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CADDi シリーズC資金調達にあたって ~これまでとこれから~

キャディ株式会社にて取締役/コーポレート本部長をしております芳賀と申します。キャディは2017年11月に創業した設立6年目の、製造業サプライチェーンの変革に挑んでいる企業です。

この度、2023年7月5日に、シリーズCラウンドにおいて、総額118億円のエクイティ資金調達を実施したことを発表いたしました。今後も、グローバルの製造業領域において事業を展開し、調達領域を皮切りに、製造業サプライチェーンの変革に挑み、製造業のデジタル化におけるデファクト・スタンダードの構築を目指していきます。
今回の資金調達において、資金調達の全体戦略構築、Pitch Deck作成、交渉、サイニング、クロージングまで全体をリードいたしました。

このnoteでは、今回シリーズCの資金調達を実行したこのタイミングで、改めて「キャディの現在と今後目指す世界」、「どのような発想で今回の資金調達を行ったのか?」、「キャディのコーポレート本部の現在とこれから」についてお話したいと思います。

1. キャディの現在

まず初めに、キャディのビジネスですが、製造業サプライチェーンの変革に挑むとの観点のもと、製造業のお客様の部品調達を最適化するサービス『CADDi MANUFACTURING』(以下、MANUFACTURING事業)と、図面データ活用クラウド『CADDi DRAWER』(以下、DRAWER事業)の二つの事業を提供しています。
グローバルでは米国、ベトナム、タイにおいて事業展開しています。

キャディのビジネス概要

約2年前の2021年8月に実施したシリーズBからの大きな事業ハイライトは以下の通りです。

  • 『CADDi MANUFACTURING』事業

    • 顧客網:大手の製造業顧客を中心に拡大、現在では国内の産業系メーカーのトップ20社のうちの75%と取引関係があるまでに

    • 業界:各種装置メーカー(半導体製造装置、工作機械、建設機械、食品機械、他)やプラント(水処理プラント、他)へと拡大

    • 地域展開:2022年にベトナム、タイに展開し、テクノロジー開発+サプライ網開拓拠点として拡大。2023年には米国進出し、MANUFACTURING / DRAWER両事業の顧客拡大を行う(米国展開にあたっての背景はこちらの弊社代表加藤のnoteもぜひご覧ください)

  • 『CADDi DRAWER』事業

    • 「図面データ活用クラウド」として2022年6月にローンチして以降、1年でMRRが10倍超まで急速に拡大

    • 製造業メーカーと加工会社の双方に導入を行う

    • DRAWER事業単体の従業員数も100人強に

  • 会社全体

    • 従業員数590名(私がキャディにジョインした21年4月時点では約100名だったので、約6倍の規模)

    • 海外拠点の人員数:約100名

    • 累計資金調達額:217億円(エクイティのみ)

    • 新たに取締役会を設置(2023年6月)

シリーズBからの成長ハイライト

2. シリーズC資金調達について

上記のような事業拡大を続ける中で、今回、さらに次のステージに向けた成長資金を確保するために、シリーズCラウンドとして118億円の資金調達を行いました。シリーズCの調達額としては日本国内において最大規模、また米国シカゴに拠点を置く会社としても今年最大規模のエクイティ調達のようです。

資金調達額の背景と考え方

今回の資金調達においては、マクロ市場環境も不安定になっている中で、将来の成長に必要な資金をしっかりと確保するということを最も重視して、調達活動を行いました。

資金調達においては常にバリュエーション(=企業に対する価値評価額)と資金調達額、そこから導かれる株式の希薄化率(=調達額÷バリュエーション)のバランスが考慮すべき重要な要素となります。
今回の資金調達は、世の中の成長企業(グロース株)に対するバリュエーションが2021年後半のピーク時から約半分以下となっている環境下で、前回2年前の弊社シリーズBラウンドに比べて調達環境としては相対的に厳しく、その中で適切なバリュエーションと資金調達額を模索することが一つのチャレンジでした。

本ラウンドは22年11月以降から本格的な活動を開始してきました。CADDi全体を俯瞰した時に、DRAWER事業は2022年6月より本格的に開始して成長投資をしていくフェーズであり、同時にMANUFACTURING事業も海外展開を進めていく状況にありました。そんな中、事業の「成長可能性」と「リスク」の双方を考えたときに、十分な資金枠とそれに伴う経営の自由度を確保すること、そして会社としてレバーを持ちながら中長期の成長の土台を確保することが最も重要であるとの判断に至りました。

資金調達活動中にも、地政学的なことも含めてマクロ環境を揺さぶるような色々なことが起こる中、資金調達の道のりは決して簡単ではありませんでしたが、最終的に投資家の皆様に賛同いただいて、前回ラウンドを数十%上回るバリュエーションで、必要な資金を過不足なく調達できたことはとても良かったと思います。改めてこのような不安定な環境では特に「資金は取れる時に取っておく」という鉄則が重要だと思いますし、今後投資いただいた資金を有効に活用しながら、更に成長に向けて取り組んでいければと思っております。

