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「エヴァが終わって、俺たちの10代もついに終わった」みたいな事を言ってる人たちがマジで気持ち悪い。(シン・エヴァンゲリオン劇場版:||ネタバレ感想)

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||見てきました。

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警戒しないでほしい、大前提として広い意味では非常に満足してるし、劇中何度も落涙してます。
エヴァと庵野さんの大ファンである事を認めるのはやぶさかではないです。
見る前の「まあ祭りだし、つまらなくてもいいや」くらいのテンションだった自分(期待しすぎないように自己防衛的になってただけだけど笑)からするとホントに見てよかったなって心から思ってます。


おそらく”エヴァがほんとに終わった”というか”エヴァが(庵野監督が?)この領域まで到達した”ってところに感激してる人がいっぱいいるというか、俺自身も見てる間の言葉にしきれない感情の高まりみたいな部分はそこに起因してるとは思うんだけど。
あとそりゃファンなので、各キャラの救済シーンは映画としての不細工さを通り越して、ファンサービス的な受け取り方になってしまうけど、それでもいっぱい泣きました。

ただまあ、まだ公開されてそんなに経ってないから、絶賛一辺倒な感想しか出てきにくいのもあるんだろうけど、自分の中の”違和感”がずっと頭を駆け巡ってて。
引き裂かれそうというか、このアンビバレントな感じはエヴァ感ですね。俺だけか?


※追記

大事な事を書き忘れてました。Twitterには載せたんですが、この文章は映画の内容を順番に追って考察する、みたいなものではなく、割と本気で気持ちの掃き溜めです。

ただ、今作は今までで1番分かりやすいエヴァ(それの是非については後述してます)なのもあり、初出の固有名詞もその言葉自体の意味が分からなくても問題ないような作り(個人的にはいい事だと思ってます)だし、今までファンの間でまことしやかに囁かれてきたいわゆる"ループ説"に関しても、公式ポスターで堂々とネタバラシしてるようなもんなので(thrice upon a time、SF小説家であるジェイムズ・P・ホーガン氏の作品「未来からのホットライン」の原題、タイムトラベルもの)、これも飲み込んでる事を前提としてます。

考察もいいけど、本質的に面白いか面白くないかはそれで変わったりしないんだからみんな、あんま気にしないで自分の感想を信じていいと思う(?)以上。笑



ほんとは無邪気に「あそこはこれっぽいよね~!!」とかだけ言ってたい


実際これやってるとキリがない。

他の人の作った話も込みで自分のユニバースに”fixしながら”組み込んで丸く収めちゃうって
「X-MEN: フューチャー&パスト」(俺ほんとフューチャー&パスト好きだな)

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ガキ共ちゃんと大人になって働けって意味での「レディ・プレイヤー1」みたいだね~(もちろんオーソドックスなセカイ系話の帰着ではベタなパターンの一つではあるけど)とか。

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話のスケールもやりたい事も全然違うけど『デッドプール2』のエンドロール後のおまけを思い出すなーとか

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ガンダムで言ったら、最初の牧歌的な生活のジブリごっこ感+やっぱり他の制作者の作品もまとめて総括しちゃった「∀ガンダム」みたいだなーとか。

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庵野監督、今回のエヴァは宮さんに見てもらえるといいね。


あとこれまた話の内容も、向かってく方向も全く違うけど”止まっていた時間を前に進める”って意味で「トレインスポッティング」からの「トレインスポッティング2」を感じたり。これは同意の得難い感想だと思うけど笑

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個人的にダニーボイル作品ってほんとに当たりはずれ多いと思ってて、その中でも名作扱いのトレインスポッティング、何となくスタイリッシュなかっこいい映像でごまかされてるけど、やっぱいい話じゃなくない?っていう”いい話じゃなくない?”の部分を突き詰めて、劇中年数と同じだけ年齢を重ねたオリジナルキャストを使って、20年越しに主人公たち一人一人の青春にケリをつけるって構図を、何となく今までのエヴァ現象も含めた今作に重ねてしまった。


もっと表層的な部分で言うと、神話的なディテールで荘厳感、宗教観、要するに「なんかかっけえ」を身にまとって神殺し話をしてるんだけど、話を紐解いていくと結構しょうもない内輪揉めであるって意味ではザックスナイダーの「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」とか。

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角が立つ言い方してるかな?でも俺結構ザックの作品の中で好きな方です、エヴァが好きな理由に近いと思う。
あとはそうだな惑星大戦争のテーマがとか…

いや話が長すぎる。こうやって無邪気に話そうと思えばいくらでも話せるんだけど、どうしても気になってしまって、何ならイライラしてしまうところも結構あった。本題。


ゲンドウ問題

基本的に一見さんお断りな作りであることはもう面倒なので省略して、今作の話をする上で切っても切り離せない"ゲンドウ問題"、これデカいと思う。こっから本格的にネタバレなんで気を付けてね。

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「父親へのコンプレックス」が庵野監督作品に共通して描かれる事が多いのは皆さんご存知だと思うけど、個人的にはこの話は俺のメインテーマでもあって、非常に共鳴するポイントなんです。
”家族をめちゃくちゃにした、倫理的にもとても理解し難い人物”でもあり”紛れもないたった一人の父親”でもあるっていう。
子供の頃は徹底的に拒絶してた自分も、歳を取っていくうちに気持ちも変わっていって、まさに今作のシンジ君のように「何を考えていて、どうしたかったのか知りたい」と感じるようになったのも全く一緒。


だからこそ、どうしても気になってしまった。

今作のゲンドウ”心の決壊”が割と早くない?

