地元=故郷ではないよね、って話

連休中、地元の友人と久々に遊んだ。
彼との付き合いは長い。小学二年生の頃からなので、かれこれ20年弱といったところか。

そんな彼がこの度結婚し、地元に家を建てるらしい。
それ自体には何の意外性も感慨もない。婚約したというのはそこそこ前から聞いていたし、タイミング的には何ら不思議もないからだ。
普通におめでとう、それだけだった。

「へー、おめでとう。地元に家建てるのか。いいじゃん。」と、取り敢えず返してみる。
個人的には相容れない価値観だが、新生活の門出を迎える人間に対してそれを表に出すのはさすがに人としてどうかと思うのでそういう返事をする。

「お前は地元戻ってこないの?なんだかんだ地元が一番だろ。」
と言われた。その場ではスルーしたが、私の小中学生~現在にかけて一貫して地元を否定するスタンスを見てきたであろう彼から平気でそんなことを言われたことに、小さく裏切られた気がした。

理由とかどうだっていい。私は小学校の低学年の頃に引っ越してきた頃から、あの街が嫌いだった。それは今でも変わっていない。
理屈もどうだっていいし、認知が歪んでいると言われようと関係ない。
父親の転勤先があの街でさえなければ今でも家族は誰も死なずにそこそこの暮らしができていて、私もこんなに拗らせた人間になっていないと本気で信じている。

私にとってあの街は地元であったとしても、故郷ではない。
ただ過ごした時間が人生で最も長く、その場所について知っていることが多いというだけで郷愁なんて微塵も感じない。

それよりも過ごした時間は短いし、記憶がおぼろげであっても「あの時、あの場所にいつか戻りたい」と思える故郷は幾つかある。

地元が一番?
それは地元=故郷という図式が運よく成立している人たちの理屈だ。
そして残念ながら私はそうではない。

私の中では故郷とは、その土地や、かつてそこで過ごした時間を愛おしく思い、時おり希ってしまうような場所のことを指す。単に過ごした時間が長いとか幼少期を過ごした場所のことを言うのではない。

子供の頃からそれなりに近い距離感で過ごし、大人になってから金もロクになかったのに地元を出て行った私のことを間近で見ていたはずの彼から、よりにもよって私に向かって軽々しく「地元が一番だろ」と言われたのがやっぱり少しショックだった。

こうやって、ますます地元からも地元の友人からも心が離れていくんだなぁ、などとぼんやり考えている。


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