歌う洗濯機

想イヲツヅル #54


今回は少し自分のことを話そうと思う


僕は歌を歌っている

仕事をしながら
音楽の勉強をして

年に何度かライブもしている


職場でも仲の良い同僚くらいにしか話していないし

ライブをしても自分が呼べるお客さんはその同僚や学生時代の友達くらいだ

彼女にはもちろん
音楽をしていることは話しているが
まだ招待したことはない

毎日の仕事に追われながら
時間を縫っては

メロディをつくり
ギターを弾き
歌詞を考えて

そして

夢をみたりする




今朝は雨が降っていた

薄ら日を浴びた飲みかけのビールの缶を横目に

ベッドの中
寝惚け眼で携帯を開く

彼女からの「おはよう」をみて

「雨だね」

と返事をした


そのまま携帯をいじって
ゆっくりと身体のエンジンをかけていく


なんとなく
溜まってしまった洗濯物を洗濯機にいれて

なんとなく
グルグルと一定に渦をつくる洗濯槽をぼーっとみたりする

そして
渦に逆らえず回り続けるそれと自分を重ねたりして
センチメンタルになったりする

昨日やっと新曲ができて

1人で祝杯をあげて飲み過ぎてしまった


誰かに「つくれ」と言われるわけでもない創作物を
お祝いできるのは自分くらいなもので

堂々と自己満足して


少しでも時間を持て余せば

この曲は誰かに喜んでもらえるのだろうか
大丈夫なんだろうか

霧がかった“誰か“を想っては
心の隅で小さく体育座りした自分が現れたりする



恋愛の曲が最近書けていなかったのは
なんでだったんだろう

彼女とはうまくいっているはずだし
これからもっと仲良くなれたらいいなと本当に思っているし

曲の“ネタ“みたいなものには困っていなかったはずなのに

なのに今回の新曲は
なぜだか君が
心のカーテンの隙間から顔を出してきて

埋まらないフレーズの歌詞の答えを
こっそり教えてくれるのだ

小さな声でこそっと話しては
どこかに姿を消してしまう

自分でもよくわからない出来事だったけれど

そのおかげでこの曲ができたようなものなのである

“君に恋はしていない“

ただこの出来事で
それが言い切れないような
断言できないような


“たぶん君に恋はしていないはずだ“


という気持ちの悪い答えがやってきてしまった


昨夜
祝杯で飲みすぎた
というのは半分で

残りの半分は
この気持ちの悪い“なにか“をアルコールで洗い流す作業だったのかも知れない

そんな思いに耽っていると


「ピーピーピー」


洗濯が終わった合図が鳴った
悲しいくらいの一定の間隔で


そして


今更ながら気付くのである

今日は雨

二日酔いで頭が痛い

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?