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Ep.6 Tenerife #3

夜の帳が下りてくる。先刻までのギラついた日差しが嘘のように冷たい風が首元を通り抜けてゆく。

砂漠の天体ショー

太陽が遠くの岩に隠れ始める頃には、白く太陽に照らされていた岩たちは茜色に。この厳しい環境によってカラカラに乾いた岩たちは無地のキャンバスのように染められる。茜色に染まった岩にそのまま黒いレースをかけるように周囲は暗くなっていった。
砂漠に転がる岩たちはこのサイクルを何万年、いや何億年も繰り返してきた。半永久的に続くこのサイクルの中のある1サイクルを写真に収めようと何枚もシャッターを切った。自然風景を撮影していて、僕が撮影した1枚の写真はいったい何の意味を持つのか正直わからなくなる。
しかし、夜の世界に変わっていく様を目の前にしてシャッターボタンを押さずにはいられなかった。

刻々とテイストが変わっていく
もちろん僕の他にもフォトグラファーはいる
その時を待つ
一番星だ

つくづく星撮りは、星をメインの被写体として活動していない限り、狙っていくものではないと感じる。2022年11月22日、テネリフェ島は新月期だった。特に月齢カレンダーを見て予定を立てていたわけではなかったし、天気予報もまったく気にしていなかった。
テイデ国立公園はテネリフェ島の高地、しかも砂漠地帯に位置しているので、空気はカラッとしており、その晩は雲一つ見えなかったのを覚えている。

日中歩いた道を改めて歩く。
観光用に整地された道のせいか、明かりのない暗闇の中を歩くのは全く怖くなかった。しかし、目が慣れてくると周りを巨人のような大岩に囲まれていることに気づく。日中にはなかった迫力が、どす黒い大きな影から放たれる。
星景写真を撮影するときは周りの風景をどのように絡めるかが大事だと僕は考えている。天の川を写真の中でメインとするときに、天の川の存在感を邪魔するように前景を入れるのもよくないし、逆に天の川が目立ちすぎて周りの風景の意味がなくなってしまうような構図もよくない。何か、地上と宇宙とのつながりを感じさせるような作品を撮影したかった。
シャッターを切るまでどのような構図で撮影できているか確認できないため、何度も数秒間シャッターを切っては確認するという作業を繰り返した。納得いく構図を切り取るために何度も三脚を移動して、雲台の角度を調整してという作業は悪天候時は本当に辛いものではあるが、幸いにも天候は全く問題なかったため、バッテリーとメモリ容量が続く限り延々と撮影できる気分だった。

岩はおもしろい
見方を変えたら人にも動物にも見える
おやすみなさい




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