シリーズCラウンドの概要

今回の資金調達では既存投資家6社の皆様から、合計調達額の約8割に当たる金額の投資をいただきました。
それに加えて、新規投資家として、
(a) 数千億円を超える規模のdeep pocketを持ち、弊社の中長期成長/ビジョンに共感いただける国内最大手機関投資家の方々
(b) 銀行系VCの方々(運転資金ファイナンスが特性上必要となるCADDi MANUFACTURING事業も見据えた協業の観点)
にも新たに投資をいただくことになり、今後のキャディの成長と次の調達も見据えた中で、適切な形での資金調達を実現できたと思っております。

<シリーズCの投資家の方々>
■既存投資家:
・グロービス・キャピタル・パートナーズ、DCM Ventures、グローバル・ブレイン、WiL、ジャフコ グループ、Minerva Growth Partners

■新規投資家:
(a) 機関投資家:
 ・グリーンコインベスト投資事業有限責任組合
 ・三井住友トラスト・インベストメント(助言者:JPインベストメント)
 ・他1社(投資家名非公表、非常に大きなwalletを持つ最大手投資家)
(b) 銀行系VC:
 ・SMBCベンチャーキャピタル
 ・三菱UFJキャピタル

国内を中心とする投資家の皆様から合計100億円超のエクイティ調達を実現できたことは、日本のスタートアップ市場における投資規模が大きくなってきていることの証左だと感じています。
スタートアップエコシステムが大きくなるには、起業家側が「新たに事業を立ち上げる」+「事業を大きく拡大させる」、投資家側が「成長に必要な資金/リソースを供給し、リターンを上げる」という両輪を何週も順回転で回し続けていく必要がありますが、この5年間でも確実に両輪が回ってスタートアップ業界が大きくなっていることを感じます。
実際、弊社に創業来サポートをいただき、今回も大きく継続投資いただいているグロービス・キャピタル・パートナーズも最新ファンドは700億円を超える規模感になっています。
日本のスタートアップエコシステムは米国やグローバルに比べると、まだまだ数十年単位で後れを取っているのではと感じますが、このような事例が積み重なることで世の中が少しずつ前進していけばと思いますし、今回投資いただいた資金をもとに、更に大きな事業へと育てるべく取り組んでいこうと、改めて気を引き締めている次第です。

今回の資金調達ではエクイティ調達を行いましたが、今後更に次のラウンドや将来的なIPOを考えた上で適切な資金調達形態を追求していきます。最近ではVenture Debtなどの資金調達オプションも広がっている中で、Debt / Equityをバランスよく、事業成長を支える調達を行っていく所存です。

どうして投資家の方々のサポートを得られたか?

今回のエクイティ調達に投資家の皆様に賛同いただいた背景としては大きく3つあると思っています。

(a) これまで着実に事業プランに沿って拡大してきたこと
シリーズBの資金調達においては、以下のような形で3軸の成長の方向性を描いておりました。実際、そこから2年を経て、冒頭に記載した通り、
(A) MANUFACTURING事業の成長(GMV拡大+業界/製品カテゴリの拡大)(B) 海外展開(米国/ベトナム/タイ)
(C) サービス・アプリケーションの拡大:DRAWER事業のローンチに加えて、CFS(CADDi Factory System)強化などMANUFACTURING事業のサービスも拡大(詳細はこちらのnoteをご参照ください)
といった具体的に実行予定だった成長戦略を着実に実行してきました。

正直なところ、私自身もこんなスピードで想定よりも早くグローバル化していくとは、正直思っていなかったぐらいです。今回投資いただいた投資家様からは、「execution力(実行力)の高さ」について評価いただくことが多かったかと思います。

シリーズB時点で掲げていた成長の方向性

(b) 今後の成長ポテンシャル
キャディはこれまで着実に拡大してきていますが、道のりは常に「挑戦」の連続です。製造業マーケットは広大で、且つ歴史が長いからこそ、逆にとても難しいと常日頃から感じますし、一筋縄ではいきません。あらゆるところで、「キャディの挑戦は今はまだ0.015合目」ということを言っていますが、これは実際のところ本当にそうでして、今でもあらゆるところで苦労の連続です。
一方、「とても大きい」「だからとても難しくて誰もやらない」市場において、正面から取り組む挑戦はだからこそ、このチャレンジはとても面白いとも思います。そして、投資家の皆様にもそのようなキャディが取り組んでいる市場の大きさとそれに対するキャディの成長ポテンシャルを感じていただけていることが大きいと感じます。

グローバルにはどんどん新しいスタートアップが生まれてすごい勢いで成長しています。Generative AIのように新しい技術革新もあれば、SaaS企業を代表例として世の中をTechで効率化する/新たな価値創造を行うものもある、そしてFlexport、Deelのようにグローバルにビジネスチャンスを捉え、新しいモデルで伸びていく会社もあります。

「30年後、50年後の世界を見たときに今の世の中の非効率はどのように解消されているべきか?」

このような視点で中長期の世界観の実現に向けてひたすら課題解決をしていくのがスタートアップですし、今後もキャディは製造業サプライチェーンの領域において、課題解決を続けながら、新たな価値を創出していければと思っています。

