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引退間近の381系特急やくもで伯備線・山陰本線を往復

山陽本線、伯備線、山陰本線を経由して岡山と出雲市をを結ぶ特急列車「やくも」。やくも号に使用される振り子式車両として知られる381系電車である。
381系電車は登場から40年以上が経過し、2024年春以降の引退が決定している。381系電車は登場時から塗装を何度か変更しており、引退に合わせて国鉄型、スーパーやくも塗装に変更した車両も登場しており、バラエティー豊かである。
今回は、引退間近の381系やくもに乗って伯備線を往復した。

381系特急電車について

381系特急電車はカーブの多い中央線(中央西線:塩尻~名古屋間)のスピードアップを図る目的で登場した。車体をカーブの内側に傾けることでカーブ通過時に発生する遠心力を小さくし、通過速度を向上させる振り子式車両であった。1973年に導入され(特急しなの)、その後1978年に紀勢本線(特急くろしお)、1982年には伯備線・山陰本線の一部電化開業に合わせて導入されている。
車体はアルミニウム合金製にして軽量化、冷房装置を床下に配置して徹底した低重心化が図られた。振り子式車両の導入に当たり地上設備にも対策が施されている。
伯備線を走行する際は振り子式を採用しない車両と比較して+15~20㎞/hで走行することが可能で(速度制限が60㎞/hならば、75㎞/h~80㎞/hで走行可能)、中国山地の山岳地帯を走行する伯備線内の所要時間の大幅短縮に貢献している。特急やくも2号は出雲市→岡山間を2時間59分で走行し、特急やくも号の最速列車となっている。
1982年の登場から40年以上が経過し、車内のリニューアルも施される一方で、自然振り子式車両特有のカーブ走行時の揺れによる乗り心地の改善が急務であった。2024年春には制御付きの振り子式車両273系(ブロンズやくも)への置き換えが決まっている。

特急やくも号の歴史

特急「やくも」は1972年3月に、山陽新幹線岡山開業に伴って岡山駅経由が京阪神・山陰地方中部間の最速ルートとなったことから、岡山駅~出雲市駅・益田駅間を結ぶ気動車特急として運転を開始した。1975年3月には「エル特急」に指定されたが、電車による運転がない列車が指定を受けるのは初めてのことであった。
1982年7月に伯備線全線と山陰本線伯耆大山駅 - 西出雲駅間の電化により電車運転が開始され、益田駅発着の列車を廃止した。1988年には瀬戸大橋線経由の臨時列車マリンやくもとして高松駅発着の列車が、1990年には国際花と緑の博覧会(花の万博)への輸送対策として大阪駅 - 岡山駅間を延長運転した列車が運転された。
1994年12月3日には、「やくも」のうちの速達列車の列車名を「スーパーやくも」に変更したが、 2006年3月18日に「スーパーやくも」の列車名を廃止し、全列車が「やくも」に統一された。2010年3月13日には「エル特急」の呼称が終了されている。

特急やくも9号 岡山(11:05)→米子(13:16)

岡山駅電光掲示板
英語版
岡山駅の留置線から2番乗り場へ入線
貫通路付き。増結にも対応できる。
横から。
側面表示。デジタル式に変更されている。
特急の表示が英語に。

