虹の彼方に 第5話 悩む沙樹と尊敬する人物
ライブ喫茶っていうくらいだから、薄暗い店内を想像していた。でも予想に反して、中はちょっと広めのごく普通の喫茶店だ。
奥には小さなステージがあり、左端にグランドピアノがおかれている。生演奏が入ることもあるのだろう。ステージの上にはドラムやキーボード、そしてスピーカー、中央にはマイクスタンドもあり、ライブの準備はすっかり整っている。
なのに……。
あたし以外のお客さんって、窓際のテーブルに男子が三人いるだけだ。どうしてこんなに人がいないんだろう?
あたしに声をかけたくなるのも理解できるな。
「チケットを買ってくれた友達は、ギリギリにならないと動かないやつらばかりなんだよ。そのうえ出不精が多いんだ。今みたいに雨が降ってると、来てくれるか怪しくてね。
これはヤバいなってみんなで話していたところに、きみの姿を見つけたんだ。神がわれらに使わした天使かもしれないって思ったら、声をかけずにいられなかったんだよ」
投げ銭がわりにサポートしていただけると嬉しいです。執筆活動に必要な資料や道具をそろえるのに使います。よろしくお願いします!