もちろんエヴァにおける精神世界でのやりとりは、そのまま現実での心情吐露とイコールではないというか、現実で面と向かってこのやり取りが出来るわけではない、とか補完が進行中だからいわゆるATフィールド(心の壁)が融解しつつあるのでは、とか汲み取る気があればいくらでも汲み取れるんだけど


シリーズを通してゲンドウとシンジ君の断絶ってかーんなり根深いものとして描かれて来たはずだと思うので、やっぱり今作の終盤までゲンドウはちゃんと登場しない、にも関わらず出てきた途端割とすぐなんでもかんでも心情をセリフで”勝手に”説明し出すって展開は呆気にとられた。いや、これも演出的な意味でのエヴァイズムなのは分かるんだけどね…
理屈としては前述のものがあるんだとしても、結局テーマに対して浅い描写になってしまってるって、それは失敗してるとも言えるのでは…?ってのは言い過ぎでしょうか…

今作の終盤って完全に旧劇場版「Air / まごころを、君に」のやり直しを、貞本漫画版の設定をうまく取り込んで、旧作をfixしながらやってる感じだと思うんですけど

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もちろん「Air / まごころを、君に」が完璧だとは少しも思わないし、説明不足というより説明することを逆張り的に放棄した作品だと思うから、理解できない人がたくさんいるのも分かるんだけど、でも今作のこれは逆に

「Air / まごころを、君に」で説明しなかった空白の部分を全部セリフにして、ガチガチに埋めていきました!

みたいな感じになってませんか?ゲンドウが勝手に心情吐露する展開の唐突さと相まって、余白がない作りが好みじゃない、というレベルじゃなくてちょっとアホっぽくなってる気もして辛かったっす。
いや、アホみたいな話なんだよ、と言われればそれまでなんだけど。

今作の白眉的なセリフ

『そこにいたのか、ユイ』

もちろんここ、俺は嗚咽が出るのではってくらい泣いてたんですけど。
やっぱこのシーンの直前までは、ゲンドウは態度としては毅然とさせて(そうすると限りなくAir / まごころを、君にみたいになるとか言われそうだけど笑)、心情吐露させるにしても、他のキャラに代弁させるか、もしくはもう引っ張って引っ張って最後に…

心情ゲロ〜〜〜〜〜〜〜!!

とかの方がここの感動ももっとグッと増したんじゃないかなと、すごく”欲しかったシーン”なだけあって食い足りない…と思ってしまってます。


シンジ君問題

それでいて、この食い足らなさの原因を生み出してるのは、何を隠そうもう一つの柱”シンジ君問題”じゃないかしら。(問題って言いたいだけ)
今作のシンジ君が”大人の顔”になったシーンは言わずもがな、ホロリときました。
多分アニメ作品でシンジ君が「感情をコントロールした状態で、しっかり現実と向き合う」って表情をしたのはここが初めてだったからかな?めっちゃグッときました。

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ただ、やっぱこの”大人になる”に至る過程や要因の描き込みがめちゃくちゃ薄くないか?と思ってしまったのは俺だけでしょうか…

確かに時間だけはやたらかけてた序盤の”現実の世界”での営み描写(ここの描写は全く別のベクトルでいいな!と思ってるポイントでもあるから後述するけど)も、庵野監督がエヴァと向き合うまでのリハビリを表してるとか何とか言われてますけど、それがシンジ君のドラマ的成長には繋がっていってないし、どっちかっていうとレイ主体で進んでいきますよね。

シンジ君がレイや街の人の"生活"に絡みだすのがかなり遅いから、心境の変化もただの"展開"としてしか機能してないような…

それこそレイってずっと”母性”を結果的には体現するようなキャラになってるんじゃ?って思ってて、シンジ君の母親のクローンでもあるんだから、なんか過去作いっぱい引用したりしてもいいので、もっと象徴的に死を盛り上げてもよかったのではと。
あの死に方で”きっかけです”って言われてもあんまピンと来ない。

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ケンケン?の亡くなってしまった父親への後悔を吐露するシーンはあるけど、もっともっと”父と子”的なモチーフを散りばめまくってもよかったんじゃないかと思ってしまう。
わざわざアスカから色々オミットして”ああいうキャラ”にしてからシンジとゲンドウの対決に絞ったんだから、とも。

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シンジ君の成長の要因が弱いって事は、それ即ち『問題あるのはゲンドウなんで!はい心情ゲロ〜〜』の唐突さを際立たせてるなって思いますね…

