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物に支配されている人生。苦しみと犠牲が人生で尊いんだ。痛みから逃げるな。

「お前は物に支配されている。」

「痛みを感じろ。苦しみと犠牲が尊いんだ。痛みから逃げるな。人生で最高の瞬間を味わえ。」

「いつか必ず死ぬって事を恐れず心にたたき込め!
すべてを失って真の自由を得る。」

「我々は消費者だ。ライフスタイルに仕える奴隷。殺人も犯罪も貧困も誰も気にしない。」


これらは、映画「ファイトクラブ」に出てくるセリフたちです。

ファイトクラブ 1999年製作 アメリカ映画 20世紀フォックス


「主人公は、大手自動車会社に勤務するサラリーマン。主人公が住む高級コンドミニアムには、高級な家具や衣服が買い揃えられており、その部屋で主人公は、物質的に何不自由ない生活を送っている。
いつものように出張へ行き、帰りの飛行機の中で主人公は、石鹸の行商人と名乗る男と出会う。その男と空港で別れ、自宅に帰ると、自分の部屋だけが燃えており、高級コンドミニアムの下には、自分の部屋にあったIKEAのデザイン家具や高級な衣服が無惨な姿になって落ちていた。
今日寝る場所がなくなった主人公は、飛行機の中で出会った男に連絡し、
その夜は男の家に泊まることとなった。」

このような流れで映画は始まる。
詳しいあらすじはウィキペディアなどに載っているからここでは書かないが、この映画は、現代に生きる僕たちが忘れてしまっていることを多く気づせてくれる、素晴らしい映画だと僕は思う。

寝る場所がなくなった主人公は、飛行機の中で出会った男に会いにバーへ向かう。そこで主人公と男が会い、長年かけて買い揃えた家具や衣服が全てなくなってしまったことに落ち込んでいる主人公に、タイラー(飛行機の男)はこんなことを言う。

「お前は物に支配されている。我々は消費者だ。ライフスタイルに仕える奴隷。殺人、犯罪、貧困。誰も気にしない。それよりアイドル雑誌にマルチチャンネルTV。デザイナー下着。毛生え薬。ダイエット食品。ガーデニング。何がガーデニングだ!タイタニックと一緒に沈めばいいんだ。
なんでもできる自由が手に入るのは、すべてを失ってからだ。
仕事の中身でお前は決まらない。預金残高とも関係ない。持ってる車も関係ない。財布の中身も関係ない。クソみたいなファッションも関係ない。
文明生活の基本的な前提を拒否しろ。特に物を持つことの重要性を拒否しろ。」

現代に生きる僕たちは気づかないうちに、様々な宣伝文句に煽られてモノを買わされている。まるで僕たちは、モノを揃えないと幸せになれないと思わせられている。でも果たして本当にそうなのだろうか。
誰もが安心安全な場所に住み、何不自由なく生活ができるようになった現代で、僕たち人間は本当に幸せになったのだろうか。安心安全ではなく、
生活をするにも苦労していた昔の人たちよりも、現代に生きる僕たちの方が本当に幸せになったのだろうか。
自殺者は増え、昔は存在していなかった現代病と呼ばれる精神的な病の数も増え、飢餓で亡くなる人間の数よりも飽食が原因で亡くなる人間の数の方が多くなった現代で、果たして人間は幸せになったと言えるのだろうか。
何でも手に入るからこそ、生きていることを実感できずに、日々何となく生きてしまうのではないだろうか。少しだけ手にしたお金でモノを買い揃え、気づけばモノを買うために、ローンを支払うために、仕事をしてしまっていないだろうか。
この映画に出てくるセリフは、現代に生きる僕たちに、
自分の人生ってなんだろうと、改めて考えさせてくれる。

では生きるとはどういうことなのだろうか。
どうすれば生きている実感が湧くのだろうか。

タイラーは言う。
「痛みを感じろ。苦しみと犠牲が尊いんだ。痛みから逃げるな。人生で最高の瞬間を味わえ。」

タイラーは、コンビニでバイトをしている獣医志望の男性に銃を突きつけ、
「お前は何を目指しているんだ?獣医を目指しているなら本気で目指せ。もしお前が獣医を目指さずにこのままアルバイトをダラダラとやり続けるなら、今この場でお前を撃つ。やるか?」
そして「やる」と言った獣医志望の男性を解放するとタイラーは、
「あいつは良い朝を迎える。食ったことがないほどうまい朝飯を食うことになる」
こんなことを言う。

僕たちは何も考えないで生きていると、できるだけ痛みを避け、苦しみを避け続ける。
本当は言いたいことがあるのに言うことができない。
自分の感情を伝えられない。
挑戦できない。
一つのことをなかなか決められない。

こういったことの全ては、痛みを避け、苦しみを避け続けているからではないだろうか。痛みと苦しみを避け続けた結果、人間は無気力になり、一度しかない自分の人生を、何となく生きてしまっている。

僕たちは痛みを感じることで喜びを感じるし、苦しみを味わうからこそ幸せを感じる。幸せや喜びは、痛みや苦しみがあるからこそ存在できる。

コンビニで働く獣医志望の男性のように、人間は初めて死を意識したときに、自分の人生が有限であることに気づく。
そしてそれと同時に、毎日当たり前のように日が昇ることや、美味しい朝ご飯を食べることができるそんな世の中に感謝することができる。
有限である自分の人生を、誰かに決めてもらうのではなく、自分自身で決め、自分の人生を自分で創っていこうと思える。

「いつか必ず死ぬって事を恐れず心にたたき込め!
すべてを失って真の自由を得る。」

あなたは、一度しかない自分の人生をどうやって生きますか?
今も死に向かっている人生の時間をどうやって使いますか?
もっと痛みと苦しみを味わって、もっと感動と幸せを味わおう。

ファイトクラブは、僕の人生にそんな問いを投げかけてくれた。

Ryoma Kobayashi






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