある」などでツイートいただければ、見つけ出して連絡いたします!(笑)

長文でしたが、お読みいただきありがとうございました。

【2023/01/20に追記】Podcastや動画でも資金調達周りについて話しました!

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