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またこの季節が巡りくる度に…あたごのまつ純米吟醸ささら・おりがらみ生酒

どんな酒が飲みたい?

日本酒がはじまるシーズンは冬、その季節の到来とともにどんな酒を飲みたくなるだろうか?

もし人にそれを問われれば、僕はこんな酒を飲みたいと答える。
あたごのまつ、純米吟醸ささら・おりがらみ生酒。

なぜ、これを飲みたくなるのだろう。
その理由は単純だ。
この酒は思い出させてくれる。

酒は料理とともにあるべきものだということを。

このお酒のコンセプトは裏ラベルに書いてあります。

「究極の食中酒」です。(ちょい見づらいけど書いてあります)

こういう風に書くときっとこう思う方もいるでしょう。
「食中酒を目指してる酒捕まえて食中酒っぽいから褒めるとはどういうことなのよ」と。

そこに返す刀で語りたい。
「これはそこらの売り文句的、キャッチコピー的な食中酒とは違うからな!!!」と。

酒自体の魅力を保ちながら、料理の味を引き立てることの困難さよ。
酒が淡すぎればなくても同じになってしまう。
酒が濃ゆすぎれば料理の風味など(さらに言えば「凝った料理の繊細な風味」など)簡単に消し去ってしまう。

酒と料理の風味のバランスは、こだわればこだわるほどとても難しいのです…。

ところがこのお酒は他の酒に比べてカバーできる料理の範囲が実に広い。
今日はこんな感じの4皿ですが、四者四様に酒と料理の妙が味わえる。

アジのごま醤油ダレ掛け。
酒とともに味わうとアジの生臭さが彼方へ消えてゆき、ごまの香ばしさとともにアジの甘みが前面に来る。美味。

豆腐に枝豆乗せただけのやつ笑
酒とともに味わうと酒の苦味が枝豆の甘いコクと合わさって無二の風味となる。豆腐は酒・醤油と混じりソースになる。穀物ばかりなのに爽やかだ。アルコールのなせるワザか?美味。

トマトとチーズをもっただけのやつ!
トマトの甘味酸味はもともと酒と相性が良いと思うのですが、そこにチーズの乳製品独特の旨苦が加わる。このお酒には酒のオリが入っていてちょっと瓶を振るとうすにごりになるのですが、そのにごりの苦味とこれが呼応する。美味。

で、はい。
ただのパイナップル…に山椒をふりかけたもの。
以外に思われるかもしれませんが果物と日本酒は選べば相性バツグンです。
山椒の刺激的な風味をまとったパイナップルの変化球的な甘さと酒の甘さが一瞬交錯する…、後に苦味が増える感じがする…この苦味をどう解釈するかで評価が変わりそうです。

大したおつまみではないのですが、それでも系統の違う四品です。これらとそつなくかつ時にそつなく以上を引き出すこのお酒のポテンシャルは…非常に高い。

料理との相性だけを語ってきましたが、このお酒は単体でも素晴らしい。
普段のあたごのまつはもう少し控えめなのですが、これは生酒なので若干酒自体にを主張があります。

(※…日本酒には生酒と加熱殺菌(これを専門用語で「火入れ」といいます)したお酒があります。生酒=〇〇、火入れ=△△と十把一絡げにできないほどの味のバリエーションが有るのですが、一般的に生酒のほうがヴィヴィッドな風味がすると理解してもらったらいいと思います。インパクト系。悪くいうと、重い。あと生酒は一日経つと風味がガラッと変わりやすいです。火入れのほうがダイナミックさには欠けますが風味が安定しています。)

このお酒は、非常にバランスがいい。
あたごのまつは基本的にどのお酒もバランスがいいと言ってよいと思います。これもとてもよい。
よいけれど、生酒なので日に日に変化が見える…。

初日はかすかに洋梨の香り、静かに膨らむ甘味と旨味。味はあるけれど引き際は爽やかだ。うまい。
二日目は巨峰のような風味が出てくる。そして酒瓶の底に沈んでいたオリ(旨味や苦味が詰まった淡雪のようなものです。新酒のシーズンはこれが入った酒が比較的多いかと思います)の成分が全体に溶け出して、初日にはなかった奥行きができている。不快でない苦味だ…。

人によってはこのオリの苦味を嫌がる人もいるでしょう。
それも踏まえてあえて言いますが、僕はこれが好きです。

若干比喩的ですが、満月の左下四分の一に薄雲がかかったところで満月の価値は落ちはしない。

むしろ隠れた部分は完璧な満月を想像させるスパイスみたいなものだ。

(って兼好法師が徒然草で言ってなかったけ)

このオリにはそんな魅力がある。そう思うのです。

さて、いろいろ語ってきましたが仮にこれを読んでいるあなたが「なんか『多くの料理に合う(マイルド?)と言いつつ『単体でもよい(突出した魅力がある)』ってどこか矛盾してない?」と思ったとしたら、それは嬉しい限りです。

そこがまさにこのお酒の特異なところです。
そこが素晴らしいのです。
良酒は優れておりかつ矛盾しているような特質を軽々と併せ持ち、人々を素晴らしい形で煙に巻く…このお酒はまさにその典型と言えると思います。

よく見るとラベルもそれを物語っている。

虹色のグラデーションラベル。
虹はそれを見る人の感性で7色にも3色にもそれ以上色にも見える。
変幻自在だけれど、でもどれも空の青さと調和している。

でもでも、きっと何色に見えようとも虹自体を「きれいだなあ」と思う人の心の感激は変わらない…。

なんと奥ゆかしい芸術だろう。
このお酒を酒シーズン到来とともにまた来年も思い出し、また同じように酔っていたい。

今はそんなふうに思います。

乾杯しよう。何度でもこの酒で。

乾杯。どうも、りょーさけでした!

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。