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空想レビューと言葉の裏側

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架空のブックレビューと連載小説「言葉の裏側」をまとめたマガジンです。
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言葉の裏側【まとめ読み版】

言葉の裏側【まとめ読み版】

人によって書かれる限り、言葉にはつねに裏がある。
          ――――佐藤蓮『裏側のない遺書、真実の告白』より

①覆面座談会編

〈エンタメ情報誌「ミケランジェロ」にて年末に開催された編集者による覆面座談会〉

 ――さぁこの座談会も今年で4回目になります。なんか年末の恒例行事みたいになってきましたねぇ。

A「なんか、やけにテンションが高いね」

 ――いや~、毎年この座談会が楽しみな

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言葉の裏側 ④SNS、遺書編【最終回】

言葉の裏側 ④SNS、遺書編【最終回】

③ドキュメンタリー、通販サイト編

〈佐藤蓮によるSNSでのつぶやき〉

(20××年9月10日)
【新たな作品を書き始める。そしてこの作品は私にとって間違いなく、特別な作品となる。そして、これが私の最後の作品となる……というのは冗談だが、そのくらいの気持ちで書いている】

(20××年9月23日)
【文芸誌に載せるエッセイの依頼を受ける。かなり久し振りの文筆の仕事だが、まったく気持ちが乗らない。

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言葉の裏側 ③ドキュメンタリー、通販サイト編

②新人賞編

〈夕方ワイド番組内で放送されたドキュメンタリーコーナー「サムシング」。「再起をかける作家を支える妻」の回より〉

 ――さてここからは話題を変えて、当番組の人気コーナー。毎回ひとつの職業に注目し、その現場で闘うひとをサポートするその周囲にもスポットを当てていく。それをドキュメンタリー形式で紹介していくこのコーナー「サムシング」ですが、芸能人夫婦に焦点を当てた前回に続いて、今回もテーマ

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言葉の裏側 ②新人賞編

言葉の裏側 ②新人賞編

①覆面座談会編へ

〈第7回那賀川進歩エンターテイメント大賞 募集要項〉

 1970年代中盤、作者と同名の偉大な探偵・那賀川進歩の創造とともに文壇に颯爽と登場し、当初は謎めいた詳細と社会派ミステリ隆盛の時代に異彩を放つ作風で読者を魅了し続け、直江四十五賞を受賞後はその謎めいたベールを取り払うとともに作風の幅を広げ、多岐に渡るジャンルで現在もトップランナーとして走り続ける作家、那賀川進歩の功績の顕

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言葉の裏側 ①覆面座談会編

言葉の裏側 ①覆面座談会編

人によって書かれる限り、言葉にはつねに裏がある。
          ――――佐藤蓮『裏側のない遺書、真実の告白』より

〈エンタメ情報誌「ミケランジェロ」にて年末に開催された編集者による覆面座談会〉

――さぁこの座談会も今年で四回目になります。なんか年末の恒例行事みたいになってきましたねぇ。

A「なんかテンション高いね」

――いや毎年、この座談会が楽しみなんですよ。毎回メンバーが変わるのに

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新鋭が見据える、人間、そして未来像 ソメイヨシノ『明日のないぼくらは』(講園社)【※ネタバレ有】

本作は明治時代を舞台に、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)を探偵役に据えた連作短編ミステリ集『雪女の恋敵』で一昨年デビューしたソメイヨシノの三作目に当たる著作で、過去の二作が短篇集だったソメイにとっては、初の長編作品になります。初めてなのはそれだけではなく、これまで二つの短篇集でソメイは過去の時代に材を取ってきましたが、本作では未来――厳密に言えば作中ではっきりと明かされているわけではない――に焦点

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存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る⑦   『恋愛小説嫌いデスゲーム ~恋愛か、さもなくば死を~』高見祐介

存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る⑦   『恋愛小説嫌いデスゲーム ~恋愛か、さもなくば死を~』高見祐介

 書けない。読書レビューのほうが……。うまく書けなくなってきている気がする。もしやこれのせいでは……、と言いながら続ける。

(※ここからはすべて存在しない小説について語っています。)

 Web発新感覚ホラーノベルという触れ込みで登場した本作は、高見広春『バトル・ロワイアル』や貴志祐介『クリムゾンの迷宮』といった作品が有名な、いわゆるデスゲームもののひとつと言っていいと思いますが、このジャンルに