岡山駅から乗車する特急やくも9号は10:58頃に2番のりばへ入線した。
使用される381系は国鉄型塗装の車両であった。入線前から多くの撮影者がホーム上に待機しており、引退が近づきその勇姿を撮影する人の姿が見られた。
この日は6両編成で自由席車両は長蛇の列。指定席、グリーン席を含め満席であった。
定刻11:05に発車した。この先、倉敷、備中高梁、新見、生山、米子、安来、松江、玉造温泉、宍道、出雲市の順に停車していく。
次の停車駅・倉敷駅までは山陽本線を走行する。直線区間が多く100~110㎞/hで高速走行し特急列車らしい俊足ぶりを発揮していた。
倉敷駅手前で山陽本線上りをオーバーパスし、伯備線用のホームに滑り込んだ。大半の乗客が岡山駅から乗車しており、倉敷駅からの乗車はほとんどなかった。
倉敷駅を発車し伯備線は右大きくカーブする。カーブを通過すると徐々に速度を上げていく。しかし、すぐに左へ大きくカーブし車窓の左手には高梁川が見える。この先新見駅までこの川と並走することとなる。高速走行はお預けとなるが、381系は右へ左へ大きく車両を傾けながら走る。振り子装置が本格稼働し始めているのがわかる。山陽自動車道、山陽新幹線をくぐり左手に井原鉄道と出会うと清音駅を通過する。ここから総社駅までは直線区間となるため、スピードを上げるが車両が縦に小刻みに揺れる。総社駅を通過すると再びカーブが続く、豪渓、日羽、美袋(みなぎ)、備中広瀬を通過し倉敷から23分、11:39に備中高梁駅へ到着した。この間もカーブ区間では速度を落とし、直線区間やトンネルでは100㎞/h前後までスピードを上げて駆け抜けていた。
備中高梁から先は一部区間を除いて単線となる。徐々に山々が険しくなり、曲線区間がほとんどなり80~90㎞/h前後での走行となった。木野山、備中川面をゆっくりと通過し、途中の方谷駅で上りのやくも号と行き違いのため運転停車する。井倉~石蟹間は伯備線の電化に合わせてトンネルを貫く複線へと線路変更が行われている。再び単線区間となり、新見駅12:07に到着した。
新見駅から先は伯備線の難所を越えていくことになる。駅出発後は早速上り勾配に差し掛かり、80㎞/h前後で山を登っていくのを感じる。新見駅の先まで部分複線となっている。布原、備中神代は駅入線時に45㎞/hの速度制限を受けるため低速で通過する。備中神代駅は芸備線の起点でもあるが、芸備線と別れを告げ、中国自動車道と並走し、伯備線の最高地点へ向け曲線区間を縫うように走り続ける。次の足立駅では上りのやくも号との行き違いのため運転停車するが、上りのやくも号が遅れていたため3分ほど遅れて同駅を発車した。新郷駅で岡山県最後の駅となり、谷田峠で鳥取県に入る。この峠は分水嶺ともなっており、この先は日本海へと注ぐ日野川と並走していく。
トンネルを出ると鳥取県最初の駅・上石見駅を通過し、12:43に生山駅に到着した。

中国山地の難所を越え生山駅に到着。

この先は日本海へと注ぐ日野川に沿って走行する。途中の根雨(ねう)駅で特急やくも16号と行き違いのため停車する。
生山と根雨はともにやくも号の停車駅であるが、およそ1時間おきに交互に停車するパターンとなっている。
この辺りから険しい山々から少しずつ田んぼが拡がり、列車もスピードを上げていく。武庫駅は一線スルー駅のため高速で通過、江尾(えび)、伯耆溝口、岸本と順に通過していく。伯耆溝口から岸本間で車窓右手に山陰の名峰・大山が見えてきた。米子自動車道の米子本線料金所が見えた先が米子ジャンクションでそこから分かれた山陰自動車道をくぐると左にカーブしながら減速し、山陰本線と合流し伯耆大山駅をゆっくりと通過した。
ここからは山陰本線を走行する。
伯備線の電化に合わせて伯耆大山駅から西出雲駅まで電化されている。また、安来駅まで複線となっている。久しぶりの複線を走行しながら東山公園駅を通過し、4分遅れで13:19に米子に到着した。

米子駅に4分分遅れで到着。乗務員も交代した。
米子駅
スーパーまつかぜは益田、米子から鳥取を結ぶ。鳥取・島根を結ぶ重要列車。
歴史を感じるこ線橋に書かれたフレーズ。様々なドラマが米子から生まれたことだろう。
境線は米子駅の0番ホームから発車する。
境線を走る列車はラッピング車両。

伯備線について

伯備線(はくびせん)は、岡山県倉敷市の倉敷駅から新見駅を経て、鳥取県米子市の伯耆大山駅に至る西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線(幹線)である。

