最も重要な事を獲る為に、すべて捨てよ
「交渉力 結果が変わる伝え方・考え方」 橋下徹
PHP新書 2020/3/13
こんにちは緑志 新です。
本日は元大阪知事で現在もコメンテーターとして活躍される、橋下徹さんの著書「交渉力」を題材に取り上げていきます。
【テーマ】
伝える能力を磨く -会話コミュニケーションの質を上げる-
「合理的に考えたり説明したりすることは大したことではない、重要なのは、いかに人を動かせるかだ。」というのがここ最近の私の中での金言だ。人を動かせること、これが人間のスキルの上でもっとも上位なのかもしれない。
【なぜこの本を選んだのか】
商談は出来ても交渉が出来る人って世の中にほとんどいないよな。と思ったのが手に取ったきっかけだ。橋下氏と言えば歯に衣着せぬ物言いで、幾多の論客をばったばったと切り伏せる様をテレビで見せつけてきた。私もYOUTUBEなどで記者相手に気持ちいい程の論破を仕掛ける様子は、爽快感に似たものを感じていたものだ。
話は戻るが、商談と交渉の違いとは何か考えたときに、真っ先に頭に浮かんだのは「失うリスク」だ。つまり商談において営業は失敗しても何か失うことはほとんどない。会社の信頼や自身のポジションなど見えない何かはあるにしても、失敗したらその場で打ち首みたいなことはない。
一方交渉とは、基本的にこちらも何かを失うリスクを持ちながら顔を突き合わせる。私も含め日本人はこういった場面に非常に弱い。
そして、年齢を重ねると交渉事というのはちらほら増えてくる。それは家族、子供、家、年老いた親、役職など背負うものが増えてくるからだ。
これからのためにこの本を読み解いていきたいと思う。
交渉とは要求と譲歩の整理
結論から言うと本書の最大の要点はこれだ。交渉において最も重要なことは自分がこれだけは譲れないこと(=要求)と、譲歩しても良いことを整理し、交渉の場では、この譲歩というカードを切りあって、要求をいかに通すか。つまり準備で9割が決まる。本書はとてもシンプルで常にこのメッセ―ジの繰り返しと橋下氏の事例を用いた構成だ。
要求は徹底的に絞り込め
おそらく多くの人が失敗する点は要求を持ちすぎるからだろう。つまり欲張り過ぎなのだ。本書でも準備の段階で要求を絶対に譲れない1、2個に絞るようアドバイスがある。それ以外は捨てても良いと決めることが非常に大事だ。
実践での交渉術はたったの3つ
【仮想の利益】、【合法的に脅す】、【お願いする】
これらはテクニックとして紹介されているが、あくまで本筋は要望と譲歩だ。交渉に慣れていなければマイナスに作用することもあるので、用法には注意がいる。
①【仮想の利益】
譲歩のカードだと思うのが一番近い。譲歩は何かを失うリスクがある。それをリスクゼロで、相手が譲歩してもらったと思わせるのが仮想の利益だ。
イメージとしては「高い要求の後に、それを緩和すること。」例えば期限の設定などが連想しやすい。短い期限を言い渡され、それを延ばしてもらうと、相手は精神的に助かったと思う。一方要求側からすると、リスクなしに譲歩したと思わせ、優位に物事を進められる。
これは心理学的に「ドア・イン・ザ・フェイス」と名付けられている程、有名なテクニックでもある。
②【合法的に脅す】
相手の嫌がること、弱点を突いて形勢を変えることだ。この言い回しが橋下氏らしいが、あくまで合法的にだ。大阪都構想の住民投票を実施させるため、公明党に対し、保有する6選挙区に橋下、松井という2枚看板と維新の候補者を送り込むと【合法的に】脅して、住民投票の実施まで漕ぎつけた事例が本書には書かれている。
ここで気を付ける点は交渉のパターンには2通りあり、【敵対的交渉】か、【協調的交渉】だ。②のケースはもちろん【敵対的交渉】の場合のみに当てはまる。当たり前だが決して【協調的交渉】で使ってはいけない。協調関係は一瞬にして崩れ去ってしまうだろう。
また①②の注意点として、交渉する自分の立場を冷静に判断する必要がある。どちらも相手と同等かそれ以上の立場にない場合はマイナスに働く。これを理解して交渉の場に臨むべきだ。
③【お願いをする】
どうにもこうにもいかないケースはある、その最終手段として③が用いられるわけだが、ただ単にお願いをするわけではない。要求の要素分解が重要だ。絶対に譲れないと決めた要求が通らない場合、さらにそこから要求を分解し、交渉のテーブルに着く。これはビジネスシーンでも最重要なマインドだと思う。課題の因数分解ができる人はどこに行っても有能だ。
【本書から活用できること】
①絶対に叶えたい要求の絞り込み
理想は1つ、多くとも2つまでに絞り込むこと
②譲歩できることを多く持つ
譲歩は率先してこちらから提案する。譲歩の数が多いほど心理的優位に
立つことができる。
③うまくいかない場合は要素分解
絞り込んだ要求をさらに分解し、交渉を重ねていく。失敗すればゼロなの
だから得るものがあった方が良いというマインドを持つこと。
【読み終えて】
既述でもあるが本書のメッセージは非常にシンプルな上、橋下徹というパーソナリティがイメージしやすいキャラクターのため、腹落ちしやすい。
要求と譲歩の整理は私のような一般人にも活用できる機会はあると思うが、テクニックで書いた①②は余程の人でない限りはおすすめしない。とにかく準備が9割というつもりで考えを深めていくことが重要だ。
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