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古典派のトランペットパートはつまらない⁉

※この記事は私の偏見が含まれます。事実に基づいているわけではありません。一つの感想として捉えてください。


金管楽器奏者にとって古典派や初期ロマン派を演奏する際は、少し物足りない部分もあると思います。
なぜならトランペットやホルンは今と違いバルブを持たない楽器だったからです。

以前他の記事にも書いたことがあるかもしれませんが、当時のトランペット、ホルンはそれぞれナチュラルトランペット、ナチュラルホルンというもので、バルブを持たないため半音階を演奏できない楽器でした。

ナチュラルトランペット
ナチュラルホルン

となると使える音が限られてくるわけです。この使える音は倍音列と呼ばれているもので、例えばC管トランペットだと以下の音が使えます。

ナチュラルホルンも似たような感じです。

したがってハ長調ならC管を、ニ長調ならD管をといったように作品の調に合せて管の長さを当時は変えていました。

こういった制限もあり、トランペットとホルンは限られた音型しか使えなかったのです。

これらの楽器は今もそうですが、弦楽器隊(ヴァイオリンなど)と比べて常に出番があるわけではありません。何小節もの休みを挟んでようやく音を出すというのもしばしばあります。

特にトランペットに関してはハイドンやモーツァルトの作品では主音と属音を鳴らすか、主和音のアルペジオを鳴らすぐらいしか使われていません。
またティンパニがある場合は一緒に鳴らすことも多いでしょう。

例としてモーツァルトの交響曲第31番ニ長調K297の第3楽章を見てみましょう。

赤マーカーがトランペット、青マーカーがホルンです。
前者はニ長調の主和音でアルペジオを吹いていますが、後者はイ長調に転調した形で、そのフレーズを演奏しています。

木管楽器であるフルートなどは転調してもそのまま演奏できますが、ホルンとトランペットはそうはいきません。

この作品ではD管が用いられていますので、イ長調の主和音であるラ、ド♯、ミの音のうちド♯の音が出せません。出すとしたら1オクターヴ上のその音を出すことになるので、甲高い音が鳴り響いてしまいます。

結果、妥協的にトランペットはずっとラの音を吹き続けることになってしまいました。

このように出番も少ない、メロディが演奏できない(一部例外もありますが)、同じ音しか鳴らさないと様々な理由により現在のトランペットで演奏するにはあまりにも退屈な感じになってしまいます。

バロック時代は高音域において、トランペットがメロディを演奏するということがしばしばありました。これは当時のトランペット奏者の技術が高い水準を持っていたことによります。

例えばヘンデルの『水上の音楽』ではトランペットやホルンがメロディを奏でる場面がいくつか見受けられます。

この時代の奏者は唇で調整して演奏していたらしく、これには大変な技術が必要だったといわれています。

時代を経るにつれてこういった奏者は姿を消し、バルブシステムが開発されるまでは簡単なフレーズしか演奏しなくなってしまいました。

こういった理由もあり古典派や初期ロマン派の作品を演奏する際は、少しの物足りなさを感じるのも理解できます。

その時代の作品を演奏する時は思い切ってナチュラルトランペットやナチュラルホルンで演奏してしまうの良いのではないでしょうか。



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