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虹の彼方に 第6話 見つかりたくないのに

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 あたしは一瞬、自分の目を疑った。
 控室から出てきた受験生はよく知っている人で、不幸の大元を作った人だ。

 そっくりさんじゃない。得能くん本人だ。
 あたしは慌ててふたりに背を向ける。

「昨日教えたのと同じだろ。まだまだ理解できてないな」
 得能くんが根を上げた問題を、ワタルさんが確認しているようだ。
「ちょっと傾向がちがうんだよ。あのやり方じゃ解けないんだぜ」
「おかしいな、練習問題だからそんなにややこしいはずはないんだが……」
 あの得能くんが悩むなんてどんな問題だろう。それなのにワタルさんはスラスラ解けるわけ?

 あたしは背中でふたりの会話を聞いていた。
 まちがいない。聞き覚えのある声と話し方は、得能くん本人だ。ただ幸いなことに、ワタルさんとの会話に夢中で、今はあたしに気づいてない。

 で、でもまさかこんなところに得能くんがいるなんて。
 これってたちの悪いジョークなの?

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2,075字
全部で10話ほどですが、1話は短めです。原稿用紙100枚を目処に書いた中編小説を改稿したものです。文字数換算すると、3万字強になります。

メンバーシップ特典マガジンと同じ内容ですが、会員以外の方に単独で販売するように設定しようとしたところ、うまくいかなかったので、改めて単独の…

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