(c) 組織・人材のポテンシャル
キャディには多様なバックグラウンドを持った人材が集まっています。ビジネスサイドは製造業、スタートアップ、プロフェッショナルファーム出身者から物流専門家、工場運営経験のある生産技術スペシャリストまで、エンジニアはメガベンチャー出身者、製造業Tech周りのスペシャリスト、様々な業界で経験豊富なプロダクトマネージャーなど、多種多様な人材が集まって事業を構築しています。

事業成長をけん引するのは組織・人ですが、投資家の皆様からは、改めて今回、キャディの組織・人材力に対し評価をいただくことも多かったように感じます。

キャディでは2023年に入って"Raise the Bar"という社内標語を掲げ、組織力全体の強化と筋肉質化を進めています。これは、改めて組織が500名を超え且つグローバル化が進む一方、ビジネスとしてはまだまだ「0.015合目」にある状況の中、社員一人一人が"Raise the Bar"をすること、すなわち、高いスタンダードとOwnershipをもって、日々熱量をもって行動を起こし、結果を生み出し続けていくことで事業を前進させよう、という心構えを明確にするために導入したものです。

スタートアップで新しいビジネスを生み出し、高い事業成長を実現するためには、中で働く人が成長し、結果的に組織が非連続に成長していくことが必要不可欠です。今後も会社全体が成長し、組織・人材のポテンシャルを開花させていくことを目指しています。

3. キャディのコーポレート本部について

そんなキャディの成長を裏で支えて、会社が戦っていくための「土台」であるコーポレートインフラを整えているのが、私が管轄するコーポレート本部になります。
キャディのコーポレート本部の仕事は色々な意味でクレイジーです(笑)。想像していただければわかるのですが、キャディは色々な幅広いチャレンジをとてつもないスピードで行っています。

・幅の広さ:事業拡大は「規模」のみであればまだ良いのですが、短期間にDRAWER事業が開始したり、MANUFACTURING事業にて新たな取引形態が発生するなど事業の「種類」が拡大したり、1年で3か国の「地域拡大」をしているため、グローバルでの貿易管理や国際税務、連結会計などの対応が必要になったり、社内会議が英語で行われるようになったり、スペイン語の契約書をさばかなければいけなくなったり。コーポレート領域でも多分に漏れず変化が激しく、日々盛りだくさんの課題が出続ける状況です。

・複雑性:幅の広さに加えて、そもそもキャディのMANUFACTURING事業では、実際に「モノ」が動くことにより、いわゆる一般的なITスタートアップと比較して管理面でのチャレンジが大きいです。図面受領→見積→すり合わせ→受注→発注→生産管理→納品受領→検品→顧客への納品というプロセスを何千点もの部品に対して行い、且つ受発注が1対1の対応関係にない中では、会計記帳の大前提となるモノの動きを一つ捉えるのも容易ではありません。受発注管理、契約管理、検品、出荷・在庫管理、入出金管理といった一連のフローが非常に複雑であるため、新たにERPシステムの導入を検討しているほどです。

スピード:コーポレート部門として慎重な検討を行うことは最低限必要なことですが、その一方で会社のスピード感を落とさないように、リスクの多寡に応じてスピーディーに意思決定することも必要になります。社内では"2 weeks to 2 days"(2週間かかると思っているものも、2日でやりきる)といった言葉もあるぐらいなのですが、会社が一定の規模感になってくるとどうしてもスピードが落ちがちな中で、「質」と「スピード」を最適な形で担保しながら、グローバルで日々の業務をマネージしていくことが必要となります。

コーポレート本部では上記のような環境下で、チーム一丸となって、コーポレートインフラ作りを進めています。組織は常に柔軟に変わるため、あくまで一つの参考として見ていただければと思いますが、主に3つの部門でコーポレート全般に対応しています。

・経営企画部:全社の経営戦略立案・企画、資金調達
・経営管理部:経理財務、FP&A、ガバナンス、法務知財、情報システム、海外管理(米国・ベトナム・タイ)
・人事総務部:採用、HRM(人材マネジメント)、総務、労務、他

今ではコーポレート本部の規模も社員約50名体制となってきておりますが、スタートアップらしく、やることはとても多く、且つ変化が激しく、グローバルに色々なことを経験できるチャレンジングな環境かと思います。
コーポレート業務の詳細は、改めて別の場でご紹介できればと思いますが、ぜひご興味がある方はいつでもご連絡ください。

こんな方が向いていると思います!
・カオスな環境が好きな人
・切磋琢磨しながら成長したい人
・幅広いお題に対して対応することで専門性の幅を身に着けていきたい方
・会社のグロース~IPOフェーズに携わりたい方(将来的にIPO準備も行っていくことになると思うので)

4.おわりに

キャディでは今回の資金調達を皮切りに、更なる事業拡大を目指していきますので、今後ともご支援をいただけますと幸いです。

最後に、キャディでは、DRAWER事業の拡大のためのエンジニア人材の採用、海外展開強化のための海外人材採用、そして上述の通りコーポレート系の陣容拡大を積極的に進めております。詳細は下記リンクをご参照ください。

ご興味いただけましたら、いつでもご連絡いただけますと幸いです!!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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