レインボーマウンテン

標高5200mの頂に立ち

人はなぜ山に登るのか。ある人は言った。「そこに山があるからだ」。その理論はいまいち理解できないが、この山には強く惹かれるものがあった。

南米ペルーの観光都市クスコ。マチュピチュを訪れる旅行者が必ず立ち寄るこの街で、最近旅人の間で人気のスポットがあることを耳にした。クスコからのツアーでしか訪れることができず、かなり過酷な山登りになると言う。しかし、その山を登り切った先に目にするのは、虹色に輝く山々らしいのだ。

その山の名は「レインボーマウンテン」。この絶景を一目見ようと多くの旅人がこの山に入っていく。この話を聞いて居ても立っても居られず、すぐさまツアーに申し込む。

出発は朝の3時。眠たい目をこすって車に乗り込み、移動を開始する。どんどん山奥に進むこと4時間ほどだろうか、拠点になる山小屋に到着。この時点で標高はゆうに4000mを超える。登山の注意を受けたあと朝食をいただき、登山開始地点まで再び移動する。道中周りを見渡すと、そこに広がるのはアンデスの山々。所どころ雪が残り、これだけでもすでに絶景と言える。

登山開始地点に到着し車を降りると、ツアー参加者はそれぞれのペースで山を登り始める。次に集合するのは山頂だ。道中仲良くなった人と「また後で」と挨拶を交わし、一人歩を進める。

この数日で高所に慣れたこともあるのだろう、最初は傾斜も緩く軽やかな滑りだしだ。草を食むアルパカを写真におさめたり、上空を優雅に飛ぶコンドルを眺めたり、意外といけるなと余裕をこいていた。

しかし、標高が上がるにつれ傾斜もきつくなり、徐々に足取りが重くなってくる。体力には自信があるほうだが、一歩一歩足を踏み出すのがやっとだ。10m進んでは立ち止まり、一呼吸置く。その繰り返しで少しずつ前に進む。本気で足が動かないという経験は初めてだ。

それでも歩き続けようやく山頂に到着。最後はずっとうつむきながら歩いてきた顔をやっと上げる。そこに広がる景色を見て鳥肌が立った。カラフルな地層が幾重にも連なっている。まさに「レインボーマウンテン」だ。自分が歩いてきた道を振り返ってみると、そこにも虹色に輝く大地が広がっていた。

標高5200m、富士山をはるかに超える高さの頂。きつい思いをしてでもここまで来てよかった。心からそう思った。こんな陳腐な言葉しか出てこないくらいには、自然が生み出す絶景は偉大だった。

登山家はこの一瞬の感動を味わうために、山に挑み続けるのだろうか。それならわからなくもないな。そんなことを考えながら、ガイドが用意してくれた温かいお茶をちびちびとすするのだった。


※ちなみにこんなきつい思いをしなくても、お金を出せば馬に乗って運んでくれるサービスもあります。

でも、やっぱり自分の脚で登り切ったときの感動は、何物にも代えがたいと思います。


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