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生成AIはリサーチの現場で活用できるのか?


自己紹介

こんにちは。私はGO株式会社でタクシーアプリ『GO』のユーザーリサーチを担当している井立と申します。現在、プロダクトマネジメント本部データインテリジェンス部に所属し、マーケットリサーチ、UXリサーチを担当しています。
定量調査・定性調査を組み合わせながら、プロダクト改善や顧客戦略策定を支援をするのが主な業務です。

生成AIはリサーチの現場で活用できるのか?

GO株式会社では、業務効率改善のための生成AIの活用を推進しています。リサーチャーとしても気になるキーワード。
普段は比較的アナログな手法(アンケート調査とかインタビューなど)を駆使しているのですが、生成AIで業務の効率化を果たせないかを模索したので、記事にしたいと思います。

業務における課題感

アンケート調査に参加する際、最後の方に「◯◯について、ご意見・ご要望などをご自由にお書きください(以降「自由記述欄」と呼ぶ)」みたいなものを見かけたことはありますか?

自由記述欄は、アンケート回答者からの愛と期待が詰まった宝の山。
その一方で、自然言語で記述かつ大量なために有効活用するには多くのリソースとエネルギーを要します。
これらを整理する際、読み落としがないか、偏った解釈になっていないかなど客観的な視点が必要なのですが、これはレビュアーにとっても負担が高い工程です。

このような膨大な自然言語の情報処理は、生成AIが得意とするところ、という表面的な理解はあったのですが、一方で、要約結果をそのまま鵜呑みにして良いのだろうか?という疑問がありました。

そのような背景から、生成AIの活用に熱視線を送りつつも二の足を踏んでいたのですが、社内のIT戦略部が生成AIによる業務効率化を推進しており、手軽に「Dify.AI」を活用できる環境を用意してくれたので、活用してみました。

ちなみに弊社の敏腕プロダクトデザイナーも、業務で生成AIを活用しているそうです。

やったこと

①従来どおり人力による分析
②生成AIによる分析
これらの結果を比較し、実務に落とし込む時のポイントを考察しました。

①人力による分析

上記の写真のように、コメントを手作業で分類、整理、構造化し、アンケート集計で検知した課題に関連しそうな要素を抽出し、メンバー間でディスカッションをしました。

思えばコロナ禍の最中は、このように顔を突き合わせてデータの読み取りをすることも困難でした。
手間はかかりますが、手作業で分類・読み取りをするのも、また良いものだなと思いました。

余談ですが、"GOEN"という社内交流の支援制度を利用すると費用の補助が出るため、美味しいお弁当も食べることができました。

②生成AIによる分析

IT戦略部が用意してくれた環境(Dify.AI)にデータを投入し、いくつかのプロンプトを試しました。具体的なプロンプトは以下のようなイメージです。

アンケート回答者のコメントを共有するので要約してください。コメントを共有します。
(以下、アンケートローデータ(csvファイル等)から、自由記述欄のコメント部分のみコピペします)

この時点でいくつかの要素に整理してくれたのですが、箇条書きの域を出なかったため、次のように投げてみました。

アンケート回答者のコメントを「ポジティブ/ネガティブ」に分類してください

 ↓

ご意見と回答者の感情が紐づいたので、わかりやすくなってきました。
ここから、もう少し掘り下げていきます。

ネガティブな意見の中でも「ユーザーのストレスの原因となる箇所」について、要素をピックアップしてください

 ↓

目的意識を持って命令すると、的を得た答えが戻ってくる、という印象です。
構造化されているので読み取りやすいのも魅力です。
実は人力で分析した時も同じ観点で深堀りをしたのですが、その時の結果とも一致しており、要約力は高いと思いました。

メリデメ比較

「人力で分析」をするときのメリデメは以下の通りです※あくまでも個人の意見です

  • メリット

    • メンバー間で意見交換しながら整理・要約したので、深い腹落ち感を得ることができた

    • ディスカッションをしながら項目間のつながりを整理する事で、本質的なニーズや課題を理解できた

  • デメリット

    • 単純に時間がかかる。データの読み取りと同じくらい、事前の準備はなかなかの手間がかかる

      • 事前処理観点

        • データ分割の手間が大きい。1つのセル(コメント)に複数の要素があると後々処理しづらいため、事前に分解しておく必要がある

          -◯◯ボタンが見づらいので大きくするなど改善してほしい。あと、◎◎の機能はあまり使わないので不要だと思う。
           ↓
          -◯◯ボタンが見づらいので大きくするなど改善してほしい。
          -◎◎の機能はあまり使わないので不要だと思う。

      • ロジ観点

        • 手作業で分類するため、印刷し、カットし、ミーティングルームを用意して、、などロジの対応が必要(平成時代には当たり前にやっていたことではあるが、、、)

「生成AI」による分析のメリデメもまとめました。

  • メリット

    • インプット→アウトプットまで、圧倒的に早い

      • データクリーニングが不要(個人情報等の削除は必須)

      • 数多の事例を元に程よい抽象度に昇華してくれ、非常に効率的に言語化できる

    • 言語化力が高い

      • 人力で行う際、言語化(抽象度の設定や、適切なワーディング)に頭を悩ますことが多いので、非常に助かる。

      • 分析担当の語彙力・表現力に依存せずに、均一な要約・言語化できる

(超超それな!と思ったのでご紹介)

  • デメリット(というか課題?)

    • 要約結果が一方的に与えられるので、腹落ち感を感じにくい

    • 与えたデータ以上のものは引き出せない。

      • コメント内容の抽象度を引き上げ、そこから本質的な課題やニーズを解釈してあげる事はできない。

補足:依頼内容と期待値設定は必須

今回は実務に落とし込めるかどうかの考察が目的だったため、生成AIで分析する手前に人力でデータ分析を行っています。

<再掲でーす>

この工程があったので、生成AIお願いしたい作業範囲と期待値の設定ができたのだと思います。
もし、この工程をすっとばして自由回答データをいきなり分析させていたら迷走していたように感じます。

まとめ

以下、私なりの解釈です。いくつかのポイントを押さえた上で、目的を明確にして活用するのが利用価値が高いと感じました。

  • 押さえるポイント

    • データの基礎集計や事前チェックを行い、AIに何の作業をお任せしたいのか明確にしておく

      • 何を「問」とすべきかは、人間にしかわからない

      • 要約させたいのか、具体的事例をピックアップさせたいのか決める

    • 作業させたい内容を意識してプロンプトを作る

  • 活用方法

    • 顕在化している課題について要約させたり、具体例を抽出させる

    • 人力で分析した時のヌケモレチェックとして使う

    • 報告書を作成する際、語彙力・表現力を一定レベルに保つために使う

最後に

GO株式会社では、一緒に働く仲間を募集しています。
ユーザーの声を聴きながら移動の未来をつくってみませんか?