俺らはもちろん庵野監督の事もエヴァの事も話の行く末もある程度分かってるから汲み取れるけど。まあだからファン向けってか見てきた人向けなのか。モやっちゃいますね。


盲目的な絶賛方向問題

最後に今作の絶賛の方向性の違和感から来る悪感情、タイトルになってる件ですけど。
旧作版の時の庵野監督自身の精神状態、「オタク同族嫌悪」が行くとこまで行き過ぎて、一種露悪的にアニメとかエヴァを見る大人そのもの的な構造を見せちゃうようなメタい作り視聴者を突き放すような演出実写パート。
全部今作でも拾ってますよね。(というか自己言及的な意味でも集大成にしたかったのもあるのか)敢えての部分もあるでしょう。

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今作が以前のような露悪的な意味がフルテンでこもってる、とは言い難いですけど本来の意図から考えると、これをありがたがって「すごいものを見た」とか「俺も卒業しよう」とかなんとか言ってるのって


きしょくねえか?


ごめんなさい汚い言葉を使ってしまって…
例えばエヴァに影響を受けたと思しき作品たちは2000年以降、いっぱい出てますけど、今作2021年に公開されたエヴァの”人間の一人一人の可能性を信じて(碇親子が主体になりすぎて少しぼやけてるけど)、絶望せず現実の世界と向き合っていく”って結論、いっぱい導き出してる作品あると思うんす。
それこそ仮面ライダーアギト。俺はここ数か月、エヴァの話をする人全員にアギトの話をしすぎて嫌われてきてるという問題もあります!

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破の時点で今更超分かりやすい”セカイ系”的な話に引き戻した時点で、「ああ…」って感じだったし、もちろんその後の展開も含めて内容としてこうなるのは必然、まっとうだとは思うけど、全然使い古されてるものというか。
てかみんな大好き「君の名は」だって最後のオチは”目の前の現実と向き合ってセカイじゃない、世界と向き合っていく”って話になってたじゃん?!祝脱童貞新海誠的な!

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だからあれに熱狂してた年齢層を考えたら、やっぱ今更「10代が終わった…」とか言ってる人ってどれだけ幼児的な感性で生きてきたんだって思ってしまうし(すいません…)、やっぱこの結論そのものを手放しに、ある種盲目的に大人が祭り上げる感じにやっぱノレなくてキツいなと思ってしまいます。これをカルトと言うのか?!
エヴァがちゃんと着地した、って部分がって意味なのは分かるんですけどね…着地の仕方自体はめっちゃ今更感かつ普通じゃんって。


あと、もはや筋の通ってない怒りだけど
アニメの「SSSS.GRIDMAN」ってありましたよね。あれの終わり方って、今作と同じ”実写パート”終わりで。

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個人的にはこの作品の着地、SSSS.GRIDMANの設定的にも、原典が特撮実写ドラマ「電光超人グリッドマン」であるって意味でもホントに意義のある素晴らしい終わり方だと思ってて。

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「レゴムービー」とか「インサイドヘッド」のビンボンにこもってるメッセージに近い、何なら今作のエヴァより好きってくらい有意義な実写パートオチで大好きなんですよね。

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ただ当時アニメファンの間は割と不評意見が目立ってたというか、「2018年にもなってまだエヴァ引きずってるのかよ」とか何とか言われてましたよね。
この背景には「SSSS.GRIDMAN」の制作会社TRIGGERはガイナックスのグレンラガン組が独立してできた会社なので、そういう意味でガイナックス片割れ組としてエヴァが引き合いに出されるのはわかるんですけど。


いや、新作のエヴァならいいんかい!


っていう行き場のない怒りも感じましたね。


愛ゆえに

色々言っておいて最初に戻るけど、前提として満足、好きだって言えるっていうのは
前半の”ニアサー後、崩壊した日常の普通の人の生活、営み”シーンの登場が大きいです。
あえて乳飲みシーンを見せたり、今まで庵野さんが散々出してた”生物のシステムとか生そのものに対する嫌悪感”を克服したのかなって。
庵野さん肉とか魚食べないんですよね確か。野菜もできれば食べたくないって笑
分かりやすい例で、使徒とかエヴァの機体とかシンゴジラの変態の気持ち悪い感じ、もしくはトップをねらえの宇宙怪獣の生物としての仕組み(こっちはリドスコのエイリアン、プロメテウス感もあるか)とか。

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俺はこの時点で庵野さんの作家的成長を感じたし(偉そう)、今後の展開が良い意味で予測出来て安心して楽しめました。
先程、庵野さん自身のリハビリって揶揄するような書き方したけど、『時間はかかるけど、必ず前に進める』んだよと。それはある意味真実でしょうし。あー、内向きじゃなくてちゃんと外向きの話にする気なんだなーって(3.11以降のメタファーという意味でも尚更)。泣いてますよそりゃ。


庵野さん、エヴァ片付けちゃってこの後何して生活するんだろうか
シン・ウルトラマンは脚本だけだし何か不安というか
もう樋口真嗣さんと金子修介さんに仲直りしてもらって(今は仲直りしてるのかな笑)3人で


シンゴジラVS平成ガメラ


とかやってくれないかな
これだけ偉そうなこと言ってきて、結局俺が一番ガキですね。

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おわり。

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