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2019年12月の記事一覧

書くのも自由なら、読むのも自由   鯨統一郎『文豪たちの怪しい宴』(創元推理文庫)

※ネタバレには配慮してありますが、本作自体が最初に記されているように夏目漱石『こころ』、太宰治『走れメロス』『人間失格』、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』『虔十公園林』、芥川龍之介『藪の中』の内容について明かしていますので、それも含めて未読のかたはご注意ください。

 夏目漱石『こころ』のパネル討論会で長年の論敵を撃破した日本文学研究界の重鎮、曽根原尚貴はその帰り道、立ち寄ったバー〈スリーバレー〉で女性バ

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名作へのオマージュと意外な結末   『赤い部屋異聞』法月綸太郎(角川書店)

名作へのオマージュと意外な結末   『赤い部屋異聞』法月綸太郎(角川書店)

 アカシヤ亭(仮)という名のレストランの二階で催されている、「赤い部屋」の会と呼ばれる、世の中の事柄に退屈しきった男たちが、猟奇の徒(Curiosity Hunting)となって、世に秘められた珍しい知識やセンセイショナルな体験などを手の届く限り追い求めることを目的としたささやかな集まりがある。そこに顔を出していた〈私〉だったが、不慮の事故で身内を亡くしたことをきっかけに激しい気鬱症に陥り、足が遠

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