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存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る⑥  『時をかけたら死んじまった』筒井三尋

存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る⑥  『時をかけたら死んじまった』筒井三尋

 前作はこちら……。

(※ここからはすべて存在しない小説について語っています。)

 ネタバレあり。未読の方はご注意を。

『時をかける想い ~初恋のあの子が結婚詐欺師になっていた件~』(以下、『あの件』)は、筒井康隆に影響されてSF作家になり、実験小説を量産していた筒井三尋にとって新機軸と言っていい作品で今の時代で単行本の売上が50万部を超える大ヒットとなったが、一部のそれまでのファンからは商

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存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る⑤   『時をかける想い ~初恋のあの子が結婚詐欺師になっていた件~』筒井三尋

存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る⑤   『時をかける想い ~初恋のあの子が結婚詐欺師になっていた件~』筒井三尋

 本来の通常レビューからどんどんと離れていっているのは、自分がよく分かっている。……でも本当にメインは読書レビューのほうなんですよ。

 空想レビュー。あなたも、ぜひやってませんか? 自分がやるより、私は人が書いたものを見たい。(※ここからはすべて存在しない小説について語っています。)

 ネタバレあり。未読の方はご注意を。

 タイトルに反して、とても真面目さを感じる小説だ。主人公は東京の私立大

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存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る 番外 「世紀の大駄作」への反論

存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る 番外 「世紀の大駄作」への反論

 先に、こちらを……。

(※ここからはすべて存在しない小説について語っています。)

 前月号にて本誌に寄稿されました書評家、青原由梨氏の書評に対して、作者の都留州戸井氏から反論文が届きました。都留州戸井氏に了承を得て本誌にて掲載することになりました。



 青原由梨様、先日の拙著に対する書評なのですが、わざわざ私の作品のために筆を費やしてくれたことには感謝しますが、あまりに不誠実な内容でし

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存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る④   『杏奈か麗、仁奈』都留州戸井

存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る④   『杏奈か麗、仁奈』都留州戸井

 普段とは違う語り口で書けたりできるのが、ちょっと楽しい。今更ですが空想レビューに関しては、レビューの筆者は必ずしも私、R.S.ではない場合があります。どういうことか言うと、レビューを書いている筆者自体が私の創作である場合があります。

(※ここからはすべて存在しない小説について語っています。)

 どこまでも人をおちょくった作品だ。世紀の大駄作といっていい作品である。著者だけでなく、この作品の出

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存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る③   『私を愛さない世界に、きみがいた』ユキ

存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る③   『私を愛さない世界に、きみがいた』ユキ

 本当に何やってんだろう……、と思いつつ続ける。

(※ここからはすべて存在しない小説について語っています。)

 作品のネタバレをしていますので、未読の方はご注意ください。

 今まで聞いたことのない青春の叫びを聞いた気がした。どこかで見たことのあるような既視感に満ちた青春純愛小説という分野だが、そのジャンルの他のどんな作品とも肌触りが違う。本作は基本的には語り手の〈ぼく〉が過去を回想する形で物

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存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る②   宮部圭吾『罪の代償』

存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る②   宮部圭吾『罪の代償』

 最近レビューを書いていないから、レビューを自分で創ってしまえ、と思ったわけでは決してない。……本当だよ。…嘘じゃないよ。

(※ここからはすべて存在しない小説について語っています。)

 いつも私は江戸川乱歩賞の選評を読んでいるのですが、今年の江戸川乱歩賞の最終選考の中で、ひときわ目立つペンネームの候補者がいました。およそ新人とは思えないような不遜なペンネーム、宮部圭吾。誰もが知るビッグネームふ

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存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る①   『檸檬喰う女、林檎は喰わない』梶井春音

存在もしていないし、もちろん読めるはずもない本について堂々と語る①   『檸檬喰う女、林檎は喰わない』梶井春音

 最近の私はすこしおかしく、どうでもいいことばかり考えている。協力してくれる人がもしもいたら嬉しい。

 前回こんな記事を投稿しました。

 先日、文春文庫から出た「『罪と罰』を読まない』」とかnoteの記事にも「#読んでなかった書感想文」なるものを薦めている記事があったりと未読だからこそできる楽しみ方というのは結構すくなくないみたいです。

 そしてさらに言えば私、これに関しても未読で申し訳ない

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