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だから、ふつうの先生が「国家資格キャリアコンサルタント」を取得した。

高校生へのキャリア支援を考えるシリーズ第1弾。キャリア教育の専門家でもない中高一貫校の教員が「国家資格キャリアコンサルタント」の取得を目指した経緯について綴りたいと思います。


1.進路指導のモヤモヤ

今まで塾講師として4年、教員として8年間、生徒の進路やキャリアについて、延べ1,000人以上、向き合ってきました。

しかし、教員しか経験してこなかった自分にとって、今まで生徒との対話の中で、たびたび「モヤモヤ」に直面しました。

小手先の情報は提供できるし、多少は後押しもできたはず。でも。

本質的に生徒の主体的なキャリア意思決定を、どれだけ促せていたのか・・・。

そんな時、目に入ってきたのが1月に起きたこの事件。

絶対に起きてはならないこと。ただ、ネットの情報だけで真意は分かりませんし、誰かを悪く言うつもりはありません。

日本の受験システムや、受験生に寄り添う環境の整備は適切だったのか。大人として、反省する必要があろうかと思っています。

何より、進路指導に関わる一介の人間として、決して他人事ではないな…と背筋が凍りました。



2.親の次に身近な大人

スクール事業を行うバンタンの調査によると、「就きたい職業について、親や先生から否定的な言葉を言われたことがある」に約半分がYESと回答するという結果に。

親心から「転ばぬ先の杖」を差し出したいという心理は十分に理解できますし、私も先回りしてしまったことが何度もあります。

一方、否定するよりずっとマシとは思いつつも、ただ「無責任に肯定するだけ」というのも、生徒の可能性を十分に引き出し、メンターとしての役割を果たしているかと言われれば疑問です。


また、高校を卒業したZ世代346人に「高校時代、進路決定の際に参考にしたものは?」とアンケートを取ったところ、「教員」と答えた人の割合が最も高いという結果に。

同アンケートでは「高校時代には特定の数少ない価値観から自分のキャリアを選択せざるを得なかった」「大学の先のキャリアを考えることなく大学選びをしてしまった」という共通する意見も。

高校時代、進路決定の際に参考にしたものは?(n=346)

情報が溢れかえる社会においても、教員は未だにキャリア支援で大きな役割を担っています。いかにして生徒に寄り添うことができるのでしょうか。



3.多様化するキャリア

いわゆる「進学」指導には、「型」や「鉄則」があります。そして、ある意味では高学歴→大企業という、いわゆる成功ルートが存在してきました。

教育の成果が一朝一夕には可視化されづらい学校現場において、(大義は別としても)大学合格実績は分かりやすい指標であることは間違いありませんし、「数字」についてはメディアも騒ぎ立てています。

生徒が望む先に進学できるよう、力をつけるサポートを行うことは大切なことではありますが、「数字」が目的化することは避けねばなりません。

また、価値観が多様化し、人生が3ステージ制でなくなったいま、とりあえず次のステップに送り出して終わり!で、十分と言えるのでしょうか。

リクナビNEXTより



4.武器としての自己決定能力

では、変化が激しく先が見通しづらい世の中で、キャリア教育の観点から生徒に保証すべきものは何でしょうか。文科省は、キャリア基礎・汎用的能力として「4つの力」を挙げています。

文科省資料より

もちろん、これらすべてが大事になってくるのでしょうが、その中でも特に大事なものは「自己決定できること」ではないかと思っています。

自己決定するためには、自分自身の興味や関心、能力や適性、価値観、社会から求められていること、これらすべてを総合的に理解し、キャリアビジョンを設計できる必要があるからです。

神戸大学の調査では、学歴や所得よりも「自己決定」が幸福度との関連性が高いという結果が出ています。

図:主観的幸福感を決定する要因の重要度(標準化係数)


9年前、苫野一徳先生の著書『勉強するのは何のため?―僕らの「答え」のつくり方』を読んだ際に「納得解」という考え方を学び、これこそが生徒が学校を巣立ってからもずっと使える、主体的な意思決定を保証するマインドセットだ!と腹落ちしました。

しかし、「納得解が大事!」と声高に叫んできたものの、生徒が納得できる決断をするために、体系化された方法論を提示できずにいることに気付きました。



5.巨人の肩に乗る。目線を合わせる。

育児休暇中、そんなことを考えていた折に、厚生労働省公認の国家資格キャリアコンサルタントの存在を知り、ひょんなことから資格取得を目指すことに。

実は、日本では「専門のキャリアカウンセラーがいる学校に通う15歳生徒の割合(%)」がOECD最低の4.4%(2018年)となっており、他国と比べると生徒のキャリア支援の環境には大きな課題を抱えています。

キャリアガイダンスの担い手(Newsweek Japanより)

ただでさえ、日本の学校教員は世界的に見ても比類なきほどに忙しい上に、教職課程で専門的に学ぶわけでもないキャリア支援まで担っており、その負担は途方もないものになっているのが現状です。

カウンセラーは多重関係を持たないことが望ましいために、理想を言えば、第三者としての専門のキャリアカウンセラーが設置されることが求められています。

しかし、予算の問題などから、なかなか普及していないことを考えると、まずは現場の教員がキャリアカウンセリングの基本的な考え方を知る必要があるのではないかと考えました。

この春、育児休暇を終えて、高校1年担任・進路部を拝命しました。

キャリアや心理学の諸理論を通して巨人の肩に乗りつつも、いざ生徒たちと対峙するときには、かけがえのない一人の人間として「目線を合わせる」ことが必要だと痛感しています。


資格取得は、あくまでスタート地点に立っただけ。

すべての高校生に、自分らしい選択をするためのマインドセットとスキルを届けたい。ともに歩んでくださる方、ぜひ、ご連絡ください!

noteでも、生徒のキャリア支援に向けての情報を細々と発信できたらと思っています。

ここまでご覧いただき、有り難うございました!

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