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中世音楽とはどのような音楽だったのか

1 中世音楽の特徴

中世音楽6世紀から1450年頃までの期間の音楽のことをいいます。現存する最古の音楽は今の音楽とは違う部分がたくさんあります。

ひとつは一つのメロディーのみで構成されていること。現在の「歌と伴奏」のように、一つのメロディに対して様々なパートが和声を構築する音楽形態を「ホモフォニー」といいます。現代の音楽の大半はこのホモフォニーで作られています。逆にどのパートがメロディ、伴奏と決められておらずに、それぞれのパートが独立してかつ対等に扱われる音楽形態を「ポリフォニー」といいます。そして曲が一つの旋律のみで構成されている音楽形態を「モノフォニー」といいます。

モノフォニーの形態で作られている曲の一例が「グレゴリオ聖歌」と呼ばれるもので、ローマ・カトリック教会で用いられた単旋律で無伴奏の宗教音楽です。

グレゴリオ聖歌は歌詞はラテン語、メロディは跳躍進行(3度以上の進行)よりかは順次進行(2度の進行)が多用され、もちろん一つの旋律のみなので無伴奏です。リズムは不規則かつとても自由で、ラテン語の自然なリズムとアクセントに従うものでした。

二つ目は旋法(モード)です。現在のように長音階(メジャースケール)、短音階(マイナースケール)などが無かった時代です。その時代に使われていたのが旋法と呼ばれているものです。

現代でも使われていますが、ドリア旋法フリギア旋法などがそれにあたります。

Dを主音とするドリア旋法

三つ目は五線譜ではなくネウマ譜を使っているということです。もともとは口伝によって伝えられていた聖歌が、9世紀ごろからこのネウマ譜を使って遺されるようになります。

ネウマ譜の例

最初期の音楽は単旋律で遺され、時代を経るにつれて多声的になって発展していくことになります。

2 最初期の多声的なテクスチュア

初めて多声的なテクスチュア、すなわち2つ以上の旋律が共に織り交ぜられるものが出てきたのは9世紀ごろだといわれています。その時代の作曲家は単旋律聖歌に1つまたは複数の声部を追加して装飾を施そうとしていました。やがて一つの旋律に対して他のパートが即興的に完全4度上、または完全5度上を歌う形式が現れ始めました。これはオルガヌムと呼ばれるものです。やがて即興性は失われ主旋律以外のパートも遺されるようになり、より複雑な対旋律が生み出され、3声以上のものが現れ始めました。このオルガヌムの発展がポリフォニーの誕生に繋がります。

即興的に演奏するというのはバロック音楽時代にあった通奏低音(バッソ・コンティヌオ)に通ずるものがあります。通奏低音は低音部の旋律と数字を基に、奏者が自由に伴奏を付けるスタイルです。この通奏低音も時代の流れにとともに使われなくなり、伴奏パートも演奏者任せではなく作曲家がすべて楽譜に記載することになります。そういった意味では歴史は繰り返されているのではないでしょうか。クラシック音楽は即興から始まり、やがて演奏者任せであった他のパートも作曲者によって入念に書き込まれるようになります。

12世紀後半では1163年にノートルダム大聖堂が着工し始めたパリが音楽活動の重要な中心地となっており、ここではオルガヌムの書法が最も精巧で印象的な段階に到達しました。この時代にパリで活躍した作曲家たちをノートルダム楽派といいます。ここで名を遺したのがレオナン(レオニヌス)ペロタン(ペロティヌス)の二人です。なかでもペロタンは3声、4声のポリフォニー作品の先駆者です。

初期のオルガヌム

レオナンの作品

ペロタンの作品


3 世俗的な作品

宗教音楽ではない音楽、つまり世俗的な音楽は吟遊詩人たちによって演奏されていたようで、貴族の詩人音楽家たちが作曲、または収集して歌を街から街へ旅して歌っていたようです。この世俗的な音楽にはショーム、ツィンク、シトル、ハープ、レベック、ハーディ・ガーディ、プサルタリーなどの楽器が伴奏楽器として使われていたそうです。

プサルタリー
ハーディ・ガーディ
レベック
シトル
ツィンク
ショーム

4 まとめ

中世音楽の特徴をまとめると
1 単旋律で作られた(モノフォニー)
2 旋法の使用
3 オルガヌム
4 中世音楽時代の特徴的な楽器群

です。
音程は先程述べた通り最初期は完全4度上、完全5度上なのでかなり素朴な響きです。当時の演奏習慣に関しては資料が残っておらず、オルガヌムも独唱で歌われたのか、または合唱で歌われたのかはわかりません。やがてこれらの技法がさらに発展してルネサンス音楽へと繋がってい行きます。

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