西巣鴨短歌、夏
甘美さに背中粟立つ焼けた肌アスファルトには腐った向日葵
絡み合う砂に塗れた影ふたつ仮設シャワーの陰に隠れて
いきり立つ火柱の如き激しさで砂が詰まった爪を立てられ
日の熱が微かに残るボンネットくみしだかれて月を見ていた
口移しぬるいビールの気が抜けて舌をなぶるはあなたの残り火
ひと夏中カビが生えてしまうまで敷きっぱなしの布団の上で
濡れそぼる男の肉を嗅ぎたくて何も言わずにエアコンを切る
乱暴に掻き回すほど濁りゆくふたりの肌は水飴のよう
甘い肌貪るふたり気がつかぬ溶けたアイスにあたりの3文字
這いつくばり餌を欲っして舌を垂れあの夏の我さながら犬で
太陽になぶられ焦げゆく合鍵と投げ捨てられず立ちすくむ我
空っぽの愛を囁く無邪気さは花火で蟻焼く子供にも似て
テキーラの琥珀が見せた陽炎か我らは飽かずまた夏を乞う
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