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目の前の現実を無視したい。そしてこの場所にずっといたい。


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小学生の頃、「ハイスクールミュージカル」を観てロサンゼルスという街に憧れた。
「こんなにも面白そうな世界があそこにはあるのか」
小学生の僕は、心が震える刺激を浴びた。

10年後、僕はそのロサンゼルスに一人でいた。
バンクーバー留学を終え、日本へ帰国する前に立ち寄ったロサンゼルス。
目的はなかった。
僕はカナダに行く前にも実はロサンゼルスに来ている。
でもその時は一人ではない。

誰かと行くときと一人で行くときでは、その場所で感じることが全く違う。
僕は自分がそうなのをを知っていたから、ロサンゼルス空港に到着してすぐに、このマンハッタンビーチへ向かった。
目的は、ここでサンセットを見るため。

前回ロサンゼルスに来たとき、この場所を教えてもらった。
場所は空港から南に車で40分くらい行ったところにあるから、
あまり観光で行くような場所ではない。(一応観光地らしいが) 

前回ここに来たとき、僕はこの場所が大好きになった。
綺麗な太陽が海の向こうに沈み、手前の海にはたくさんのサーファーがいる。子供を連れて来ている家族、海沿いをランニングする人、犬を散歩してる人、海沿いにあるおしゃれなお店たち。
こんな場所で生活をしている人間もいるのかと思うと、僕は足が動かなくなった。
「ここにいたい。毎日この場所で太陽を眺めていたい。」
初めて心からそう思った。

「ハイスクールミュージカル」を観てロサンゼルスに憧れたころの自分だったら、このままここに残ることができただろう。
でも僕はあの頃に比べると少し大人になってしまって、知識というものが少しばかり身についてしまった。
このままここに住むならお金はどうするのか。
仕事は見つかるのか。
まず働くためのビザを持っていないじゃないか。
色々な現実が僕の目の前にはある。
そんな現実を無視したいと思う。でもそんなことできるはずがない。
でも多分できるはずがないと思ってるのは自分なだけで、本当はその気になればそんなことだってできてしまうんだ。
だからそれができないと思っているのは、ただ自分がその後にやってくる
現実に恐怖を感じているにほかならない。

でもこの場所で、、、
と、もし自分がここで生活をしたらという想像だけが頭をかき回す。
でも僕には帰る場所がある。
日本で大好きな家族が待っててくれている。友達も待っててくれている。
そのとき思った。

もし一人で今ここに住むことと、僕の帰りを待っていてくれている誰かのもとに帰って、今日までしてきた経験を話して、一緒に美味しいご飯を食べることはどっちが幸せなのだろう。
そんなことを思った僕は、後者を選ぶことにし、桟橋から太陽に向かって一枚写真を撮ってここを去った。
 
僕が今この瞬間にこの写真とともにnoteを書いていることは、この自分の気持ちをシェアしたいから。
でもなぜシェアしたいかを聞かれても、答えられるのは
「ただシェアしたいから。」
そう、人間は自分の経験したことをシェアしたい生き物なんだ。
だって僕がマンハッタンビーチに行ってこの場所にあったものとか
何が綺麗だったのかとか、ここで何を思ったのかを誰かにシェアしないと、
その経験は自分だけのものになってしまう。
今までの人生で人には言いたくない経験もあって、
そんな経験は自分の中だけでとどめておきたいけど、
僕は自分が感動したことや楽しかったことは誰かに話したくなる。
その経験を話して自分の中でもう一回その経験に浸りたい気持ちもあるし、
それを聞いてくれた相手が楽しそうに聞いてくれたら、僕はもっと嬉しくなる。
だから話す。

日本に帰って、僕を待っててくれているみんなに話そう。
このマンハッタンビーチのことだけじゃない。
カナダでの生活も一回のディナーだけでは話しきれないほどの経験をした。
僕がこの経験を話すことでみんなの為になる。
だって家族や友達は僕みたいにカナダで生活したことがないんだ。
だから僕が話さなければいけない。
今までみんなのおかげでここまで元気に育つことができたんだ。
だから誰一人として僕にとっては欠けてはいけない大切な存在だ。
そんなみんなに経験を話すということで、少しばかりの恩返しができるかもしれない。

またここに戻ってきたときは隣にいる誰かに、前来たときはこんなことを思ったんだって話してみたいと思う。
そしてまたそのときには新しい何かを僕の心は感じているのだろう。
もしかすると前ほどこの場所に惹かれることはないかもしれない。
でもそれを成長と呼ぶのかもしれないし、そうやって変わっていくかもしれない自分を楽しもうと思う。

Ryoma Kobayashi

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