全線が開業してから、陰陽連絡路線としては重要視されていると言い難い状況だったが、山陽新幹線の新大阪駅から岡山駅間の先行開業が決定すると状況が一変する。
岡山駅と米子・松江・出雲市方面を短絡するルートとしてこの路線に白羽の矢がたったのである。
まず、急行「だいせん」を前身とする急行「おき」(京都駅 - 岡山駅 - 出雲市駅間)の格上げでキハ181系による特急「おき」が新大阪駅から伯備線経由で設定され、山陽新幹線岡山駅延伸開業後の1972年に、岡山駅発着の特急「やくも」に立て替えると共に、優等列車が増発された。
さらに一部区間の付け替え・複線化などの改良整備が行われ、1982年の直流電化とともに振り子式電車 381系を投入する。
改良が行われる一方、険しい中国山地や新見駅周辺の阿哲渓谷を貫くため単線区間や急カーブも随所に残り、振り子機構を持たない普通列車は備中高梁駅以北においてしばしば60km/h制限を受けるなど高速化の障害となっている。

特急やくも16号 松江(12:01)→岡山(14:39)

翌日、やくも16号で岡山へと向かう。
乗車したのは松江駅12:01発の列車。リニューアルされたゆったりやくもと呼ばれる車両でこの日は6両編成であった。
時刻表では1号車にパノラマ型車両が連結されるとの記載があったが、車両変更によりパノラマ型車両は使用されていなかった。

松江駅改札口の電光掲示板。スーパーおきは新山口から運行されている。
どうやら駅名標は撤去されたようだ。
今は無き快速アクアライナーの吊下げ札。出雲市から益田への無料の速達列車であった。
ゆったりやくもで岡山へ。松江駅。

松江駅を定刻で発車した。
この列車は安来、米子、新見、備中高梁、倉敷、岡山に停車する。かつてのスーパーやくもを彷彿とさせる停車駅たが、所要時間はやくも号と変わらない。停車駅が少ない分、乗降客も少なくなるので、快適に過ごせた。
米子駅で一定の乗車があった。
新見まで1時間11分ドアが開くことはない。伯耆大山駅で山陰本線に別れを告げ、伯備線を南下する。往路と比較してスピードが乗っている気がした。伯耆溝口から

山陰の名峰・大山。別名は伯耆富士

根雨駅でやくも9号の行き違いのため運転停車する。やくも号との行き違い箇所は上下で固定されている。特急停車駅の生山はゆっくりと通過し、上石見を通過後は谷田峠を越える。倉敷まで下り勾配が続き、山を下るように走行していく。足立でやくも11号の交換待ちで停車する。
足立を出発してお手洗いに向かったが、381系自然振り子式車両特有の左右の横揺れを移動中に思い知らされる。横揺れが大きいため、どこかに捕まっていないと移動もままならないのである。カーブで極力減速することなく走り続ける一方で乗り心地の改善が急務であることを実感した。
そんなことを考えつつ、備中神代、布原を通過し13:36に新見に到着した。米子からの約1時間強の長い運転であった。
1分の停車で新見を発車し、自然振り子式を駆使しながら列車は下っていく。そして方谷で運転停車し、やくも13号とすれ違う。

方谷駅でやくも13号と行き違いのため停車。運行パターンにも慣れてきた。

備中川面、木野山と通過し備中高梁に到着。ここから複線区間となるが、下りと比較して直線区間が多いのか100km/hを超えるスピードで走行している。
電化に合わせて倉敷から備中高梁間は直線、トンネルを貫く線路変更が行われている。並行する国道180号線を走る車をどんどんと追い抜いていく。
倉敷を出発し、山陽本線を気持ちよく走行し岡山へ向けてのラストスパートである。倉敷からおよそ11分で終点の岡山へ到着した。松江駅から2時間38分の旅となった。

岡山駅3番のりば。引き上げ線へと回送され、やくも17号として出雲市駅へと折返した。

リバイバル編成 スーパーやくも色

米子駅。リバイバルに合わせて表示幕もスーパーやくもとなっている。
キハ126系とのツーショット
紫色の塗色とローマ字でSUPER YAKUMOと表記
パノラマ型車両。1号車がグリーン車指定席として発売される。

おまけ

リバイバル記念硬券
硬券で特急やくもを堪能

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